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ユグドラシル編 最終話 「ユグドラシルの思いと解説者の誕生」

わたくしは霊樹ユグドラシル、この世界を作りし者。


わたくしを神と言う者もおりますがそうではありません。


わたくしは世界の望みを顕現させるだけの存在。


世界を作り30000年以上の刻が流れわたくしの身体である霊樹にも終わりの刻が参りました。


形ある物は必ず滅びる・・・


宇宙の真理に従いわたくしも喜んで滅びましょう。


滅びに際して地龍、天龍、海龍、魔族、エルフ、人間にわたくしの瞳を授けます。


皆で仲良く過ごして欲しいと願いましても悲しい事に叶わない願いでしょう。


わたくしの身体が滅びるとわたくしは力を失いましょう。


ですが世界を見守る事は出来ます。


これからはわたくしの子らを見守ります。


願わくば仲良き事を・・・・・・・










・・・・・・・・・・シーナ?





・・・・・・・・






・・・・シーナってば




「ねえ?シーナ?」


「うえええええ?!!って私・・・寝てました?」


「すげぇ絶叫だな・・・いやお前なんかボーとしてたぞ・・・ってなんで敬語なんだよ?」とガイエスブルクが笑いながら言う、シーナは辺りをキョロキョロして首を捻る。


「どうしたの?シーナ様子が変よ?」


「ん?うん!何でもないよエレンさん!」


「エレン「さん?」


「あれぇ?」


エレンは心配そうにシーナを見つめる、シーナはエヘヘと笑い「うーん?」とまた首を捻って考えだす。

オーバンとマッテオは顔を見合わせて・・・


「シーナ殿は疲れている様なので今日はこれまでとしましょう」


「そうですね」


「!!?いや!大丈夫ですよ!新しく作った義手も馴染ませたいし!」


エレンはシーナの額に手をやり目を瞑り魔力を流す・・・


「うーん別に何も問題なしだね」


「そうだな・・・普段より口数が多い気はするけど」


「気配や魔力の質も変化は感じませんね」


「では、続きの訓練をしますか?」


「そうだよ!私は大丈夫!行きますよ!」


フンフンと言いながらまた歩き出すシーナを後ろから見つめて・・・


「シーナって自分の事「私」って言ってたかしら?」


とエレンが心配そうに呟いた。

シーナの中で確実に変化が出ていた、無表情さが無くなり表情が豊かに感じる。

それは別に悪い事ではないのだが、何か不安になる幻夢のメンバーだった。





次の日


「シーナおはよう」


「んっおはよ」


シーナは普段通りの無表情さだった、昨日は気のせいだったかしら?とエレンはホッとする。



その次の日


「シーナおはよう」


「うーんおはようごじゃいますぅエレンしゃん」


「・・・・・」


やっぱり何かがおかしい!と思うエレン。

その日のシーナは終始明るく表情が豊かだったが特別おかしな言動は無い、がエレンはやはり心配なのか鍛冶屋に連れて行く事にした「白龍大爆走再び」にはならず普通に歩いて行った。


鍛冶屋に到着すると運が良い事にまたリールがいた、シーナの様子がおかしいと伝えると。

ノイミュンスターはシーナの頭に手をおき自身の魔力を流し「どうじゃシーナ?何か不快感はあるか?」と尋ねると、

「いやないですよ?みんなどうしたんですか?」と不思議そうにシーナが答える。


「ふむ」とノイミュンスターはリールを見る。

リールはひとつ頷いて「よしシーナ!精密診察しよっか!」とシーナをヒョイと担いで部屋に連れて行く。


「ひゃああああああ????!!!またですかぁ?!」

と悲鳴を上げながら消えて行くシーナを見て、「シーナ大丈夫かしら?」と不安気なエレン。


「エレンよ何があってもシーナはシーナじゃお主は変わらず側にいてやって欲しい」と少し困り気にエレンを見てノイミュンスターが懇願する。


「当たり前ですよ!」ノイミュンスターの言葉にエレンが珍しく不貞腐れる。


「シーナ・・・どうしちまったんだろうな?」ガイエスブルクも心配そうだ。



2時間後


「うっうう・・・やっぱりもうお嫁に行けません、リール様に嫁ぎますぅ」

リールに一体何をされたのか・・・自分の体を抱きしめて泣くシーナ。


「じゃあ診察の結果ね!

全て問題無しの超健康優良児!ちゃんとお胸も成長して来てるよ!」


幻夢のメンバーが安堵の表情を浮かべる


「シーナの成長に合わせて精神も成長して来てるから今までより感情が表に出て来ているんだろうね!良い事だから皆んな心配しない様にね」


良かった良かったと解散する一同


「あっシーナにはお胸の事でまだ話があるから私ともう一回部屋に、エレンもね、男共はさっさと解散!」


胸の事と聞いて顔を赤くして、そそくさと解散する男共、なぜかノイミュンスターも釣られて解散する。

そのままシーナ、エレン、リールは部屋の椅子に向かい合わせに座る。


椅子に座るとリールは一つ大きく深呼吸をする、すると周囲の大気が蒼く閃光を放ちリールへと収束して行く。

天龍の深呼吸は精神力完全集中、全魔力上昇、全龍力上昇、全身体能力上昇を意味する究極の切札の一つだ。


「!!!リール様?!」エレンが驚く!


