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戦乙女の英雄 その19

ブロッケン侯爵の事件以降は、ファニーの学園生活は表向きは平和な日々が続いていた。


そう表向きは・・・


この時期、ゴルド王国の調略がかなり激しくなり、かなりピアツェンツェア王国の貴族が王家より離反していたのだ。


そのゴルド王国に唆され、性懲りも無くファニーの誘拐を狙う刺客をバッタバッタと返り討ちにしているヤニック。


もはや戦争状態と言っても過言では無い激しい戦いが展開されて、今回は冒険者の他にも正規の特殊部隊も連れて黒幕の殲滅に乗り出した王太子ヤニック。


そして炙り出した黒幕の伯爵には政治的な目的は無く、単純に金銭的に買収されただけと判明したが相次ぐ背任行為に楔を撃ち込むべく徹底的に掃除をするつもりだ。


真の黒幕が三大公爵家のひとつアスティ公爵家なのは大方判明はいるが確定した証拠な無い。


なので先ずは分かり易く証拠を残した伯爵を掃討してアスティ公爵家を牽制する。


伯爵領で反王家の貴族達が呑気に集会を開催しているタイミングで伯爵邸へ乗り込む掃討部隊。


「何者?!ええ?!親征部隊?!ヤニック殿下?!なっなな何故当家に?!」


「悪いな、お前達は眠っていろ」ゴオン!!イノセントに殴られて気絶する門番達。


親征部隊はコソコソなどしない、正面玄関の扉をブチ破る!


「おおおお待ちを!お待ち下さい!」


「死にたく無いヤツは部屋に籠って出て来るな!!」

戦闘意思の無い者を槍を使い部屋の中に押し込むヤニック。


すると屋敷の奥から騒ぎを聞き付けた、伯爵が雇った非正規の傭兵100人程がワラワラと出て来るが・・・


イノセント、クルーゼ、ヤニックの勇者3人が率いる精鋭部隊に勝てる訳も無く傭兵達はあっという間に討たれ、集会会場の扉を蹴り破るヤニック。


「きゃーーーー?!」

メイドの悲鳴が部屋に響き、次々と親征部隊に捕えられる反王家の貴族達。

そして・・・


「マジでいい加減にしろよテメェら・・・毎回毎回・・・」


自らファニーを狙う輩を成敗しているヤニック・・・

かなり本気でキレているので実行犯のみならず黒幕の伯爵一家も物理的に容赦無しに痛め付けている。


つまり、メッタクソにブン殴っているのだ。


普段と違うヤニック王太子の気迫にビビリ倒している反王家の貴族達。

「ちちち違うのです殿下!私は潜入調査を・・・」

とか見苦しい言い訳を始める者も居るが聞く耳持たず拘束して行く。


バギィガゴォ!!ベキ!!


