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戦乙女の英雄 その8

「んんー?」朝起きて伸びをするファニー。

今日は武闘大会の日、いよいよヤニックとの対戦だ。


夜は・・・良く眠れた。


精神も落ち着いているし気力も問題無し。


「いけますわ!!首を洗って待っていなさい殿下!」ぴょんとベッド飛び降りて気合いを入れるファニー!!


そして!「何ですか?!はしたない!!」速攻でトリー女史に怒られた・・・


そして武道着に着替える!事は出来ずに制服を着せられて不貞腐れるファニー。

「気合いが削がれます」ブッスーと頬を膨らませてまた怒られる。

言うまでも無くファニーは辺境伯「令嬢」であって武闘家では無いので怒られて当然なのだ。


これ以上、トリー女史を怒らせると武闘大会の出場自体を禁止されかね無いので静々と令嬢歩きで学園へと向かうファニー。


武闘大会は昼から始まるので、その間な訓練場でウォーミングアップを!出来る訳が無く、今日の午前中は語学の中間試験を受けるファニー。


試験を受けながら小声でブツブツ文句を言いながら、ふとヤニックを見る。

ヤニックはちゃんと真面目に試験を受けているのでファニーも試験に集中する。


既にヤニックを中心に自分が動いている事に気が付かないファニーだった。


試験は・・・あんだけ槍術の訓練ばかりしていたのに、バッチリと手応えがあった優等生ファニー。


またヤニックを見る。


机に突っ伏している、どうやらダメだった様だ。

《なにやってますの殿下ーー!!」》ヤニックが気になってイライラするファニー。


これまでの一連の流れは、どう考えても好きな人を気にしての行動なのだがファニーはイライラするとの斜め上の解釈をするのだ。


ちなみにヤニックはファニーより2歳年上なのだが学力不足で2学年落とされているのだ、なかなか王族にも情け容赦ない学園である。


そんな感じなので学園の生徒達のヤニックの評価は「ダメな王太子」である。

その事に対してヤニックは全く気にしてない。


そりゃ、世界の最高峰の覚醒勇者寸前まで行った男だ、学園での低評価など気になる訳が無いが問題を解けなかった事は非常に悔しいのだ。


しかしファニーはヤニックの評価を聞いてイライラするのだ。

《やっぱり、わたくしは殿下の事が嫌いですわ!》


またまた、斜め上に解釈するファニー、そんな事が積み重なり自分がヤニックを好きだと理解した時に凄い反動が来る事をファニーはまだ知らない。


この当時のファニーは自分の事を孤高の英雄だと年齢相応厨二病を全開にして思っているが、実の正体はただの甘えん坊さんだと知る日はまだ少し遠い。


午後の授業を終えてダッシュで訓練場へ向おうとするが案の定、走っている姿を先生に見つかって説教を受けて30分無駄にしたファニー。


「何でこんなに過密スケジュールなのですの?!」

そうファニーは憤るがこの武闘大会は「授業」である、午後の課程の一つなのだ。


騎士課の人間ならともかく普通課の生徒で気合いを入れてるのはファニーとヤニックの二人だけである。


そして訓練場に到着してファニーは愕然とする。


訓練場にみっちりと騎士課の生徒が居て訓練をしていたのだ。

とてもで無いがファニーが訓練出来るスペースなど無い。


「ひ・・・酷い差別ですわ」

違うから、そしてこの生徒達は「授業」で訓練をしています。


さすがに邪魔をすると絶対に怒られそうなので訓練場脇の休憩用の椅子にチョコンと座るファニー。


自分で自覚をしていないが彼女は「絶世の美少女」である。

混じり気の無く艶々の長い黒髪を後ろに編み込み、大きな黒い瞳に小さな口、常に鍛えているので健康的な白い肌、小走りに走って来たので少し頬が朱色に染まっているのも愛らしい。


今のファニーは一切化粧をしていない、どうせ汗で流れるだろうと朝からずっと。

それなのに赤くプリプリしている唇が人目を引く。


すぐにドヨドヨと騎士課の生徒が騒めき出した。


「だっ・・・誰だよ?あの子」


「凄え美少女だよな・・・誰かの応援かよ?羨ましい」


「確かヴィアール辺境伯家のご令嬢だよ」


「うえ?!じゃあモロに王家のゆかりの一族じゃん!」


「凄えな・・・俺、始めてお姫様を見たよ」


ドヨドヨし始めた騎士課生徒達を見て「何ですの?」と首を傾げるファニー。

すると一気にどよめきが大きくなった。


女っ気の少ない騎士課生徒達に今のファニーのあざとい仕草は刺激が強すぎたのだ。

すると1人の騎士課の女生徒がファニーの前に立った。


「ヴィアール辺境伯家令嬢様!

