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隻腕の龍戦士修行編 6話 「初陣、そして地龍の襲来」

「よおし!偵察隊も出るぞお!!!」

とシーナ達の指揮官の冒険者の号令で一斉に各偵察ポイントに散らばる冒険者者達、シーナとエレンも目標地点に走り出す。


シーナとエレンの偵察ポイントは川挟んでヴィグル帝国軍側の比較的完全なエリアだが龍種として戦闘になった時を考慮して他の組との間隔は広くなる様にイノセントが手配した。


驚く事に周囲各隊にはシーナ達が地龍だと伝達済みだ、味方同士隠し事は部隊を全滅に追い込む可能性があるからだ。


他の冒険者達は思わぬ龍種参戦に湧き士気が急上昇した。


それを見越してのイノセントの戦術には夢幻も苦笑いだ、そもそも地龍側からも冒険者ギルドに正確な通達があったのも驚いたが最初からノイミュンスターもこうなると分かっていたのだろう。


根拠も自覚も無く人間を見誤る未熟なシーナ達を守る為にシーナ達の情報を全てイノセントに開示して判断を任せる、これがノイミュンスターが下した判断だった。


自分達以上に自分達を分かってくれていた師匠に感謝する夢幻だった。


そうして敵軍来襲の一報が警鐘により全軍に伝わる、双方の軍団の布陣の開始だ!


1時間後布陣の終えたヴィグル帝国軍22000とゴルド王国軍17000はパンツィトワ川の両岸で対峙していた。


シーナとエレンはヴィグル帝国側の西の川辺の茂みの中が配備先になった。

任務は偵察でゴルド軍が川を越えないかの監視だ動きがあったらヴィグル軍とイノセントに報告するのが役割になる。


見つけたら良し見つけられなくても仕方なしの仕事だ。


主力の偵察隊と比べると危険度は遥かに低いが遭遇戦もあり得るので警戒は必要だ

今回の戦闘は示威行為の意味合いが強く全面戦闘にはなりづらいが魔族の介入次第では激戦になる可能性がある。


そうなると冒険者者隊は撤退して良い契約なので報酬金は高くは無い。


「緊張してる?シーナ」と少し心配そうなエレン。


心配してるエレンを安心させようと「そりゃしてますよぉ」と戯けて見せるシーナ、実際は緊張してガチガチだ、これで前線に出てたらかなり危険だったろう。


「あっ始まった!」とエレンが叫び視線をそちらに向けると、エレンの声とほぼ同時に1kmほど先の両軍のバリスタ隊が撃ち合いを始めた!前衛の数名の兵士が倒れたのを龍眼で視認した。


「しっかりと矢の動きを見て!バリスタは面制圧の兵器だから必ず曲線で来る!矢が下方を向くと加速するからね!」エレンがバリスタの挙動を説明をする。


「はい!」


バリスタで15分ほど撃ち合うと今度は味方の剣士隊と敵側の槍隊が浅瀬で激突する!


ワアアアアアアアア!!

と鬨の声と共にキィン!キキィーン!!と金属音が戦場に鳴り響く!



「一列と二列は突いてくるので無く上から叩いて来るのが基本!突いて来るのは三列目だよ!」


「はい!」シーナは真剣に戦いを観察している。


「シーナはどっちが優勢に見える?」


「んー互角?ですかね?両方とも無理してない気がします」


「正確、示威行為だからねパフォーマンスで命を掛ける奴は少ない」


「少ない?中にはいるのですか?!」


「いるよ、敵が消極的な今なら武功を上げるチャンスだからね・・・ほら」


見るとギラギラした甲冑を付けた兵士が前列を飛び出して敵の前列に斬りかかった!


「馬鹿ですか?!」シーナが叫ぶ!


「いや腕が立つなら良い作戦だよ」


すると飛び込んだ兵士から半円で敵の陣形が崩れ出す!チャンスとばかりに後方待機していた槍隊が一斉に突き掛かる!その一角から全体の陣形に乱れが生じてゴルド側の前衛隊が押し込まれ始めた。


「ふわー、凄いですねぇ」


「戦場は一つの乱れが致命傷になる時があるからね、それは私達、龍種にも言える事、シーナもそこは充分に気をつけてね」


「はい!」


その後3時間戦闘は続きヴィグル軍が初期の優勢を保ちつつ防御的に戦い、戦線突破が出来なかったゴルド軍は敗走した、残存部隊がいないか偵察してシーナ達はガイエスブルクに異常なし!と通達してから前線から離れた。


