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ユグドラシル編 4話 「ピアツェンツェア王城の戦い」

スカンディッチ伯爵領の上空を飛ぶ1人の天龍・・・


体長は12mほどと小柄だが広げた翼の両翼は30mほどの立派な天龍だ、体の色は美しい青色、天を飛ぶサファイアと言っても良い。


古い神話にも出て来る天を舞う優美なる龍、天舞龍リールだ。


スカンディッチ伯爵領の地龍達は流石に超大物登場に騒然となった、そんな中で地琰龍ノイミュンスターは上空を見上げて、

「おおっ随分と久しい顔じゃのぅ」と暢気な事を言っているが隣のマッテオは気絶寸前だ、そりゃいきなり神様降臨となれば気も遠くなるだろう。


天舞龍リールは町の周囲を一周して真っ直ぐノイミュンスターの鍛冶屋の前に降り立った、「「ひっさしぶりーノイミュンスター」」荘厳な姿に似合わない明るく可愛いらしい声が辺りに響く。


「おおっ久しいのぅリールよ息災そうでなによりじゃ」


まるで近所の朝の挨拶の様な会話が繰り広げられているが隣りのマッテオは既に気絶している


「「あれ?その子大丈夫?」」


「ん?おお、どうやらお主の美しさにやられた様じゃな、これ以上被害者が出ん内に人に化けては貰えんかのぅ?」


「「ああ、ごめんごめん」」


シュッとメイド姿の女性になるが肩には魔族のオーバンが担がれている


「ん?なんじゃその魔族の男は?」


怪訝な顔で男の顔を見るノイミュンスター、全てが終わったと言わんばかりの顔のオーバン、そこに気絶しているマッテオにバツの悪い笑顔のリール、なかなかのカオスな状態だった。



一連の話を聞きノイミュンスターが、

「なるほどのぅ、まぁ我は構わぬが・・・・」


スッとオーバンに目をやりオーバンを威圧して「お主がレンヌを裏切れば我とリールが世界の果てまで追うと思うが良いぞ」と告げる。


真っ青な顔で頷くオーバン、それからオーバンが知りうる全ての情報を聞き出したが残念ながら目新しい情報は無かった。


「ふむ・・・では魔族はシーナの事には懐疑的な考えなのじゃな?」


「懐疑的と言うより優先順位を低く見積もっていると思われます、王女ラーナの姉で王国分断と言う狙うなら利用価値は高いですがまだ調査の段階なので」


「それで今回の首謀者の名は?」リールが尋問をすると、

「第六軍司令官のブレストと特務隊のアミアンです、私は特務隊でした」とアッサリと自白するオーバン、魔族軍に未練は無いように見える。


「今後レンヌとはどうするのじゃ?」とノイミュンスターが尋ねるとオーバンは辛い表情をして、

「っつ!!・・・彼女の負担にはなりたくありません、今後会うつもりはありません」と心に無い事を言うとノイミュンスターがつかさず、

「お主は今初めて嘘をついたのぅ!会いたいと心から思っておるじゃろ?なぜ嘘を吐くのじゃ?

会わない事はレンヌにとって何も良い事などないぞ?お主は何の為に此処に来たのじゃ?レンヌと幸せになりたいと願ったからじゃろ?ならばレンヌと幸せになれば良かろうて」と畳み掛ける。


それから「まぁその辺りはリールが上手くやるだろうて」とノイミュンスターはニヤリと笑う、右隣りでリールは頭を抱えているが・・・

「その件もノイミュンスターに任せていい?」とりあえずリールは言うだけ言って見ようとする物の・・・

「我に色恋の何が分かると思うのか・・・」と呆れた顔のノイミュンスター返された。


「ごもっとも」と再び頭を抱えるリール、とその時、

「む?」「王城で何かあったね」とノイミュンスターとリールが同時に呟く。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ゴオオオン!ドオオンン!


ピアツェンツェア王城での魔導砲の発砲音が王都にも響く、街の民衆がパニックにならない様に警備兵達が避難誘導を始めていた。


王城の緊急事態を察知した冒険者達がギルドのハイマスター、イノセントの指示で王都内へ展開して有事に備えると共にBランク以上の者は全員王城へ援軍へ向かう事が決定した。



一方渦中の王城内では近衛兵団を中心に魔物との戦闘が激化していた!

