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隻腕の龍戦士修行編 3話 「ドライアドの森とパックンチョ!」

龍都を出発して西の港町フィジーを目指し自力で走る夢幻の3人。


とは言え本当に筋力を使い走っている訳ではない、地脈を使い地面の上5cmを滑っているのだ「地走駆」と言う地龍固有の技だ、原理はリニアモーターと似てると思って欲しい。


現在3人は無理がない時速60kmで走っている、10時間で600km、50時間で3000kmで港街フィジーに到着の計算だ。

しかし山あり谷あり魔物ありで到着予定は7日後だったのだが正直言って出だしから上手く行って無い。


地龍最速とも言われてる快速エレン号は本気で走れば時速250kmを越えれる、しかし普通レベルのシーナとガイエスブルクの最高速度は時速120kmくらいだ、そして当然勿論全速力だと滅茶苦茶に疲れる、今くらいが疲労効率も丁度良い。


音も無く土埃もほとんど出ず動きがない人間が時速60mで進む姿は知らん人が見るとホラーそのものだ。


なので人目を避けて人がいない道無き道を進むのだが草木が当たると結構痛い、

「イテッ」とガイエスブルク、小さな木が当たった様だ。


本気で進む気になれば正面に物理防御障壁を張り草木を薙ぎ倒しながら移動もできるが、地龍たる者が大地を乱して意味無く草木を倒すなどあってはならぬ暴挙だ、当然、草木が深い所は普通に歩く。


「もうすぐ森だね、止まるよ二人共」と先頭のエレンが号令をする。


「「了解!」」


スウウとゆっくりと停止する3人

出発して4日目、移動距離は1200kmと少し予定より遅い、最初は王都の西に広がる大草原を抜ける予定だったが戦時下と言う事もあり草原には各方面軍が集合して平原のあちこちで演習をしてるからだ。


