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ユグドラシル編 2話 「地下都市と謁見」

魔族潜入が判明してから地龍達の動きは早かった。


ブスーと不満顔で不貞寝するシーナをエレンがサラリと攫い3日後には地下都市の最深部の宮殿にある部屋に二人はいた、明日は地龍王クライルスハイムとの謁見だ。


シーナは地龍王クラスハイムが自分の親だと知ってはいるが自分の本当の親はファニーだけと思ってる、だから余り乗り気では無い、ピアツェンツェア国王も含めてガン無視されてる男親は泣いていいと思う。


「「まだ拗ねてるの?」」と白龍姿のエレンはシーナの頭を優しく両手で挟んでスリスリする。


エレンは本国なので白龍の姿だ、地龍では珍しく白龍で身長は10m程の小柄な体型だが美しい龍だ。

シーナはエレンの龍化した姿が大好きでシーナが拗ねるとエレンは龍化して慰めている。

今日も効果は絶大だ、シーナは拗ねながらエレンの方をソワソワして見ている抱っこして欲しいのだ。


「こっちだと友達エレンしかいないもん」


「「市街の見学に行く?」」ヒョイとエレンはシーナを抱っこする。


「んー、行く」とシーナもエレンに首に抱きつく、実に子供らしい姿だ。


ここで拗ねて居ても仕方ないとシーナとエレンは市街の見学に行く事にした。


地龍達の住処の地下都市、地龍達は本国と呼ぶので名前らしい名前は無い、仮に「龍都」としておこう。

元はユグドラシルの根元に地龍王クライルスハイムが自分の寝ぐらを作ったのが始まりらしい。


その内に他の地龍達が寄って来たので「住みたければ地龍らしく自分で作れ」との地龍王クライルスハイム様の仰せで集まった地龍が各自が勝手に棲家を作り始めそれが5000年経過して今の巨大な都市を形成してしまったのだ。


約75000人の地龍が住む地龍最大の都市だ、人間や他の種族はいない、理由は単純で食品関係がほぼ無いので生活が出来ないからだ、ここに訪れる他の種族は食料持参が鉄則なので中々長居が出来ない。


建物は個々が勝手に作っているので本当に色々と様々な形状をしている、

造形に関して凝り性の地龍が作るので人間から見ると巨大な宮殿の集合体に見えるだろうな。


何でも自分で作ってしまい、食事もしない地龍の都なので「店」と言う物は無い

当然通貨も存在しないが金銀宝石収集は龍種の本能らしく各家には凄まじい資産がある、たまにそれを狙って来る無謀な者もいるが結果はお察しだ。


「「ふわー」」「おー」

シーナとエレンはそんな市街を歩きながら間抜けな声を上げる、まともに全てを見学すると一週間はかかるので飽きのこない都市ではあるな。


意外に楽しい見学で多少機嫌が治ったシーナは「明日お父さんとの謁見って何すれば良いの?」とエレンに聞いて来た。


「「特に何も私達には人間の様な儀礼とかは無いからね、初めましてって挨拶すれば良いよ」」とエレンはシーナの頭を撫でる。


「んー分かった」とエレンにぎゅっと抱きつくシーナ、不安からなのかシーナはエレンにくっついて離れない、困った笑顔でシーナの髪を撫で続けるエレン


少し地龍王クライルスハイムとの謁見に前向きになったシーナにホッとするエレン、儀礼は無いと言ったが多少は地龍達にも多少はある、まぁ常識的に失礼な事をしなければ良いだけだ。


「あたしは詳しくないけど魔族って天龍と戦ってるんだよね?なんで今になって地龍の領域にちょっかいかけて来ているの?」と憮然としてシーナが尋ねる。


「「魔族は太古から龍種全部の敵だよ、ユグドラシルから龍種のみが世界の覇権を譲られたのが不満で5000年以上戦ってるらしいよ。生まれて200年も経ってない私にはピンと来ないけど」」正確には7000年以上前から戦っているので別にユグドラシルから龍種に覇権を与えられた訳でなく龍種が己れの力で覇権を勝ち取ったのが正確だが昔の事なので大体の認識は合っている。


「魔族は龍種を支配するって本当?」


「「正確には洗脳だね、魔族は精神に関する魔法が得意だから「龍種の敵は龍種だ」って感じで刷り込んで同士討ちをさせるのね」」


「酷いね」と不安そうにエレンに抱きつく力が強くなるシーナ


魔族は攻撃力の点で龍種には及ばない、精神攻撃や人間達や亜人と結託して攻撃して来る、人間や亜人と結託と言っても精神支配して動く人形にして雑兵として利用するのだが、なので人間や亜人の国家は魔族を敵と見なして龍種の庇護を欲しがるのだ。