男子生徒が貴女を気にして訓練に集中出来ずに危険です。

見学なら3時から出来ますのでそれまでお待ち下さい!」


彼女は「訓練の邪魔だから出て行って下さい!」とファニーに言い切ったのだ。


するとファニーは、

「騎士課の生徒ばっかり狡いです!わたくしも早く訓練をしたい!」

と涙目になって騎士課女生徒に訴えたのだった。


ウルウルと瞳を潤ませるファニーに一歩二歩と後退る女生徒。

怖気ついたのでは無くファニーが可愛すぎて思わず抱きしめそうになったからだ。


「わたくしも訓練に参加させて下さい!お姉様!」


「おおおおおおお姉様?!」

めっちゃ動揺しまくる女生徒、なんか開けてはならん扉を盛大にバッターンと全力で開けてしまいそうになり更に後退る。


そんな少し危ない百合っ気のある騎士課女生徒の名前は「フローラ」と言う。

ファニーより3歳年上で、後に王家直属の魔導兵団の副団長になり王妃となったファニーの腹心となる人物である。


この時はまだ、アンデュール伯爵家の令嬢である。


「うううう~、お姉様ぁ~」遂にポロポロ泣き出すファニー。


「あううう・・・分かりました・・・では私と一緒に隅の方で訓練しましょう」

アッサリと陥落したフローラ。

ファニーの過保護な保護者の1人としての運命を今、歩き出したのだった。


パアアアアと笑顔になるファニー、彼女も今、フローラにガッツリと懐いたのだ。

二人の腐れ縁はここから生涯続く事になる。


ファニーは一回懐いたら無意識にチョコチョコとひよこの様にくっついて回る。

《ななななな何?この可愛い生き物?》

小動物に懐かれて動揺しまくるフローラだった。


そして訓練場の隅の方で根を使い打ち合いを始めた二人だが・・・

「ストープ!!ファニー様ストップです!!」

打ち合う度にスカートが捲れて足が見えるのだ!


過保護な保護者としてこれは見過ごせない!

チラチラとファニーを見ている男子生徒を鬼も殺す形相で威嚇してファニーを更衣室に連れ込んで自分の騎士服を着せ様としてファニーのスタイルの良さに驚いたフローラ。


14歳に似合わずにファニーはボン!キュ!ボン!だったのだ!

「これはヤバい・・・」スケベな男共の魔の手から守らねば!と決意をする。


ここからフローラはファニーの侍女の様に立ち振る舞い、ファニーの素晴らしい身体のラインを見せない様な衣装を着させてケダモノからファニーを守り始める。


ここで言うケダモノとは他でもない、ヤニックの事だ。

ファニーVSヤニックからフローラVSヤニックの戦いにシフトして行くのだ。


このフローラ参戦でファニーとヤニックの恋の進展が遅れたのは言うまでも無い。


ボン!キュ!ボン!のファニーだが当然17歳のフローラの方がボン!キュ!ボン!なのでフローラの騎士服はファニーにはブカブカだ。


そのブカブカ具合も愛らしくてフローラは頭を抱えた。

「こんなのロリコン共にはストライクだわ・・・」

仕方ないので小柄な同級生に騎士服を借りた。


「普段のファニー様は衣装はどうしているのです?」


「家ではすぐ大きくなると言われて一つサイズの大きいお洋服を着させられますわ、

わたくしも動き易いので喜んで着ていますわ!」


「なるほど・・・」ファニーの実家のヴィアール辺境伯家もファニーのヤバさをしっかりと理解していて安心したフローラ。


なかなかケダモノ・・・ヤニックの前途は多難の様だ。

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