戦乙女の英雄 その16
ケンタウロスのケンタ君と勇者ヤニックが激突する!
「spiral charge!!」ヤニックの先制攻撃!!
ほう!勇者クルーゼの技か!しかし所詮は人の技をラーニングしただけの猿真似技じゃ!
ギイィイインン!!!
「受け止めた?!?!」
ヤニックの槍での突きを簡単に受け止めるケンタ君!!
ははははは!!残念だったな!charge系の技は全てケンタ君にインプット済みなのじゃ!
当然捌き技も習得しておるのだ!
つーかお主、何故魔法を使わん?
全然練度不足じゃ、話しにならん!
魔導士ならば魔法で勝負して来れば良かろうに。
何せ儂は、その技の開発者の勇者ガストンを間近で見て来たからのう!
もしや儂の方がcharge系の技に関しては勇者クルーゼより上手いかも知れぬぞ?
行け!ケンタ君!お返しの「後ろ馬蹴り」じゃ!
ドゴン!!「ぐううう?!」ケンタ君の蹴りを喰らい10mほどぶっ飛ぶヤニック。
咄嗟に防御はしたが効いたであろう?
ははははは!ヤニックよ、お主は最近慢心しておったろう?
「魔物如きに俺が負ける訳が無い」と、思っておったろう?だから魔法を温存したのだろ?
それは甘い甘い。
さあ今日は惨敗の日じゃ!なぁに生命は獲らんから安心せい。
さあさあ!ケンタ君の戦闘学習の糧になるが良い!
{tornado spear}ブォンブォンブォン!!
「うお?!」
吹っ飛んだヤニックを追撃するべくケンタ君は得物の棍をブンブンと回転させながらヤニックに突進する!
「なぜ!その技を?!?!」
兄貴分の勇者クルーゼの技をトレースしているケンタ君に驚愕するヤニック。
やっと自分が不味い場所に居ると理解したのかヤニックの顔付きが変わる!
しかし気が付くのが遅かったな!
ガキィーーーン!ゴオオオン!!パキイィイインン!!
ほれ見い!ケンタ君の竜巻薙ぎ払い攻撃でヤニックの手持ちの槍が砕ける!
何せ武器破壊の技じゃからのぅ、打ち合ったのは失当じゃ。
「ウッソだぁあああ??!!」
あーあ・・・その槍、高かったろうに・・・ご愁傷様です。ざまあ見ろです。
ドゴオオオンンン!!!
「ぐはぁ?!」ケンタ君の再度の「後ろ馬蹴り」モロに喰らいぶっ飛ぶヤニック!
ボゴオオ!!そして後ろの石壁にめり込む!
久しぶりに良いのを貰ったヤニックは目に火花が走って意識を飛ばす。
はははは!その蹴りには精神攻撃の追加効果が付与されておるからのう!
勇者ヤニック、戦闘開始5分で早々に退場じゃな。
「殿下ーーー!!」
そこに突然現れたファニーがヤニックを救う為に猛然とケンタ君に突き掛かる!
不意打ちになったがヒョイっとヒュン!と、それを難なくかわしたケンタ君!
凄いぞカッコイイぞ!
「何?!何なの?!この魔物・・・強い?!」
はい、ケンタ君は強いですよ。君では勝てません。
{ぴぴぴ、対象はファニー、攻撃対象外です、退却します}
そう言って即座に退却を開始するケンタ君、勝ち逃げヒャッハー!じゃな。
「待ちなさーーーーい!!」
優雅に逃げ出すケンタ君の背中に槍をぶん投げる怒髪天のファニー。
それを見もせずに横に飛び攻撃を華麗にかわすケンタ君は実に優雅よのう。
そしてギャロップも美しいぞケンタ君!
ぐぬぬぬぬ!するファニーを尻目に悠然と魔王領へと消えて行ったケンタ君・・・
何と可憐な姿なのじゃ・・・でも最初に思い切り転んだがな!
ちなみケンタ君の戦闘力は冒険者に例えるとヤニックより格下のSクラスだ。
技量が優れておれば格上のヤニックにも勝てちゃうのだよ!ははははは!!