龍種は人間社会には余り興味は無いが面白い個人には個別で興味を示す、地琰龍ノイミュンスターが良い例だ。


もう一つ魔族の厄介な所は変装と隠蔽魔法が上手く人間社会にも深く浸透している事だ、単体で龍種とやり合える人間は少ないが軍団となると龍種でも不覚を取る、魔導榴弾砲の一斉掃射などはかなりの脅威になる。


「あたしいつまで此処に居なきゃいけないのかな?」

ピアツェンツェア王国に魔族の尖兵が入り込んでるのは城にいる天龍からの情報で明らかになっている。


協力者の選定も済んでいるのだが今回はどうも魔族は兵力も投入して本腰で来てる様なのでとりあえず泳がせて様子見の段階だ。


「おかーさんとラーナ大丈夫かな?」心配そうなシーナ


「「天龍の龍戦士が張り付いてるから大丈夫よ」」


「エレンより強い?」


「「うっ・・・正直、格が違い過ぎる向こうが強いって意味でね」」


「そんなに?」エレン最強と思っていたシーナが驚く


「「私は戦士じゃないからね」」


エレンは一般人・・・一般龍だ、一般龍ってなんだ?と言われても困るが、龍戦士は龍種の中から選抜された者が厳しい鍛練と試練を乗り越えた者だけがなれる、正確な数は分からないが龍種全体の10%ぐらいだろう。


大半の龍戦士は本国防衛に就いているが各龍王の采配で人間の国とかにも派遣される、その中で天龍と地龍が遭遇すればどうなるか?


結論から言うとどうもならない、何故か天龍と地龍は互いに争っていると人間の中では通説だが天龍と地龍が争った話しなど聞いた事が無いのだ。


おそらくは魔族の奸計だろうな、天龍も地龍も積極的に否定して回ってる訳では無く逆に利用してる反計ってやつだ。


もう一つの海龍だが彼等に関しては生活圏が違い過ぎてて良く解らない、陸と海の比率は5対5くらいなので世界の半分を支配しているのだが目撃情報が少ない、龍王や側近達は連絡を取り合ってるのであろうが。


「「そろそろ帰ろうか?」」


「んーそだね」


明日は地龍王様との謁見の日だ、無礼を働かねば良いのだが、シーナだから何しでかす予感しかしない。


そして次の日シーナは地龍王様との謁見に臨んだ、とは言え人間の様な両脇に臣下が並んで王が王座に座り云々と言う訳では無く一対一で普通に会うだけだが。


「ふわー」とシーナが阿呆面で地龍王様を見上げて間抜けな声を上げる、だからそう言う失礼な事をするなと言う事なのだが・・・


「「良く来たなシーナ、我がお主の父のクライルスハイムだ」


「私はシーナだよ」とニコリと笑う


地龍王様にそんな普通に名乗るのはシーナくらいだ、知識の解放がされて無くてもシーナはシーナと言う事か・・・地龍王クライルスハイムは寛大なので気にする事は無いのだが。


「「うむ、息災そうで何よりだ、まず先にお主を強引に此処へ連れて来た事を詫びよう」」申し訳なさ気のクライルスハイムだった。


「おとーさんが悪い訳じゃ無いでしょ?」ニコリと笑うシーナ


「「ふふっ・・・そうか」つられて笑うクライルスハイム


娘との初対面の為か地龍王様の機嫌もとても良い様だ、滅多に笑わない地龍王様が笑っている、心なしか纏う龍気も穏やかな感じだ。


「「話しには聞いておると思うが魔族共がシーナを狙っている情報が天龍から入った、安全の為にしばらく此処に留まる事になろうな」」クライルスハイムが更に申し訳なさげに言うと、


「うん仕方ないと思うよ、でもおかーさんとラーナは守って上げて欲しい」とクライルスハイムに願うシーナだが父親のピアツェンツェア国王の事を完全に忘れている様だな、国王よ強く生きろよ。


「「それに関しては天龍がかなりの戦力を投入しておる、下手に地龍が介入すると混乱するから任せた方が良いな」」かなりどころか相当にヤバいレベルでのガチでの戦力投入だが。


「そっか解った」安心した様子のシーナ


「「時にシーナよお主は何かやりたい事はあるのか?此処に居る間は父が面倒を見ようぞ」」


おおっ!地龍王が他者に積極的に介入して来るとは本当に珍しい、シーナを本当に娘と思って接しているのが分かる。


シーナは少し考えて「ならあたしは龍戦士になりたい?」と答えた。


「「・・・・・・・・・はっ?」」

おおっ!地龍王クライルスハイムのポカン顔とは長い歴史でも初では無いだろうか?


「龍戦士になりたいから、おとーさん教えて?」シーナは胸の前で手を組みおねだりモードだ、こいつ中々あざとい!