「ひゃあ?!あああああ!助けて!助けてーーー!!」


「ああ!痛い痛い!肩がぁあああ!!」


絶対に逃げられ無い様に拘束された後は全ての者が肩の関節が外されて両足の骨を叩き折られるのだ。


王太子の強権を使い裁判などは全て省略している。

臣下の分際で王族に手を出すと恐ろしい事になる事をやっと理解した傲慢極まる反王家の貴族達と伯爵一家だが、時は既に遅い。


「でででで殿下ぁ・・・お許しを、お許しを・・・」

床に座り込んで抱きしめ合いガクガクと震える、顔がボッコボコの伯爵とその子息。


伯爵は金銭目的だったが、この子息に関しては学生時代に後輩のファニーに横恋慕をしておりファニーに告白したがアッサリ振られた事があった。


この事でファニーを恨んでおり、今回の親の暴挙に便乗して人質になる予定だったファニーを自分の手で舐るつもりだったらしい。


これはヤニックが怒り狂うのも無理は無い。

王太子の婚約者に言い寄る事自体が王家を完全に舐め切っているし、女性の身体目的なのもヤニックの怒りを倍増させたのだ。


つーか、マジでアホなのか?コイツ。


「よおヤニックよぉ・・・完全に勝負もついたし、お前これから王都に帰って気分展開も兼ねてファニー嬢と遊んで来いよ」


あー・・・そろそろ殴り殺しそうだなぁ、と思いイノセントがそんな提案をして来た。


イノセントは別に伯爵を庇ってる訳では無い、反王家派の情報が欲しいだけだ。

死ぬと情報得られないと思っているだけで、情報を得たら容赦無く処刑をするつもりなのだ。


「え?!良いんですか?!」パァと、鬼の形相から表情が明るくなるヤニック。


「お・・・おう、後は俺とクルーゼの兄貴とやっておくからよ」


「ありがとうございます!!」喜び勇んで伯爵邸からダッシュで走り去るヤニック。

イノセント的には甘い所が有るヤニックが居るとやり辛いので追い払っただけだ。


反王家派の真の地獄はここから始まる。


「能天気なヤツだな全く・・・・・・・・んで?伯爵殿・・・」

走り去るヤニックの背中を見送りクルッと伯爵の方へ向き直るイノセント。


「ひっ?!ひいいいいいい?!?!」

「ひゃあ?ああああ・・・」

先程のヤニックとは比べモノにならない殺気を伯爵にぶつけるイノセント。

自分達に本気の殺気を放つイノセントの顔は伯爵親子には悪鬼羅刹にしか見えない。


「一応、王太子殿下の意向で現時点で命までは取ってませんでしたが・・・

今回の反王家集会の人数を見て国としての方針も変わりましてね、

本腰を入れてゴルド王国派の掃討を行うつもりです。

・・・・・・・・・・・だから拷問の末に肉塊になる前に仲間の事を全部吐け」


「あ・・・あう、ああ・・・あ」

甘い所があるヤニックは実際の殺しに関してかなりの忌避感があるので、今回もまだ死者は少ない。


ヤニックは戦場以外では必要最低限の殺生しかしないが、根っからの戦人のイノセントやクルーゼは全然違う。


自分や仲間が殺られる前にどんな小さな敵でも躊躇無く殺して蹂躙するのだ。

味方の命は自分の命より重く、敵の命など塵よりも軽い。


「伯爵は俺らの敵か?味方か?」

ズドン!!鈍い音を立てイノセントの裏拳が伯爵子息の心臓を撃ち抜く・・・

叫び声を上げる事も出来ずに即死する子息。


「うひぃいいい?!?!」いきなりの息子の処刑に慄く伯爵。


準王族のファニーの誘拐、婦女暴行未遂など裁判無しで死刑が確定している。

なので遠慮なく伯爵の口を割らせる為に目の前で息子を殺めたのだ。


結構アッサリと命を救われ免罪された前回の侯爵と何が違うか?

それは侯爵は国の為に完全な政治的な理由で動いていたからだ。


陰が薄く頼り無いと見えた次代の王ヤニックでは、これからの国を守れないと憂いての事であったのだ。


この点に置いて王家にもかなりの責任が有ったし、普段のヤニックの立ち回りの悪さも原因だ。


誤解が解け国の為に働けば有能な人物と思われたらこそ秘密裏に助命された。


しかしこの伯爵家の親子は全然違う。


金に女、行動理念が私利私欲でしか無い上に能力も低い、挙げ句の果てに反骨の相ありでは、使い道が無い。


この使い物にならない害悪でしか無い貴族達を今後一気に掃討するのが国の目標になったのだ。


その後、尋問機関からの壮絶な拷問を受けて口を割った伯爵の証言からゴルド王国に加担した貴族家の一斉摘発と取り潰しが行われた。


当主の死刑23名、その一門で犯罪奴隷落ち後に強制労働に処された者384名、僻地への追放の後に謹慎、降爵18名、爵位の剥奪処分者4名、処分を受けた家門の婦女子の修道院送り422名、そしてその過程で討たれた者は2415名。


内乱と言っても過言で無い一斉摘発で今回取り潰しになって消えた家門は93家。

実に一気に3分の1の貴族家が消滅したのだ。


末期癌を患い魔法でギリギリ命を繋いでいる現国王の最後の大仕事になり、罪人達とは言えその苛烈な仕置きに王国の中立派の貴族達は震え上がった。


やる時はやる男のヤニック王太子は父王の先兵となり武力で罪人を捕らえて行った。


その圧倒的な強さから「頼り無い王太子」から「武力馬鹿な王太子」に人々の認識がランクアップしたのだった。


その掃討戦のおかげで学園では出席日数が足りずヤニックは留年した。

それはそれ、これはこれなのだ!ヤニックこそ王立学園を甘く見ては行けないのだ!


「勘弁して下さいよぉ!学園長ぉおおお!!仕事だったんですよぉおお?!」

さすがに酷い!と、半べそのヤニックが学園長に猛抗議をすると、


「ほっほっほ、ご活躍見事で御座いましたなヤニック坊。

しかし学園とは「学問」をする所でしてな、まだ学問を終えて無い者を進級させる訳にはいきませんな、来期こそ頑張りなされ、ほっほっほ」


「ううう・・・」

父どころか、ヤニックの祖父である先代国王の師匠でもあった大賢者の仙人学園長の正論に勝てる者などいない・・・


「殿下!ドンマイ!ですわ!」

さすがにヤニックが可哀想に思ったファニーが珍しく散々にヤニックを甘やかして慰めたのだった。


ファニーのヨシヨシで、ようやく一気に気分が向上して元気なるヤニック。

ファニー本人は否定しているが、側から見てるとオシドリ夫婦である。


「やっぱ、アイツの嫁になれるのファニーの嬢ちゃんしかいねえな」


普通、相手が反逆者達とは言え、人を斬りまくった婚約者には何らかの負の感情を抱くモノだろうがファニーは全然気にした様子は無い。

むしろ武人としての手柄を得られる掃討戦に自分が参加出来なくて不貞腐れているのだ。


粛清の嵐で貴族の生徒の数が一気に減った学園だが、ようやく平穏が訪れたのだった。

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