「どう?怖かった?」


「んー遠くから見てただけだから大丈夫ですよー、実感は湧かなかったです」


すると前からギラギラした甲冑を付けた兵士が歩いて来た、例の突撃兵士だ、ガシャガシャと兵士は真っ直ぐシーナ達の前まで来て止まった。


「いや・・・何をしているんですか?マッテオさん」

呆れた表情のシーナが半目で兵士に声をかける。


「やはりバレますよね」

兵士がフルフェイスの兜を取ると良く知ってる顔が出てきた、マッテオだった。


マッテオは軽く溜息をつき

「オーバン殿から連絡があり待っていましたが2ヶ月も音沙汰が無いので凄い心配しましたよ」とマッテオが言うと、


「「すみませんでしたぁ!!」」とシーナとエレンが同時に頭を下げた!


「え?え、ええ?いや・・・私は問題ないので大丈夫ですよ」

咄嗟に謝る癖が完全に身についたシーナとエレンにドン引きするマッテオ。


ともあれ思わぬ幻夢のメンバーとの再会は嬉しい物だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「それで?マッテオさんはどうしてここに?」

前線から離れ小高い丘の冒険者隊の連絡所に到着して報告を終えて任務完了したシーナ達は連絡所の休憩中でマッテオから経緯の説明を受ける。


「アスティ公爵家の名誉挽回の為に義勇兵として同盟国のヴィグル軍に参戦しています」との事だった。


現在は男爵家へ降爵したアスティ家だがグイードの子供には公爵家を継げる余地がある、家長のグイードは内務省の文官として頑張って働いており、次男のオスカルは宰相のエヴァリストの元で書記官として働いている。


「兄達ばかりに働いてもらっては私も面目がないですから」と笑うマッテオ。


ピアツェンツェア王国はヴィグル帝国へ艦隊の援軍は派遣しているが被害が大きくなる可能性がある陸軍の派兵には地方領主の貴族達を中心に消極的だった、自領の民にも被害が出るからだ、そこで国は義勇兵隊を組織したのだ。


「義勇兵隊なら参加可能の家だけで組織出来ますからね、

やはり前回の事件で窮地になってる家の子息の参戦は多いですね」と説明を続けるマッテオ


正規軍ではないが国が主導の義勇兵隊だ参加すると王家の覚えもめでたくなる。


アスティ公爵家での事件で信用を落とした家には名誉挽回のチャンスだ、こぞって参戦した様だ。


「なので競争率が高いのでなるべく目立つ格好と言う訳でこの姿です」目立つ為の特注品ですよ、と笑うマッテオ。


「はへーなるほどお」


「ところでお二人は偵察隊なんですね?実戦部隊に志願すると思いましたよ?」


「「うぐっ」」エレンとシーナは心のダメージを受けた!


笑顔でのマッテオの指摘に言葉に詰まるエレンとシーナ、渋々と経緯の説明を始めると、

「なるほど」とマッテオは渋い顔になった、正直マッテオも自分を過信していた所があったからだ。


「マッテオさんはこのまま義勇兵隊で参加を続けるのですか?」とエレンがマッテオに聞く、出来れば同行して欲しいのだ。


「そうですね、今回は家が関係してますから、本当は夢幻で参加したいのですが我儘は言えませんね」とエレンの質問の意図を理解して苦笑いのマッテオ


「いえ!良いんですよぉ、家の方が大事ですよぉ」シーナも残念そうだか、お家優先!です。


「今回の話しは義勇兵隊にも伝えておきます、かなりの警戒が必要です。

今回のゴルドの負け戦がブラフな予感がして来ました、今回は囮で近いうちに本命の攻撃がありそうです」マッテオは「思考加速」での分析結果をシーナ達に伝えてると、


「急ぎます!」とマッテオは義勇兵隊の陣地に駆けていった。


シーナとエレンも心配になりガイエスブルクに思念で連絡を取り警戒を伝えた。

イノセントからは「十分にありそうだ」と返信がありそのまま川沿いの偵察を命令された。


この懸念は3時間後に大当たりする。


マッテオからの警告でゴルド王国軍の再来襲を警戒しているヴィグル帝国軍は河川一帯に防衛線を再度築いていた。


シーナ達冒険者隊も偵察警戒厳にとのイノセントの命令で所定の位置に戻り警戒をしていた。


「どうですか?エレンさん、何か感じます?」


得意分野では無いがエレンは探索魔法で周囲を索敵していた・・・


「今の所は何も・・・もしかして妨害されているかも?」

エレンの言葉にシーナに一気に緊急が走る!