「ふー・・・よし!」全ての能力を上昇させたリールがシーナに向く。


「お初にお目に掛かりますユグドラシル様、私は天龍王アメデの娘、天舞龍リールと申します」


そうリールが言うとシーナは眠る様に目を閉じゆっくりとまた目を開けた。

その雰囲気は今までのシーナに見える、そうしてゆっくりと口を開く・・・


「さっきはありがとうリール、助かったよ」やはりいつものシーナだった・・・


「どう致しまして、それで私は貴女と腹を割って話しがしたい、いいかな?」


「うん、いいよ」


「エレンはシーナの親友だからここに呼んだ、それも良い?」


「うん」


「シーナ?ユグドラシル様?」エレンは混乱の極致だ。


「ごめんエレン、あたしは長い間エレンを騙していた、あたしの正体はユグドラシル、シーナじゃないんだ、ごめんなさい」


「?あ?う?」


「シーナはおかーさん・・・王妃ファニーのお腹の中でラーナと同化して消える運命だったんだ・・・

でもあたしはシーナの声を聞いてしまった「生きたい」って声を」


「・・・・・」


「あたしはユグドラシル、世界の願いを顕現する者。

シーナの「生きたい」との願いを無視する事は出来なかった」


ユグドラシルは目を閉じて何かを噛み締める様に、

「分かってるよ世界には産まれる事が出来なかった命は沢山数えきれないほどあるって。

あたしは神じゃない全てを救う事なんて出来ない・・・でもシーナの声を聞いちゃったんだよ」そう言うとシーナ・・・ユグドラシルは俯く・・・


「・・・失礼だとは思うけど言うね、今のユグドラシル様に以前の力は無い・・・赤ちゃん1人救う力がある様には見えない」


「そう霊樹が枯れ滅びたあたしに出来るのは世界を見守る事だけだった。

ただ世界に漂い世界の行く末を見守りゆっくりと消えていくだけだった。

でもシーナの声を聞き助けたいと、あたし自身が世界に願ってしまった、消える前に最後の1人を助けたいって」


「シーナは・・・どうなるのですか?・・・あなたの事ですよ?」

エレンはようやくと言った感じで声を出す、するとユグドラシルは首を振り、


「わからない、シーナの魂を守る事が精一杯だったから・・・

あたしの今までの感情、人との会話、目で見た事聞いた事の全てをシーナの魂に注いで来たから、シーナはあたし、あたしはシーナ・・・

この人格はシーナの邪魔にならない様に作った物だから正確にはあたしの物とも言えない」


「今までの私との生活も何も感じないの?」


「ううん、あたしの根底から変わるくらいに楽しかったし嬉しかったよ。

・・・・これからもずっと一緒に生きたいと思えるほどに」


「よおし!言質は取ったよ!ユグドラシル様!」

突然リールがユグドラシルを指差して大声を上げる、驚きユグドラシルとエレンの目が丸くなる。


「私がなんで天龍の切札を切ったと思ったの?当然シーナもユグドラシル様も救うつもりに決まってるでしょう?で?どうすればユグドラシル様の消滅を防げるの?」


「あ?え?それは精神エネルギーが不足してるから、それを補えるなら」


「なぁんだよぉ、そんな事?言ってよ!私が無駄に有り余る精神エネルギーをじゃぶじゃぶとユグドラシル様に注いであげるよ!そんでシーナもユグドラシル様も助かる!エレンも悲しまない!どう?!」


「そっそんなっ都合の良い話し・・・」


「その都合の良い話しを叶えるのが天舞龍(うんめいをつかさどるもの)リールの力だよ!ユグドラシル様は真面目過ぎ!使える者は龍王だろうと使いまくって自分も皆んなも幸せになるの!」


「うっうん分かったよ」


「エレンもウジウジしない!本当のシーナはユグドラシル様と一緒!多少性格が違うかも知れないけど」


「はっはい!」


「じゃあ今から出来る事は全部やるよ!いいね!」


「「はい!」」


「よろしい!で?本当のシーナの状態は?」


「まだ完全に身体を任せるのは危険だと思う、1日ごとに休ませないとダメ・・・

完全な定着まで1年は掛かると思う、身体から離れてた時間が長かったから」


「何で本当のシーナは身体から離れていたの?」不思議に思ったエレンが尋ねる。


「外の世界を見たかったんだと思う、好奇心旺盛で活発な子だから」

そう言いながら笑顔になるユグドラシルは吹っ切れた良い笑顔だった。


それからユグドラシルは全力全開のお医者さんの、天舞龍リールの情け容赦ない治療を受けていた。


「あ?ああ?あー?りりリール?わたくしは大丈夫、もう大丈夫ですからー」ユグドラシルは思わず悲鳴を上げる、あまりのアレやコレでユグドラシルの仮人格は見事に吹き飛んでいた。


「まだまだぁ!ユグドラシル様はこんな酷い状態で良く動いていたね!本当に消滅寸前だったじゃないの!」更にリールは精神エネルギーをドンドンとユグドラシルの魂に注入していく。


「あ?あ?あーれー、そっそんな無体な」エネルギーが枯渇した魂が精神エネルギーを注入されると激しい快感に襲われるのだ!


