表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/134

隻腕の龍戦士修行編 7話 「反転攻勢、ブザンソン丘陵戦」

パンツィトワ川での一戦以来、ゴルド軍の姿は無く軍港に駐留しているヴィグル軍は再編成を急いでいた所に別の戦線でゴルド国王が率いた本軍がヴィグル帝国皇帝が率いる本軍が決戦の末に敗退したとの一報が入った。


報告によると遂に激突した親征軍同士の決戦は、

ゴルド王国軍52000名、ヴィグル帝国軍45000名で平野で大軍同士が展開する正に天王山の激戦だった様だ、平地で数の多いゴルド王国側が絶対優勢のはずが半日でゴルド王国側が壊滅敗走したらしい。


ゴルド王国側はかなりの死傷者が出たらしく再編成不能になったゴルド本軍は王都に撤退したらしい、本軍が引いた事で各戦線でも混乱が始まりゴルド軍の崩壊が始まった様だ、ヴィグル軍内で反転攻勢の機運が高まる。


「なんで数で優っていたゴルド本軍は敗北したのですか?」

今日もシーナはイノセントに「なんで?なんで?」攻撃を行なっている、毎日の恒例行事になりつつある、面倒見の良いイノセントがきちんと答えてくれるからだ。


「1番の理由は味方の寝返りだな、開戦直後にかなりの中小貴族家がヴィグル側に寝返り門閥貴族の陣に襲い掛かったらしい、そんな事が各戦線のゴルド軍陣営内部で多発してヴィグル軍本軍が接敵した時は既に勝敗は決まってたらしいな」 


「優勢だったのになんで中小貴族家は寝返ったのですか?」


「ゴルド王国の中小貴族は王家と大貴族の奴隷な様な物だからな、ヴィグルの調略の効果も当然あったがやはり自分達の家と領民を守る為だろうな。

もうゴルド王国の根幹は死に体だ今の内にヴィグル帝国に自分達を高く売る必要がある、寝返るには今回の決戦が最も効果的な機会だと思ったんだろうな。

実際に彼らの功績は大きい、中小貴族には勝とうが負けようがゴルド王国内で未来は無いと聡い者達は気がついていたんだろう」


「ほえー、それをヴィグル帝国は受け入れるのでしょうか?」


「一応はな、一旦は爵位と領地は安堵するだろうなあの皇帝なら、彼らもそれが解っていたから寝返った訳だしな、しかし戦後は信頼するかと言えばこのままだとしないな」


「戦後は彼らから領地を剥奪すると?」


「そいつの働き次第だな、一生懸命にヴィグルに尽くすなら領地は真に安堵されて加増も期待出来るし爵位も上がる!皇帝陛下はしっかり者だから使える者は使うだろうな」


「ヴィグル皇帝はゴルド国王と全然違いますねぇ、これでもう戦争は終わりですかねぇ?」と説明に満足したのか、うーん背伸びするシーナ


「いいや独裁国家が滅びるにはまだまだ血が必要だな、特に高位貴族と王族連中の大量ね血がな。

ヴィグル皇帝は冷酷ではないがお人好しでは無い、王家に連なる全ての者の処刑、女や子供も含めてな、これが戦争終結の最低ラインだ、ゴルド王家も当然それが理解出来てるから死に物狂いで抵抗して来るだろうな」


「ゴルドに付いた魔族と龍種はどうするんでしょうか?」


「魔族はとっくに逃げ出してるだろうな、龍種は分からん、なんであれだけの数の龍種がゴルドに付いたか動機が良く分からんからな、何かしている様だが直接こちらに向かって来ている龍種は4、5人って所だ」


「反転攻勢なら冒険者隊はと義勇兵隊はどうするのです?」


「義勇兵隊は既にヴィグル本軍と合流するべく準備中だ、冒険者は一旦契約を終了して報酬を払って貰って再契約の交渉だ、つうか既に交渉は始まっている、報酬は明後日に全員に払われる予定だ・・・シーナ達はどうする?」