魔物の数は多いが初期対応が良かったので被害は最小に抑え込まれていた。


「城内に魔物が召喚されだぞー!!」

「黒狼50体が外宮に向かってます!外宮通路の扉は閉鎖完了です!」

「城内の要人は内宮のホールへ誘導せよ!慌てるでないぞ」

「各地区の門は閉められて城壁からバリスタでの攻撃を開始しています!」


突如の魔物の召喚に混乱した城内だったが近衛騎士団を中心に即座に立て直しが完了、迎撃が開始されていた。


天龍レンヌと天龍ニームは内宮に居た王女ラーナを連れて離宮にあるラーナの私室に避難が完了、ラーナの私室は見た目には解らないが天龍達によって多重防御障壁が展開している難攻不落の要塞になっていた。


「黒狼が56体、炎鳥が36匹、紫虫が285匹、大鬼が4体、小鬼が82体・・・後続は感じないわ」レンヌが龍眼で敵の戦力を分析する。


「召喚内容に統一性がないわね、おそらくは転移で送り付けたのね」


「なら後続が来るわ」


「それが本命ね」


「間違い無く龍種が来る!」


「同感ね」


ラーナを怯えさせない様に思念で会話をする2人、目を瞑りラーナの後ろに控えるメイドの姿は周囲と同化してるかの様に目立たない。


「大丈夫でしょうか?」


窓が全て鉄窓で閉められ薄暗い部屋でランプの明かりを見ながら不安そうにラーナ王女が呟くと、

「大丈夫でございますよ姫さま!皆様は宰相様に鍛え上げられた者達ばかりです!」

とラーナ王女付きの女官がラーナ王女を励ます。


名前はカーラ・フォン・ヴィターレ、ラーナが生まれてすぐ教育係に任命され乳母と共にラーナを育てて来た。


どこか冷たい印象を受けるが内面は子供大好きおばさんでラーナ付きの者達からは「お母さん」と呼ばれている。


本人に言うと「あなたのお母さんではありません!」と怒るが嬉しそうにする

天龍3人娘からも慕われている。


「そうですよね!大叔父様は凄いのです!」


嬉しそうにラーナ王女が返事をするのをみてラーナは彼女に任せて大丈夫と判断した2人は思念での会話を再開する。


「龍種が出たら私が出るのでレンヌはラーナと一緒に」


「待ってオーバンの事で迷惑をかけたのだから私が」


「あなたは天龍が出たら殺せる?」


「えっ?・・・・・それは何とか洗脳を解けば・・・」


「そんな余裕がないのは解ってるでしょ?」


「・・・・それでも」


「あなたは天龍を殺したら多分壊れちゃう」


「・・・・」


「お姉さんに任せておきなさいな」


城内での戦いは激しくなり離宮の側まで魔物が侵入して近衛兵が押し留めている。

しかし近衛側の優勢で戦いが進んでいて敵の駆逐も目前になって余裕も出てきた。

その気が緩む瞬間に本命の強力な戦力を投入すると一気に瓦解する事がある。


「本命が来るなら・・・今!!」

天龍ニームは思考を戦闘モードに切り替えた!





「「ガアアアアアアアアアアア!!!!」」



突然の龍種の雄叫びが周囲に響く!!


外宮の中庭の花壇の近くで突如空間が歪み翼を広げた体長8mほどの水色の天龍が現れた!目は血走り口から涎をたらして理性を無くした天龍は手当たり次第に周囲を破壊し出したのだ!


「てっ!!!!天龍?!」

「そんな?!!我々の守り神が?!」


天龍出現は城の兵士を混乱させるのに充分だった!一気に浮き足立つ城内に更に別の脅威が出現する!


「グオオオオオオオオ!!」


「そんな?!地龍まで?!」「くっ!総員距離を取れ!」


今度は城の裏手門の作業小屋が吹き飛び中から焦げ茶色の地龍が姿を現す!

龍種の二体同時出現、この絶望感は計り知れない魔物の掃討も終わってない。

落城?!その不安感が現実になりつつあったが、しかしここで王国の守り神が現れた!


「「まだ幼い天龍ね・・・可哀想に苦しいのね」」


その絶望感を静かに消す様な鈴の音の様な声が城内に響いた。

見るといつの間にか暴れる天龍の前に長い槍を携えたルビーの様な美しい赤い色の天龍が宙に浮いていた。


龍化した天朱龍ニームである。


「「洗脳のレベルは・・ごめんなさい・・・私では助けて上げられないの」」悲しそうに暴れる天龍に謝罪する天朱龍ニーム


「「ウガアアアアア!!」


本能のままに赤い天龍に襲い掛かる水色の天龍・・・

本来なら萎縮するほどの力の差があるのが解るはずだが理性を失って力の差まで理解出来ないほどに心が壊されてしまっていた。


「「せめて苦しまない様に一撃で・・・」」悲しそうな声と共に、

手に持つ槍が朱色のオーラを纏うと同時に赤い天龍の姿が消える!