仕方ないので草原の北ルートに回ったが山あいには村や集落が多く「地走駆」があまり効率的に使えず普通に歩いての移動が多かったからだ。


「まあ今更10日程度は遅れても良いだろ?」とガイエスブルク言うと、

「そうですね、慌てないで行きましょう!」とシーナが答える。


めちゃくちゃ呑気な2人に到着遅延の最初の原因を作ったエレンは「でも今日中には森は抜けたいわ」と何とか2人に発破をかけるが余り効いてない様子だ。


そうして今3人がいる前に広がるのが大森林「ドライアドの森」だ。


ユグドラシルが作り眷属のドライアドが管理している樹竜や岩竜が跋扈する魔の森で人間が立ち入り事は滅多にない禁足地だ。


人間には危険極まる森だが地龍には通り易い森だ、ましてやユグドラシルが同行している。


「ここなら魔物を気にしないで安全に抜けれるから距離が稼げるよ」とエレン。


しかしエレンの考えは正解であり不正解であった、3人が森の中心まで来た時に沢山の竜種が顔を出したのだ。


「キュウゥ」「キュイイ」「クワクワッ」「キューン」「キュイキューン」「クゥー」「クエエエ」

シーナ達を取り囲み鳴く竜達の大合唱に「困りましたねぇ」と言いながらも嬉しそうなシーナ、竜達と遊びたくてウズウズしている。


100体を越える樹竜と岩竜に囲まれて懐かれてしまったのだ。


遂に3人の周囲にはゴロゴロと竜達が転がり出して「撫でて撫でて」攻撃が始まってしまう。


龍種を目指す彼ら竜達には地龍はスターでありアイドルだ、コンサート会場で目当ての歌手が客席に登場したら大騒ぎになるのと一緒だ。


そんな彼ら彼女らの思いを無下にするなど地龍の風上にも置けない行為だ!しっかりと撫でまくる。


「クゥークルル」と鳴く岩竜を撫でながら、

「岩竜って結構可愛い顔してんのな」とガイエスブルク。


「今日はここでお泊まりですねぇ」

樹竜が大好きなシーナはメロメロだ擦り寄る樹竜の首に抱きついている。


「ああダメよ!この子達、癒されるう」

頭をスリスリと甘える竜達に母性本能が刺激されまくりのエレン。


竜達の作戦に見事に首までどっぷりと浸かってしまった3人、今日の旅はここまでだ。


2時間後そろそろ夕日の時間が近づいて竜達も少し落ち着いたのか3人の周囲で思い思いに過ごしている。


シーナ達も落ち着いて食事代わりに地脈から魔力を吸収している。



「ここの魔力美味しいですねぇ」


「そうだな魔力の密度が濃いよな」


「山の魔力とはちょっと違うわね」

と旅先の食事を楽しんでいる3人だった。


旅飯話しを期待してた人はごめんなさい、これが地龍なので、食事しない種族なので、ついでに寝る時はごろ寝で風呂は浄化魔法で一瞬だった。


周囲に綺麗な川もあるのだが水浴びキャッキャなラッキースケベなどは特に起こらなかった、残念!地龍君。


そのまま竜団子の中で爆睡してしまった3人、なんだかんだでやはり疲れが溜まっていた様だ。


もうすぐ夜明けの頃、ユグドラシルは懐かしい気配を感じ目を覚ます、そうしてゆっくりと起き上がり、

「お久しぶりですね」と樹木に声を掛ける。


「はい本当に本当にお久しぶりですユグドラシル様」


樹木の中からスウと1人の女性が現れる、樹精霊王ドライアドのシルヴァーナだ

白い肌に深い緑色の長い髪、薄緑の瞳の美しい女性だ、やはりどこかアリーセに似ている。


「御復活、心より嬉しく思います」と頬に涙が流れそれが緑色の水晶となり落ちる


ユグドラシルはゆっくりと彼女の頬に手を添えて、

「うふふふふ、シルヴァーナは変わりませんね」と微笑む。


「いいえ、わたくしもお婆さんになってしまいましたよ」とシルヴァーナも微笑む。


「聞きたい事は山ほどもありますが、そのお姿は?」


「わたくしは今この子と同化しております、

この子のおかげで消滅を免れ、またシルヴァーナと会う事が出来ました」

と目を瞑り胸に手をやるユグドラシル。


「左様でございましたか」

言葉数は少なくとも2人の間の絆は数千年経とうとも色褪せる事はなかった。


すると「んんん」とエレンが身じろぐ、もう夜明けが近い様だ。


「わたくし達は朝日が上がるとここを去りますが必ず近い内にまたシルヴァーナに会いに来ますね」

と微笑みながらシルヴァーナの頬から手を放す。


「はい、必ずまた」と言いシルヴァーナは樹木の中にゆっくりと消えて行った。


それを見届けてユグドラシルはゆっくりと目を閉じ横になる。


少ししてシーナが少し動いて、

「良かったですねユグドラシル・・・」と寝言の様にシーナが呟いた。



そうして夜が明けて心地よい新しい朝がやって来た!希望の朝だ!

そんな感じで朝の体操を竜達の前で揃って全員でやる、健康優良児達には朝の体操は必須のイベントだ。


竜達も何とか見よう見真似で一緒に体操する姿が笑える。


体操が終わりシーナが竜達に向かって、

「では!出発しますよ!みんな元気に立派な龍種になって下さい!」

と竜達に声を掛けると、

「クエエエ」「キュウゥン」「キュイイイ」「ケエエエ」「キューンキュイーン」「クエクエー」「キュワワワ」「クエークエー」と、

集まった竜達が「了解しましたあ!!」と一斉に鳴いた。


「じゃあ!またねー!」

と竜達に手を振りながら森を抜けるべく歩きだすチーム夢幻!

目的地まで1500km!まだ半分も来てないぞ夢幻!

このままだと参戦するべき戦争が終わってしまうぞ夢幻!

多分まだまだ足止めを食らうぞ夢幻!フラグを立てたぞ幻夢!


本当に旅に向いてない連中だ・・・


そんな幻夢にすぐさまフラグと言う名の天罰が下る!


「きゃあああ??!!」パックンチョオオオオ!!!


「シーナ?!」


「キャアア?!シーナ!!」3人の悲鳴が響いた!


正に一瞬!一瞬の出来事だった。


森を抜けた先はドライアドの力が及ばない荒野と砂漠地帯だ「地走駆」で距離を稼ぐ絶好のエリアだ。


竜達と別れて意気揚々とシーナを先頭に走り始めて500m進んだ時だ!


「サンドワーム」こと砂みみずの亜種のめちゃくちゃデカい奴だ!


こいつらが集団で罠を張っていたのだ、森から出て来る獲物を待ち構えていたのだ!


丸飲み・・・


そうシーナは体長10mほどのサンドワームに見事なくらいにパックンチョされたのだ!


この一帯の魔物はサンドワーム、ロックリザード、黒虫、ワイドスコーピオンなどの知性に乏しい魔物が多い、知性が乏しいので龍種だろうが何だろうが動く物なら何でも襲う!


龍種なら危険度の低い魔物達だがとにかくウザい、紫虫の親戚の黒虫は本当にウザい、全滅するまで襲ってくるのだ。


人間の場合、幸い動きの遅い魔物が多いので馬車を飛ばせば何とか逃げれる。


しかし奴等とて無い知恵を絞り頑張っているのだ、その頑張りに見事にしてやられたのだ!


・・・・・・哀れシーナの旅もここまでだ・・・


そんな事も無く、シーナはサンドワームのパックンチョ程度で特にどうにかなる物でない、ないのだがビックリするのだ!


ビックリしたシーナがどうなるかと言うと・・・・


「グゥヴヴヴ!!」低い唸り声が響いた後に「ガアアアアアアアアアアア!!!!」サンドワームの中から龍の咆哮が上がる!


ドゴオオオン!!!!シーナをパックンチョしたサンドワームが爆発四散した!


「フーフーフー・・・グゥヴヴヴ」

地龍の威嚇の唸り声と共にもうもうとする煙の中からシーナが姿を現す!