「契約内容を見ないと何ともです」


「良いぞ慎重になったな」とイノセントはシーナの頭をグシャグシャにする、今日の質問攻撃は終了の様だ。


それからすぐにヴィグル軍は冒険者との契約を終了させて今回の作戦は終了した

シーナ達が受け取った金額は延べ23日間、日本円換算で任務手当て175万円と地龍撃退報酬が3千万円、計3175万円相当の金貨だった、ガイエスブルクは転送魔法の使用料で85万円相当の追加報酬が出た。


通常なら一攫千金な所だが自己資産が30億円を超えるシーナ達には飛び跳ねる程でもなく、イノセントからは「なんか別の武器とか魔石にするか?」と言われてシーナはミスリルの戦斧、エレンは双眼鏡、ガイエスブルクは高品質の魔力増加のアクセサリーを貰い、残りは1番金額的価値が低い双眼鏡だったエレンに渡した。


一連の報酬や後始末を済ませた後はヴィグル軍との再契約の交渉だ。


提示された内容は「強行偵察員」攻撃側になるヴィグル軍にとって最も欲しい要員だ報酬も3倍の提示、死亡時には遺族補償金も高く設定されている。


シーナ達はその他に小型魔導砲3門と砲弾の支給を条件に了承した、出発は5日後だ。


他の冒険者は妻子のいる者は大半帰国する事になったが全体の6割が残留する事になった、この数字はかなり優秀で通常は半分も残らないそうだ。


軍港駐留軍から出撃する人員は重装歩兵2500名、重装槍兵1000名、重装騎兵500名が主力になり、補給部隊2000名と輸送用馬車が1500両これに歩兵と槍兵が便乗する、護衛に魔導砲騎兵300名、他通信兵、工兵、衛生兵など700名が随伴する。

以下7000名がこの軍から反転攻勢に参加する。


冒険者隊は700名、主に強行偵察要員だ、後はピアツェンツェア義勇兵3000名は途中まで同行した後にヴィグル本軍と合流後にゴルド王都包囲戦に参加予定だ。


残留軍は18000名は軍港と城塞の守備と援軍の為に予備戦力となる、この戦い後のヴィグル軍の残存人数からもゴルド軍の作戦は大失敗に終わった事が伺える。


シーナ達はイノセント直属の部隊に配属された、軍の中央での進軍だ。


「これって私達の安全に配慮してくれたのですか?」少しシーナは不満そうだ。


「いや、しっかりと戦術的に考えた結果だ、何かあったらお前達が飛び出さんとダメだし、奇襲なら1番狙われる場所だから余り安全なポジションではないな」


「なら良いですけど・・・」と少し納得してないシーナ


実際はガッツリとシーナ達の安全を考慮しまくっている、これはヴィグル帝国皇帝からの勅命でもある、密かにシーナ達の護衛の兵まで配属されている始末だ。


安全な後方偵察なはずだったのがまさかの龍種との遭遇戦報告に皇帝は一瞬気が遠くなった。


それも当然だ公表されてはいないがピアツェンツェア王国の第一王女にして地龍王クライルスハイムの姫君だ本人が拒否しようが偉い人達が放っておくはずがないのだ。


約2か月遅れの到着も皇帝の胃にダイレクトアタックしてきたのだ、ちなみに捜索隊は1か月遅れの段階で出発してたりする、しかも5組も精鋭ばかりで。

残念ながらシーナ達はその時は龍都に居たのだが。


ずっとシーナ達の相手をイノセントがしていたのも皇帝がイノセントに頼み込んだからだ。


皇帝は過去の大戦時はまだ子供でイノセントの友であった勇者に憧れていた、そしてイノセントにも憧れてずっと研鑽を続けた勇者の卵だった、父皇帝が崩御し自らが皇帝になってしまい勇者の道は諦める事にはなったが、なので龍種達の事情などに精通している。


少し自分達の待遇の良さに不審を感じたシーナであったがまさか裏でこんな大騒ぎになっていたとは思ってもいなかった、どこかピアツェンツェア国王同様の不幸気質を感じるヴィグル帝国皇帝よ強く生きろよ。


「これ!いい感じです!」と戦斧を振る!