龍種の探索魔法を妨害、1番考えられるのが同じ龍種の可能性が高いからだ。

シーナは義手をプレートアームに取り替えておく・・・


一瞬シーナの視界の森の中に光る物が見えた!咄嗟にエレンを庇いプレートアームの腕のシールドを構えた!


ゴオオオン!!直後シールドに徹甲弾が直撃して砲弾弾かれ地面を穿った!今のはヤバかった!最大の警戒をしてなければエレンに直撃する所だった!


「くっ!」シーナは腕を光の方向に向け、ドォン!小型の魔導徹甲弾を即時に撃ち返す!


ドン!ゴオオオン!徹甲弾は光に吸い込まれ直後に爆発した!


今のは小型の魔導砲だ!

「私達を狙っている?!」エレンはマジックシールドに魔力を通すと、

ドン!ドン!ドン!次は3発の光が走った、

「ええーーい!!」エレンはシールドを2mに広げて前へ出る!


ゴン!ガン!ガン!シールドが3発の徹甲弾を受け止める!

砲弾を受けたエレンの脇の下からシーナは腕を突き出し「ふっ!」ヒュン!と拳が発射されて先程の光に向かう!

続けて、ゴオオンン!!と本命の榴弾を撃ち込む!


ズドン!ガアアアアンン!!!

ゴオオオオオオオオオ!!!


拳と榴弾が直撃した様で2つの爆発が起こり火災が発生する!拳は壊れたのか戻って来ない。


「なら!」ゴン!ドオオンン!!シーナは徹甲弾と榴弾を続けて撃ち込む!


ドン!ドン!ゴウウンン!!!更に火柱と爆発が起る!

全弾撃ち尽くしたシーナはプレートアームを外して通常の義手に換装して肩に付いていたシールドを外して手に持ち替える。


「「面白えモン持ってるじゃねえかよ!!」」と声と同時に煙の中から体長20mほどの地龍が飛び出しこちらに向かって爪を振り下ろして来る!


「!!龍力!」エレンは咄嗟に飛び出して来た地龍を一歩踏み出して、龍力を込めた拳でぶん殴った!!


ゴオオオン!!「「ぶへえ?!」」殴られた地龍は真横にブッ飛び地面に落下した!ドサ!ザザザ!


「地走駆!」シーナは地面を滑りながら地面に落ちた地龍の追撃に出る!


地龍に接近しながら「龍炎!」シーナの身体が火の玉になり、そのまま地龍に体当たりをかます!


ドオオオオオン!!!「「ぎあああ?!」」爆発と爆音が周囲に響き地龍はシーナもろとも火だるまになる、シーナは自分の龍炎なのでノーダメージだ!


「はあああああ!!」ドン!ガン!ゴッ!ガガ!!「「が?!グエ?!ぐっ?!」」シーナは炎をまとった拳で地龍をボコる!!ゴン!!ゴン!ガッ!更にボコる!


「「ちよっ?!おま?!まっ?!」」間髪入れずシーナはトドメの大技「大炎槍!!」ズコオ!!!「「ぎゃあああ??!!」


シーナの10mの炎の槍が地龍の心臓を穿ち身体を串刺しにした、・・・・地龍は即死したのだった


ドオオンン・・・土煙と共に地龍は地に伏せた、それを無表情のシーナが見つめる。


「シーナ・・・」エレンが歩いてシーナに近づく、

「大丈夫?」とエレンはシーナの肩に手を置く「・・・・うん、私は大丈夫」無表情のままシーナは呟いた。


「コイツはエレンを殺そうとした敵だ!!」そう言うシーナの目は静かな怒りで真っ赤に光っていた。


地龍と魔導砲兵士による奇襲、ゴルド軍の作戦は2人の地龍によって粉砕された。


実はもう1人地龍がいたのだがシーナの凄まじい龍気に怖気づいて逃走していた。


完全に人間だと思って馬鹿して襲って来た地龍と万全の警戒心で集中していた地龍、この差が一方的な戦いに終わった理由だ、イノセントの教えがなかったら死んでいたのは自分達だったと気を再度引き締め直すシーナ


エレンが死んでいたかも知れない・・・敵の同族を殺すより味方の同族を死なせる方に恐怖を感じたシーナ・・・同族殺しに思う所はあるがそれよりエレンを失う事だけは嫌だと思った。