ギロッ!!シーナの目の色が真っ赤っかだ!怖い!メッチャ怒ってる!

普段のホヘーンとした表情はどこへやら怒りの顔は正に龍だ!やだ怖い!


ちなみにエレンとガイエスブルクはとばっちり回避の為に800m先の岩の陰に速攻で避難済みだ!シーナが怖いから。


「グゥヴヴヴ!!地壊!!!」地獄から響く様な唸り声と共にシーナが地面に手を突いて叫ぶ!


ゴガアアアアアアアアアンンン!!!!蜘蛛の巣状に周囲300mに渡り地面が裂け沢山のサンドワームが空中に放り投げられる!


「ガアア!!!」咆哮と共にシーナが飛び上がり戦斧で空中のサンドワーム達を片っ端から斬り刻み始めた!だから怖いっての!


「地琰!!」シーナが叫ぶと地割れから炎が噴き出す!地琰龍ノイミュンスター直伝の技だ!


炎がサンドワーム達を丸焼きにしていく!

その炎の中でシーナが「ガアアアアアー!!」と咆える!


地龍の逆鱗・・・


天龍も凄かったが、やはり地龍も凄かった、マジ怖い光景だ!ヤダもう!




炎は30分に渡り猛威を奮ったのだった。




ほぼ全てのサンドワームが燃え尽きた頃シーナは正気に戻った。


「本当にビックリしましたよ!怖かったですよ!」シーナはプンプンだ。


「いや、その後のお前のほうムグ・・・」

エレンがガイエスブルクの口を塞ぎ「大変だったねぇ」と笑う。


実はシーナがこうなったのはこれで3回目だ。


1回目は盗賊の討伐依頼の時に15人の盗賊に囲まれて背中を切り付けられた時

その時は恐怖のあまりの激昂で魔力暴走を起こして周囲500mが火の海となり50人弱の盗賊は全員が焼死した。


2回目が今日より酷く200名強の暗殺者集団に襲われエレンが矢を10本ほど体に受けた時だ。


怒りのあまりにシーナは完全に理性を失いノイミュンスターが止めに入るまで162名の暗殺者をことごとく滅ぼした、生き残った者も全員が満身創痍の酷い惨劇だった。


その後地龍王クライルスハイム自らの徹底的な精神修行で完全に理性消失する事は無くなったが、まだ若いシーナは結構簡単に激昂してしまう。


ホヘーンとしてる奴に限って怒るとヤバい代表だ。


自分が人を殺した事にシーナはやはり落ち込んだが戦いの中での事とノイミュンスターに懇々と諭された。


今では人を殺したくは無いが必要な時は躊躇わないと考えている。

龍戦士とはそう言う者だからだ、それが出来ないならピアツェンツェア城へ行き王女になるべきだ。


今回の遠征も精神修養の意味合いが強い、つまり戦いに慣れる為である。


ちなみに激昂時と通常時ではどちらが強いかと言うと、通常時の方が圧倒的に強い、激昂時は魔力も龍力の使いもめちゃくちゃでアイドリング状態からアクセル全開で無理矢理ギアを入れて急発進する様な感じの使い方だ。


つまり簡単に激昂してしまうシーナは龍戦士とはまだまだ認められない、怒りを力にして冷酷に敵を殲滅しなければならないのだ。


その事を理解しているシーナは今、簡単に激昂してしまった事を内心酷く落ち込んでるプンプンしているのはそれを隠す為だ。


実は無理な龍力の使用で身体もあちこちにダメージがありかなり痛い、天龍王の加護が無ければ動け無かった事だろう。


激昂するとは自傷する意味も有り何一つ良い事は無い。

シーナは反省しきりだった。


その日は400kmほど距離を稼ぎ終了した、後3日で到着する予定だ。


辺りに良い岩場が無かったので小山に10mほどの洞窟を掘って潜り込む、洞窟と言っても内壁はコンクリート程度には固めたトンネルと言って言いだろう、入り口には防御壁を張り魔物の侵入を防ぐ。


「どう?まだ痛い」

とエレンがシーナの隣りに座る、ちなみにガイエスブルクは既に爆睡だ、育ち盛りなので。


「バレてました?」えへへと苦笑いをするシーナ


「そりゃあね、シーナが赤ちゃんの時から見て来たからね」

そう言いながらエレンはシーナの頭を自分の膝に持って行き膝枕をしつつ頭を撫でる。


「私の赤ちゃんの時ってどんな感じだったんですか?」


「凄い大人しい子で心配したよ、夜泣きも殆ど無かったしね、

心配で話し掛けると笑うんだけど、こうやって頭を撫でるとすぐ寝ちゃうの」


そう言いながらシーナの頭を優しく撫で続ける、するとシーナを目が少しづつ閉じていく・・・


「ごめんなさい、エレンお姉ちゃん・・・」寝言の様にエレンに謝るシーナ


「いいよ」とエレンはシーナの頭を撫で続ける


こうして旅の夜が更けて行くのだった・・・

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