シーナは新しいミスリルの戦斧に大興奮だ、それもそのはずだヴィグル帝国が所有している国宝級の一品だ、皇帝からの贈り物だったりする、理由は主に自分の胃の為にだ!


「これ凄えな」ガイエスブルクもアクセサリーの腕輪の効果に興奮気味だ。


「へー結構良いじゃない」エレンも双眼鏡にウキウキだ。


ちなみに3品のお値段はしめて450000000円也・・・4億5千万円??!!

お値段も皇帝の胃にダイレクトアタックをかました様だ、イノセントは密かに大爆笑していた。


こうして出撃の日が来た。


シーナがいる軍港から出発した部隊は特に襲撃を受ける事無く無事に反攻軍の主力がいる戦線に合流出来た、ブザンソン丘陵攻撃の為に集結した混成軍団は3万人と大所帯になったのでガエル将軍が再編成している最中だ。


後にガエル軍と呼ばれてブザンソン丘陵攻撃の主力軍団になる、司令官のガエル将軍はヴィグル帝国の5大侯爵の1人で今回の戦争でも数多くの武勲を重ねている名将だ、ついでにシーナ達の事も皇帝から優遇を嘆願されている。


再編成後シーナ達の軍は第一旅団として編入されブザンソン丘陵の西に配備されて包囲網に加わった、敵は何故か陣地を固め打って出る気配はないのでシーナ達には休息の命令が出て皆がホッと一息ついていた時にブザンソン丘陵に強行偵察出た部隊が帰還して来てシーナ達に救護を依頼して来た。


「随分怪我人が多いね」エレンの顔が曇る。


2000人ほどの隊だが半数の者が負傷している、幸い死者は少なかったらしい、聞けばゴルド軍はブザンソン丘陵にかなりの要塞を築いて抗戦しているとの事だ。


要塞は堅固で攻撃隊の指揮官は被害拡大前に撤退して来たらしい、敵の数は8500名ほどだが練度が高く確実に複数人で行動してるらしく第一防衛線の突破も厳しい。


「今までとは違う敵だな」ガイエスブルクが負傷兵に包帯を巻きながら呟く。


「ああ・・・連中かなりしぶとい、塹壕に柵を作り近づくと槍で突いて来やがる。

ハッキリと見えなかったが塹壕は八角で隙が少ないし部隊間の連携も強い、俺達は威力偵察ですぐ引いたが力押しだとヤバいな、バリスタや魔導砲は明らかに温存している」 


ガイエスブルクが手当てをしている若い重装歩兵が教えてくれた。


「水とか食糧とかは持ってそうなの?」別の重装歩兵の男性を手当てしているエレンが聞く、兵糧攻めとかは有効ではないか?との質問だ。


「多分たんまりと備蓄してるだろうな、あの要塞は数ヶ月前から用意していた物だ作りがしっかりとしている、地下施設も有るだろうし井戸もしっかり掘ってるだろうな、水断ち兵糧攻めは難しいだろうな」


「下手すれば屯田もしてるなあれは」屯田、戦地での耕作である、ブザンソン丘陵地帯は元々が穀倉地帯なので屯田は容易に可能だ。


「敵将はゴルド王国の敗北を予感して準備していたって事でしょうか?」兵士の顔についた血糊を濡らした布で拭くシーナが訊ねる。


「丘陵守備隊長はジャコブ将軍だ、かなり前から、いや開戦前から予期していただろうな、ゴルド王家3代に仕えた老練な名将だこんな戦争の結末簡単に予想してただろうな・・・今の国王には嫌われてこんな辺境の守備を押し付けられちまったけどな」


「名将なのに嫌われるんですか?!」驚くシーナ。


「ははは、嬢ちゃんは若いな名将だからこそだよ、ゴルドの国王は自分より優秀な人間が側にいるのを嫌うんだよ自分の自尊心が傷つくからな」


「そんなんじゃ国として成立しないじゃないですか?」


「だから今、ゴルドはこんな事になってるだろ?」と兵士は笑う。


「違いないな」と別の兵士も笑う。


人間の自尊心とやらが全く理解できないシーナであった。

地龍の自尊心は己れの中に向ける物で他人に向ける物ではないからだ、そんな自分の自尊心だけで国を傾かせるゴルド国王に激しい嫌悪感を抱くシーナだった。




退却して来た部隊はそのままシーナ達の旅団に編入され引き続き負傷者の治療と休養を命じられた。

さりげなく精鋭兵をシーナ達の側にそっと配置するガエル侯爵であった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「地下施設の探知ですか?」とキョトンしているシーナ