「シーナ頑張れ!」エレンはそんな事知らないので応援するのみだ。


「調子の悪い時は自分一人で解決しようとしない!必ずお医者さんに相談する事!いいね?!」リールも魂に精神エネルギーを注入すると快感があるとは知らないので単純にユグドラシルは苦しい物だと思い、早く苦痛から解放せねばと更に注入スピードを上げる!


「はいいい、あー?あー?あーれー」


文字通りの有り余るリールの精神エネルギーがジャブジャブとユグドラシルに注がれる、徐々にユグドラシルの存在感が増していく!しかしユグドラシルは違う意味でもう限界だ。


「むむう、これでもまだ完治しないか・・・こんなに酷い症状は初めてだよ、ならば天舞龍究極の奥義「運命改変!!」


「え?ええ?ええええー?」本日一番のもの凄い快感がユグドラシルを襲った!


天龍の本領発揮の病状を運命ごと改変して行く奥義だ!ちなみに改変できるのは病状だけの治療魔法だ。


ユグドラシルの消滅の危機は完全に脱したのだが、そこは天龍(おいしゃさん)!!少しでも悪い所は絶対に見逃さない!徹底的に治療をしていく!リールはお医者さんの鏡なのだ!


「ふええええ、もうダメですー」もう無理ですわーと言った感じのユグドラシルは、「シーナ!頑張ってー」とのエレンの声援を耳にしながらユグドラシルは完全に昇天した。

・・・・・・・・チーン・・・





2時間後




「ふー、これでとりあえずは大丈夫だね、後は経過観察と薬での治療で大丈夫だよ」

リールはやり切った清々しい表情だ、天龍先生(おいしゃさん)はやり切ったのだ!良い仕事したね!リール先生。


「ううっ本当にもうリールに嫁ぐしかありません・・・」寝かされたユグドラシルが涙する、本当にリールの嫁に行くつもりはないが、何かは失ったのだ・・・


ちなみに一連の動きを感知していたノイミュンスターは「なんちゅうか・・・凄かったのぅ」とドン引きしていたが助ける気も特には無かった、地龍なので。


ユグドラシルがヨロヨロと復活するのに丸2日要した。


その後シーナの真相は地龍王、天龍王、エレン、リール、ニーム、ノイミュンスター、ファニーのみに伝えられて他には伏せられる事になった。


シーナとユグドラシルの身の安全が第一の理由だが来るべきユグドラシルがシーナの身体を返す日に混乱しない様に徐々に本当のシーナを周囲に馴染ませる為にでもある。


それから時は流れ1年が経ちシーナの魂の休息日以外はユグドラシルが表に出て来る事は無くなって行った、周囲も最初は不審に思っていたが日が経つ内に本当のシーナに対する違和感は消え馴染んでいった。


「なるほど、あの時にクライルスハイム様の右目がシーナに吸い込まれたのは世界の必然だったと言う訳ですな」ノイミュンスターが納得した様子で頷く。


「そうだね、あたしには瞳を取り戻す力なんて無かったからビックリしたよ・・・

でもそれでシーナの命は救われた、あの時のあの子は自力で普通に人間としての成長出来る力は無かったから地龍になれなかったら死んでいたと思う」


つまり食事でのエネルギー摂取では命の維持は出来なかったのだ、地龍になって地脈から直接生命エネルギーを摂取出来る様になったからこそシーナは生き続ける事が出来たとユグドラシルは語る。


今日はシーナの魂の休息日だノイミュンスターがユグドラシルに経過の説明を受けている。


「シーナはもう完全に身体に定着したから心配ないよ・・・あたしはおかげ様で1000年は消滅する事は無さそう、魂に何かを刻まれたけど・・・」今でもリールに嫁ぐべきでは?と思うユグドラシル。


「それは良うございましたな、してシーナに身体を返した後はどうなされるのですかな?」


「シーナが生きている間は離れられないほど魂同士が密着しているからこのままだよ・・・そうだね、この「魔法世界の解説者(みまもるもの)」でもなろうかな?」


「ほう、解説者(みまもるもの)ですか・・・貴女様にはピッタリですなぁ」ワハハハハとノイミュンスターは笑う。


「あの子の人生はようやく始まったんだよ、これから素敵な人生になる事を世界に願い続けるよ」

ユグドラシルは世界にシーナの幸せを願い続けるつもりだ。



王国に産まれた小さな命は運命を変えながら少しづつ大きくなり「魔法世界の解説者(みまもるもの)」の誕生をもって世界に向けての第一歩を歩み出す事になった。


これより先はそんな片腕の王女の本当の物語。

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