「「龍炎」」」


赤い閃光が水色の天龍の体を突き抜け水色の天龍の体は一瞬朱色に染まって消えて無くなった・・・

言葉無くただその光景を見守る近衛兵士達だった。


「「次は地龍ね」」


そう言うとスゥと体を浮かせて地龍の元へ飛んでいく赤い天龍、残された人間達はただ呆然と飛んで行く赤い天龍を見送るのだった。


天朱龍ニームが地龍の所にたどり着いたら先程とは少し状況が違っていた、焦げ茶色の地龍はただ地面を転がっている?「「あら?あなたは結構大丈夫な様ね?」」と少し安心した様子のニーム


「「ぐっ大が大丈夫の様にがあ!!見えるか?グウ」」転移させられた焦げ茶色の地龍はかなり自我が残っていて洗脳に抵抗しながら地面をゴロゴロと転がっていた。


「「体があ!勝手ぐう!動きやがあ!る!なんとがあ!じて!くええ!!」」翼と尻尾をビッタンビッタンとさせる地龍、


すると「「はいはい、待っててね風縛陣」」ニームは魔法を発動させると、

ギュルルルと風の枷が地龍を覆い地龍は動かなくなった。


「「あなたも幼い地龍ね何があったの?」」


「「よぐ覚えでえ!ないんがあ!」」動け無くなったが破壊衝動のせいで苦しむ焦げ茶色の地龍だった。


「「気絶する?」」その方が苦しまないからだ。


「「だのぬぅ!」」早くぅ、との思いが伝わって来る表情の地龍。


ゴオオオン!!!もの凄い音が響くとニームの槍で頭を殴られた焦げ茶色の地龍は完全に伸びていた。


こうして魔物と龍種二体の王城同時侵攻と言う王国の一大事は1人の赤い天龍によって救われたのだ!


ワアアアアアアアア!!城内の人々から歓声が上がる。


しかし国を救った赤い天龍は気絶した焦げ茶色の地龍を担いで何処かに飛んで行ってしまったのだが・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



気絶した焦げ茶色の地龍を担いでニームはスカンディッチに飛んで来て、お約束の様にノイミュンスターの鍛冶屋の前に降りたったところ・・・


運悪く天舞龍リール降臨のショックの気絶から立ち直ったマッテオが外の空気を吸う為に玄関前に座っていた。


天朱龍ニームを見て、フラフラとまた気絶するマッテオだった。


すると店の中からノイミュンスターが出てきて、

「ウチは保護施設ではないのだがのぅ」

気絶した地龍を見てノイミュンスターが呟く、と言いつつも地龍に手をかざして「解呪」と囁くと焦げ茶色の地龍の体を龍気が包む、

「ほう・・・随分と趣味の悪い呪術式だのぅ」


ノイミュンスターでも手を焼く呪術式なのか・・・だか。徐々に徐々に解呪を進めていく、地龍は次第に体が力を失って行く、しばらくすると地龍は寝息を立て始めた。


「これで大丈夫じゃろ」


様子を見ていたニームは自分の不甲斐なさに自己嫌悪に陥っていた、この力が有れば先程の天龍を助ける事が出来たのでは?と。


「ニームよどこにも神などおらんのじゃ」


「「えっ?」」ハッと顔を上げるニーム


「我はこの地龍を助ける事は出来たがあの天龍を助ける事は出来なかった、この手で掴める物は少ない、無論、地龍王様も天龍王様もじゃな、今出来る事を全力でするしかないのじゃ」とノイミュンスターに諭される。


「「・・・・・はい」」思う所は多いが前を向くニーム


すると「「キュウ」」と声を上げながら地面に寝かされていた焦茶色の地龍が目を覚ました。

キョロキョロと辺りを見回しニームの姿を見つけると・・・


「「ありがとうございました!お姉さんのおかげで助かりました!あっ!オレの名前はガイエスブルクと言います!」」

尻尾をブンブンと振りながらガイエスブルクはニームの元へ近づいて行った。


見た目通りに幼いのだろう幼龍独特の仕草が抜けていない。

「「うん無事で良かったね」」

そっけない態度のニームだったが内心は大荒れだった!かっ・・・か・・・可愛いい!!

母性本能が全開になったニームだったのだ!


ちなみにガイエスブルクはまだ治療が必要でノイミュンスターの鍛冶屋の居候になった。

人化した彼はやはり子供で女の子と間違える様な美少年で更にミームの母性本能が更に爆発した。


こうしてノイミュンスターの鍛冶屋には、公爵家三男のマッテオ、魔族のオーバン、地龍のガイエスブルクと居候が3人に増えたのだった。


「だからウチは保護施設ではないのだか・・・」少し困惑するノイミュンスター


リールは戦いはニームに任せて転移陣の追跡をして敵の本陣を探索している。


レンヌはラーナのところで特に動かなかった、龍種の面倒見るが魔物くらい自分達で何とかしろと、天龍は地龍ほど人間に甘くないのだ。


魔物の急襲から始まったピアツェンツェア王城の戦いは魔族側の敗北で終わった。


しかし本当の絶望的な敗北を味わうのはここからだった。

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