「「せっ戦士?お主は戦士になりたいのか?」再度聞き直す地龍王クライルスハイム


「うん!みんなを守りたいから」力強く頷くシーナ


「「ふむ、その心意気は見事だ、父が立派な龍戦士にしてやろう」」感心した様子の地龍王クライルスはシーナの願いを聞き届けたのだ。


「うん!よろしくね!」いやだから不敬だっての!シーナ!


やけにアッサリと決まった様に感じるだろうが、そこは人間と龍種の考えの違いだ、人間なら「女の子がなんて事を」とか「自分の娘が危険な事なんて」とか思うのだろうが地龍には「真の自由」の掟がある己れの道は己れで決める、周囲の者はそれを助ける事はする、が但し何があっても自己責任が鉄則だ。


「「しかしいきなり我とでは加減が出来ぬ、暫しの間はエレンと共に修練を積むが良い、お主と手合わせが出来る日を楽しみにしているぞ!」と楽しそうなクライルスハイム


「うん!解った!」大きく頷くシーナ


それにしても今日初めて会った様には見えないな、いかに繋がっているとは言え意思の疎通が早すぎる、おそらく地龍王の性格とかも受け継いでウマが合うのだろうな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ピアツェンツェア王城内、宰相執務室


「そうか・・・やはり公爵が魔族への手引きを行なっているか」

苦虫を噛み砕いた様な顔の老人はピアツェンツェア王国宰相のエヴァリスト・フォン・ピアツェンツェアだ前王の王弟で長く兄王の治世を支えた英傑だ。


彼が居る限りはピアツェンツェア王国は陥落せずと恐れられていたが寄る年波には逆らえない、この10年は後継者を育てるのに忙しい。


兄王が崩御した際は自らも引くつもりだったが全臣下の連名で宰相職の継続を懇願されて70歳を越えて尚宰相の地位にある、本人は「嘘だろ?マジ引退してぇー」と思ってるのだが。


宰相の前に座るはマッテオ・フォン・アスティ、「魔法世界の解説者」を一回全削除に追い込んだ人物だ、もの凄くどうでもいい情報だが。


父の公爵を見限り公爵家を守る為に父の所業を報告しに来たのだった。


「父上!なんて事を!」

宰相の隣で憤慨しているのはマッテオの兄オスカル・フォン・アスティで宰相の補佐官をしていて次期宰相の声も高い人物だ。


「早く父を処断してグイード兄上に公爵家を継いで貰わないと公爵家は終わりです」マッテオは緊急事態の状況をオスカルに説明する。


マッテオとオスカルが話し込んでる内に「さて」と宰相は思考加速で情報分析を開始する。

「思考加速」ユグドラシルが人間のみに与えた特殊能力、何故人間のみに与えた能力かは分からないが龍種や魔族に対抗出来る強力な能力だ。

宰相は通常の50倍ほどの加速を行えるがSランク冒険者の中には100倍を超えて来る者もいるらしい、人間の切り札だ。


「魔族が国内に入り暗躍しているのが確定した、普通なら国家存亡の危機、だがシーナとラーナのおかげで天龍と地龍の助力を得られている、状況はそこまで悪くない、アスティ公爵に魔族が化けているかも?と思っていたが利用されているだけとマッテオのおかげで判明した、最優先事項は後継者のロミオの身の安全の確保、次にシーナとラーナの安全の確保、次にアスティ公爵家の保護、魔族の手がどこまで伸びているかは今の所全て判明してない、地龍王に接触して見るべき?、魔族の潜入には西の大陸のゴラン王国が絡んでる、どこの港から?、現状王都には全騎士団が駐屯してるが軍団の半分が不在、・・・・・・・・・・」


などの思考を15秒弱で終えるとマッテオとオスカルに向き合うと、

「マッテオはスカンディッチ伯爵の所へ密かに使者に赴いてくれ、内容はこちらで書面を作る、オスカルはグイードと合流して内務省で書類仕事をせよ内容は何でもいい安全確保とアリバイ作りが目的だからな。

現状は動かずに待機だもう少し敵を炙り出したい」


「スカンディッチ伯爵?ですか?なぜ?」何故に王都にもほとんど姿を見せない田舎伯爵なのかと不思議そうなオスカル。


「スカンディッチ伯は地龍と渡りが付けれるからな」


「なんですと?!!」衝撃を受けるマッテオとオスカル。


驚愕する2人の若者を見てニヤリと笑う狸宰相、そろそろこの有望な若者達にも真実を教える時期だと宰相は思う。


おいおい天龍との事も伝えるつもりではあるが混乱するから少しづつだ。


「スカンディッチ伯からの情報が来るまで下手に動くなよ?魔族の目は広いからな」


往年の狸宰相は老体に鞭打ち最後の御奉公に動き出すのであった。

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