奇襲を潰されたゴルド軍は本格的に全面撤退の体制に入った、

ヴィグル軍も再編成中なので無理な追撃はしない、この戦いはヴィグル軍勝利で終わった。


ゴルド軍が15km先まで離れたのを確認した所で冒険者隊も後退命令を出した。

それを聞きシーナとエレンも完全に後退した。




陣屋の前でシーナとエレンを待っていたガイエスブルク


2人が前まで来ると頭をかきながら、

「お前大丈夫かよ?」と心配するガイエスブルク


「・・・地龍君」とシーナがそっとガイエスブルクに抱きつく、

「まあ・・・なんだ・・・お前は良くやったよってえ??!」ギュウウウー

ギュウギュウギュウウウ「おっお前?ちょ?」シーナから離れようともがく

「地龍君!好きぃいいいい」「お前!元気じゃねえか?!」

ギュウウウ!ギューーーーーーー「ちょっ?離れろよ!!」

「嫌あああ!!」「やめい!頬擦りすんなあ!」「好きぃいい!!」


とシーナの動きが止まり悲しそうにガイエスブルクを見る。


「地龍君は私の事が嫌い?」と目をうるうるさせるシーナ


「いやっ好きだけどよ人前じゃ恥ずかしいだろ!」ガイエスブルクは顔が真っ赤だ


「嬉しい!大好きぃいいい!!」「だから!やめーーーい!」シーナは更にガイエスブルクに抱きついた。


「2人とも子供は成人してからだよ?」と笑顔のエレン


「楽しそうな所悪いんだがそろそろ報告いいか?」

と呆れたイノセントが立っている。


「あっはい」冷静になったシーナ達は陣屋に入って行く。


そうして戦闘の経緯をイノセントに説明して、説明が終わると、

「ピンポイントでシーナとエレンの所に向かうたぁ運の無い連中だな」と笑う。


シーナ達の所の他に陽動で魔導砲兵士が15ヶ所に攻撃を仕掛けて来たが警戒していたヴィグルの部隊に全て撃退された様だった、シーナ達の来た地龍2人が本命でこちらの陣内部で暴れて混乱させて本隊が戻って来る手はずだった。


「で?シーナお前大丈夫か?」


「大丈夫か大丈夫で無いかで言えば大丈夫です、思う所はありますけどその事をいつまでも気にしていては死んじゃいますからね」


「そうか、本当ならこんな事態は避ける為に後方偵察にしたんだが、向かうがわざわざ来ちまったからな、奴らの自業自得だろうな。

・・・しかし今後も龍種との戦いにお前達を使う気は無い、今回の様に遭遇戦でも起こらない限りな」


「理由を聞いても良いですか?」とエレン。


「同族殺しを専門にやらせたくないから、と冒険者の先輩としての思いも確かにあるが、1番の理由は龍種が龍種を殺すと何かしらの快感を覚えるらしく癖になる見たいだからだ。

今回ゴルドについた龍種の中にもそう言う奴もいるだろうな」


「快感ですか?」エレンが顔を顰める。


「正確には強い相手と戦い生き残る達成感に酔うと言った表現が正しいのかもな?

お前達も俺に稽古をつけて欲しいと思っているだろ?その考えを最悪に酷く歪ませた形だ。

当然人間にもそう言う感情はあるんだが龍種はそれが強く出るらしいな」


「俺なんとなく分かります」


「ガイエスブルクの感情は別物だ、お前の場合は男としての尊厳だ大事にしろ、むしろその感情こそが戦闘狂にならなくて済むからな」


「はい!」


「今回のシーナが受けた感情は「悲しみ」だ、お前は戦闘狂にはならないが心が壊れる可能性がある、後でエレンとガイエスブルクに散々と甘えておけよ?

ああ、子供作るのは今回の事が終わってからな、やらかしたら罰金取るからな」


「!!!そんな事しません?!」シーナの顔が赤くなる。


「本当か?」ニヤリと笑うイノセント


「多分」自分の暴走癖を知ってて完全に否定できない!


「まあ、今日の所はこんな所だ、

お前達の今日の活躍は大きな評価を受けるだろうから期待しておけ、本当に良く頑張ってくれた感謝する!お疲れ様!」


「「「はい!」」」


こうして幻夢の初陣は終わった・・・

シーナにとっては今までの世界観から考え方の根本まで全てを変えられた出来事だった。

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