ふむ・・・ケンタ君のデータも取れたし後は適当に冒険者達と魔物ゴーレムを戦わせて魔石をプレゼントして退却じゃな。
こうして少しは美味しい思いをさせてやらんと連中はっちゃけるからのう。
こうして魔王軍によるヴィアール辺境領都への奇襲攻撃は1時間程の戦闘の末に魔王軍の戦略的後退により防衛側の勝利に終わったのだった。
そして皮肉にも防御側の重傷者は王太子ヤニック1人だけだった。
最近のヤニックは負けっぱなしじゃのう。
突然湧き出た魔王軍の優雅で華麗なケンタウロスのケンタ君にボコられて意識を失ったヤニック・・・
ヴィアール辺境伯邸に運び込まれてファニーの介護を受ける。
おや?再会する目的をアッサリと果たしてしもうたな?ヤニックよ良かったな。
うむ!これぞ正しく「怪我の功名」じゃな。
眠るヤニックを見てファニーが呟く・・・
「殿下・・・弱っ!」
酷い?!ヤニックだって頑張ったのに!
ヤニックが弱かった訳じゃない!ケンタ君が強すぎただけだ!
いや・・・実はケンタ君を作った儂もケンタ君の強さに若干引いておる・・・
形状とスキルをいじったのだがスッポリとハマった感じだね。
冗談で組み込んだ「後ろ馬蹴り」のネタ技、まさかの勇者を一撃だもんなぁ・・・
すまんヤニック。
でも傑作作品のケンタウロスはしっかりと量産しちゃうけどね!
ははははははは!!!人間共よ震えて眠るが良い!
さて、ヤニックが食らった「気絶」の精神攻撃の効果が消えるまで後5秒・・・
3、2、1・・・・・
「うわああああああ!!!すみません師匠!!!風呂まだ沸かしてないんですよお!
わざわざ頭から飛び込む事ないじゃないですかぁ?!」
「きゃあああああああ??!!!」
いきなり飛び起きたヤニックにめっちゃ驚くファニー。
・・・ヤニックはどんな夢を見とったんだ?
「怒ってないで早く服着て下さいよ師匠!・・・・・・・・・あれ??師匠???」
夢の内容がめっちゃ気になるのだが・・・
起き抜けで訳が分からず混乱するヤニックは周囲をキョロキョロしてファニーを見つけると・・・
「ファニー?!会いたかったよ!!ファニー!!」
「ふえええええええええ??!!!」
寝ぼけているヤニックは、とち狂ってファニーの事を思い切り抱きしめた!!
そして・・・
チュッチュッとファニーのこめかみにキスの嵐を喰らわせる。
「ふえ?!ふえええええええ??!!!」
あまりの出来事に「ふえ」としか言えないファニー。
完全に固まってしまい、ヤニックが正気に戻るまで顔中にキスをされまくったのだ。
「混乱していたとは言え大変なご無礼を!申し訳ありませんでしたぁ!!」
スージーの後ろに隠れるファニーに渾身の土下座を敢行するヤニック。
腕を組んで仁王立ちのスージーは怒っていると言うより半ば呆れている。
「しゃーーーー!!!」語彙力崩壊のファニーはスージーの後ろからヤニックを猫の子の様に威嚇している。
「はぁ・・・・・・・知っておられると思いますが娘はまだ婚姻前です。
傷物となったと言って過言はありません。
殿下はこの責任をどう取るおつもりですか?」
医者や看護師が同席している公共の場での王族としてあるまじき暴挙だ。
ヤニックの異常行動に医者や看護師もポカーンとしていた。
そんな公衆の面前でヤニックにキスをされまくったファニーは令嬢としての価値を大幅に低下させたと言える。
「しゃーーーー!!!」ファニー的には単に驚いて威嚇しているだけなのだが。
「はい!ファニー嬢は私の妻として王族へ迎えたく存じます!」
「しゃーーーー!!・・・しゃ?・・・・しゃしゃぁーーーーー???!!!」
すまん!ファニーが何と言ったか、これは儂でも解読不能だ。
「ファニー?そう言う訳です。覚悟を決めなさい。
ファニーは王太子妃としてヤニック殿下へ嫁がせます。
ファニー良いですね?これは決定事項ですよ?異論は認めません」
まぁそりゃそうだわな。
傷物令嬢として年寄り貴族の後家とか、訳あり変人貴族に嫁がせるくらいなら王太子妃として嫁がせた方がファニーの評判に付く傷は少ない、元々婚約者候補だったしね。
こうしてファニーはヤニックの元へ嫁ぐ事が決定してしまった。
「しゃーーーーーー???!!!」
おめでとう、ファニー王太子妃殿下。・・・だからいい加減に人間に戻っておいで。
とは言え、貴族院からの承認等々、貴族の結婚には色々な手続きがあるのでファニーは婚約者候補から婚約者となったと王家から正式に公表された。
・・・・・・・・・・・・・・あれ?儂って恋のキューピッドじゃん?
単に生意気な若造にムカついただけなんだけどなぁ?