「ああ、丘陵の地下施設の探知はここから可能か?」


軍からシーナ達へ指名依頼が来た、ブザンソン丘陵の地下施設の探知は可能か?更にその破壊は可能か?との依頼だ、シーナ達が地龍なのは軍上層部には伝わっている、地脈を扱う地龍ならば可能ではないか?との依頼だ、命令でなく依頼の点で軍部が冒険者に配慮している事が伺える。


「私は丘陵まで最低でも1kmまで接近しないと正確な探知は出来ませんね、更に破壊となると200mまで接近しないと無理です・・・・エレンさんは?」


「私は2kmまで接近出来れば80%程度の精度ですが可能です、ただそれの破壊はシーナより力が劣ります」

エレンもここからの探知は無理な様だ。


「地龍君は?」3人で1番魔法が得意なガイエスブルクなら?


「4kmも離れてるここからじゃ無理だ後1kmは接近しないとそれでも50%の精度って感じだ、破壊する能力はシーナと大差ないと思う」やはりガイエスブルクも2km迄の接近を主張する。


総合すると2kmまで接近出来れば探知は可能、破壊はかなりの接近が必要で現実的では無いとの結論だ。

それでも他の地龍に比べると優秀な方と言える、龍種も万能ではないのだ。


「なるほど解った、探知の依頼は受けるが破壊は無理と返答しておく。

ジャコブ将軍はこう言うのも計算しての築城をしてるな、ゴルドに置いておくのが本当に惜しい爺様だ」

とイノセントは少し寂しそうだ?何か違和感がある?言葉と感情にズレを感じるぞ?


「かなり危険が伴いますが地下トンネルを掘って要塞内部に侵入する事なら可能です」

ここでシーナがとんでも爆弾を投下した。


「いや!それは工兵の仕事だ、探知の依頼だけ受ける」とイノセントはシーナの提案は却下する、かなり有効な戦法なだけに断固却下だ。


「了解しました!」


「そんな危ない仕事やらせたら皇帝の胃が爆発しちまうよ」とイノセントは内心で思っている。



その3日後に地下施設探知の指名依頼が幻夢に来た。

明日の夜にシーナは西、エレンは南、ガイエスブルクは東より2kmまで接近して地下施設の探知を行う。


探知中は戦闘行為が難しいのでそれぞれ重装歩兵が50人ずつ護衛が付く。

以上が軍からの通知でイノセントは更に30人づつの冒険者の護衛を付ける事で決定した。


「なんかやっぱり私達優遇されてません?」

不審を募らせてシーナがイノセントをジト目で見る。


「気のせいだろ大体こんなモンだろ」とイノセントは涼しい顔だ。


「本当かなぁ?」と納得してないシーナ


ただ今回に関してはイノセントが正しい、貴重な探知魔法の使い手の護衛だもう少し多くても良い。


但し護衛につく重装歩兵はシーナ達が治療をした者達が恩返しとして志願してくれた、ちなみに彼らはガエル侯爵直属の特殊部隊だったりする。


それに加えて冒険者の護衛はイノセントがシレッと精鋭をつけてまたシーナに疑惑の目で見られた。


「もーこれじゃ実戦経験が積めないよ」憮然としてるシーナ


「まぁ冷遇されるよりマシじゃね?」ガイエスブルクはとっくに数々の優遇措置には気づいてた様子だ。


「そうだけど・・・」ブスーと頬を膨らませる。


「はいはい任務優先」プスーとシーナの頬を指で突き空気を抜くエレン



明日の夜にブザンソン丘陵の要塞に強行偵察を行う幻夢であった。

これが怪物と遭遇する悪夢の始まりとも知らずに・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