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片腕の王女編 2話 「地龍王の山」

地龍王が住まう山、そこはかつて霊樹ユグドラシルがあったとされる場所だ。


標高2500m級の中規模の山々が200ほど連なり、それらの山々の深い森が続き多くの小川が流れ東部には中規模ながらも湖も有り、自然豊かな場所の奥地にある標高1500mの一見すると何の変哲もない山だ、山の麓にはスカンディッチ伯爵領があり、山脈を縦断する街道の交通の要所としてある程度の賑わいを見せる。


しかし豊かな自然に比例して魔力が豊富なので山には数多くの魔物が棲みつき、人間にとっては危険な地龍を頂点にした魔法生命体の楽園である。


自然豊かな場所に住む地龍達は家を持たないと人は言う。


龍種に対しての知識が乏しい今の時代の人間はその様な認識だが、そんな事もなく地龍達は人間達より遥かに立派で芸術的な建造物を作り出して巨大な都市を形成して今現在もせっせと増築中だ。


その為に、とある古書には王都に匹敵する程の地下都市があると記されているがそれも実際は正しくはなく、現在も続く増築で実際にはピアツェンツェア王都の約15倍はある面積の地下に5つの階層で構成されている巨大な地下都市国家が出来上がっている。


実は完全な地下と言う訳で無く、渓谷の底に有る巨大な洞穴の中にあると言った方が正解だろう、都市の3割は地上に出ている半地下都市との表現が正しい。


都市機能は地脈による電気に類するエネルギーで運用され都市は隅々まで照明の光に照らされ数々の荘厳な建物に整えられた道、人間の文化の3世紀は先をいくハイテクノロジー都市だ。


その都市の中央に人間の建造物で言う所の50階建ての建造物に匹敵する高さの巨大な王宮が地龍王クライルスハイムの棲家である。


その王宮内にある防衛司令本部では山脈の全域とスカンディッチ伯爵領を中心に半径5kmに監視魔法陣が張られ魔法石に映し出される映像で24時間交代制で侵入者や不埒者がいないか監視している。


その中の1つの魔法石に映し出される映像を見て巨大で悠然な地龍が不愉快そうに呟く・・・


「「神虎の子が山に入ったか」」と穏やかだが耳にすれば思わず平伏したくなる威厳に満ちた声だ。


体長は50mをゆうに越え、黒褐色の鱗は陽の光で虹色に変わり、薄い緑色の瞳は溢れる知性を讃え、力の根源たる地の魔力は対する者も無しと謳われる。


この地龍こそ「地龍王クライルスハイム」である。


約5000年に渡り地龍達の王として君臨し、世界の全ての地脈より生じる魔力を制する至高の存在の1柱である。


龍王とは呼ばれているが、今は存在しない世界の創造主「霊樹ユグドラシル」より「薄緑色の瞳」を授かった「神」の1柱でもある、その眷属の龍種とは神に使える「使徒」と言って良い、龍種は時に人に禍を時に人に恵みをもたらすが基本的には不干渉である。


人間達が自らの保身のみを願う「地龍王への生贄」その様な真似など龍王の尊厳に対する最大の侮辱そのものであり下手をすれば国が滅ぶ暴挙といえる。


「「全く双子の女児の生贄などと愚かな事だ」」と再度地龍王クライルスハイムは身勝手極まりない人間の愚行に苦言を放つ。


腹立ち気に吐き捨てる王の言葉に傍らに控える側近の龍戦士が答える「「山を登る女はピアツェンツェア王国の王妃の様です」」と。


「「ほう」」


愚かな人間共の愚行に不機嫌だった地龍王だったが、子を連れているのが当の王家の王妃だとは思わなかった、少し王妃の思惑に興味が沸く、なぜ自ら出向いたのか?と。


「「お会いになられますか?」」側近の龍戦士が王に尋ねると、


「「ふむ、そうだのう・・・」と地龍王は考えこむ。


この時に「生贄になる女児」を決死と思われる覚悟で抱く母である王妃に対して地龍王クライルスハイムの心境に少し変化があった、この心境の変化が王妃の腕の中にいる片腕の王女の未来を激変させる事となる。


すると地龍王は友の気配を察知する「「む?・・・王妃の近くに地琰龍ノイミュンスターがいる様だな、この場は彼奴に任せるとしようか」」少し穏やかになった声色で側近に告げる地龍王クライルスハイム


「「あのお方はまた近くにいらっしゃるのに・・・」」と近くに居るのならば何故に王に挨拶に来ぬのか?と苦言を言いたそうな側近だった。


「「はははは、まぁそう言うな」」とクライルスハイムは笑う、彼が人間に近づくなどいつ以来だろうか?余程、王妃は面白い人間なのだろう地龍王クライルスハイムは感じていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


必死に前だけを見つめて歯を食いしばりながら山を登り続ける王妃ファニー。


既に着ているメイド服は枝に引っ掛けてあちこちにがボロボロになって来ている、しかし足を止める事は絶対にない!


靴ズレして足も痛むが知った事では無い!


腕の中には自分の娘がいるのだ!子を守る為にも絶対に地龍王に会いに行く!


そうしてこの身と引き換えにしてシーナを救ってもらうんだ!

その根性のみで足を動かしている。


「ハアハアハアハア」息が切れ額の汗が落ちる。


普段は宮殿で日々を暮らす王妃である、戦いには無縁なはずだ。


しかし彼女は英雄ライモンド出生のヴィアール辺境伯家から国王ヤニックへの嫁入りで、若き日は反乱軍や盗賊団に魔物の襲撃を迎撃などの戦場を駆け回った女傑だ。


そんな王妃ファニーだったが宮殿生活の6年の間に随分と体力が落ちたものだと自分を笑う。


愛する陛下と共に歩み6年目にしてようやく授かった可愛い我が子、簡単に死なせてなるものか!その思いのみで気力を振り絞って山を登る。


その王妃ファニーがいる3km先の山の中腹に立つ二人の龍種がいた。


「「見よノイミュンスターよ少しは骨がありそうな女ではないか」」楽しそうに年嵩の地龍が隣にいる身体の大きな赤黒い立派な地龍に話し掛ける。


「「ふむ、人間にしては強い部類であろうかのぅ」」話し掛けられた地龍はふむふむと人間を値踏みをする。


山を登る王妃をかなりの数の地龍達が龍眼にて見張っている、地龍は鍛練が大好物の種族である、歯を食いしばりボロボロになりながらも気迫で山を登る王妃を好意的な目で見る者が多い。


「「彼奴は何の目的であろうかのぅ」」


地琰龍ノイミュンスターは王妃に対する興味が広がる、話しによっては協力するのもやぶさかで無いかもな?と思う程度には王妃ファニーの気迫に好感をもったノイミュンスターであった。


「「ふむ、よし!少し王妃の思惑が何か試して見るかのぅ」」とファニーと接触して見る事にした地琰龍ノイミュンスターだった。



この王妃ファニーと地琰龍ノイミュンスターの出会いでまた本来なら訪れる未来が無かった片腕の王女の運命が大きく動いた!

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