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戦乙女の英雄 その6

「そうではありません殿下」


「うぐ!すみません!リアナ先生」


リアナがヤニックに勉強を教え始めたのだがヤニックの学力がとにかくヤバかった。

正直言って中学校1年生くらいレベルだと思ってくれて良い。

ちなみにヤニックはそろそろ17歳になる。


丁度、師匠であるハイエルフのイリスに拉致された頃の年代から学力は止まっていたのだ、そりゃ戦い以外は何もしてないので仕方なし!


そしてリアナ嬢の夢は「教師になる事」で、あまりにも出来が悪いヤニックに対して恋心は薄れて消えて行き「自分が何とかせにゃならん生徒」の認識に変わりつつあった。


それを呆れ目で見ているファニー、

「この人今まで何をして来たのかしら?」と疑問に思う。


「すみません北の大陸でスペクターと黙示録戦争をやってましたぁ!」

とも言えず涙目のヤニックなのだ。


こうなると王太子ヤニック専属の侍女と侍従の責任者立場にファニーがなってしまうのだがファニーはヤニックが余り好きで無い・・・とファニーが自分を誤解してしまっているので歪は状態になる。


嫌よ嫌よも好きな内・・・では無く可愛さ余って憎さ100倍!と言う状況が作り出されてしまう。


「全く殿下はリアナ様に迷惑ばかり掛けて・・・恥ずかしいと思わないんですか?」


「すみませんファニー嬢」


こんなやり取りが頻繁に学園内で繰り広げられる事になり王太子ヤニックの存在感がドンドン薄くなる。


ヤニックは別に学園内の評価を全く気にしてないので特別何かする訳でも無いので、「頼りにならない王太子」と誤解を受ける事になる。


なのでファニーの他にヤニックの婚約者候補の令嬢達も見切りを付けてファニーが

王太子の婚約者候補筆頭になってしまう。


本来ライバルのはずの令嬢達も「戦乙女の英雄」と呼ばれ現実でも「お母さん」気質の抱擁力のあるファニーに好意も持ち、良く分からない「ファニー派」と言われた派閥が台頭して何故かヤニックの対抗派閥と認識される事になった。


「わははははははは!!ヤニック!オメー婚約者にやられまくってんじゃねえか!」

ヤニックを指差して大爆笑の王太子専属侍従のクルーゼの兄貴。


「うーん・・・まぁ、別に悔しいとか思ってないので」

苦笑いのヤニックだが本気でそう思っている。


なにせ彼には「勇者」としての誇りが第一にあるので王族としての誇りや貴族に対しての優位性などに興味は無いのだ。


「何ならファニー嬢を王太女として選出して女王にしては?と父に提案しました。

彼女にも王位継承権がありますからね」


何とビックリ!ファニーは現時点で第8位の王位継承権があったのだ。

王太子ヤニックが直接指名して国王が承認するとマジで女王になる所だったのだ。


「それでも構わんがお前は責務を放棄して本気で良いと感じているのか?」

国王にそう嗜められてグウの根も出せず論破されたヤニックだった。


「そりゃそんな事すりゃファニーの嬢ちゃんに全責任を被せる事になるからな。

勇者としても失格だな」イノセントも厳しく全否定する。


こうして「ファニーを女王にしよう」案は誰に知られる事無く消滅した。


「しかしどうするよ?やっぱり王太子に誰も従わないのは大問題だぜ?

俺からそれと無くファニーに注意しようか?」

確かにジャックの指摘する問題はかなり不味い深刻な事態だ。


「そこはヤニックの得意分野で存在感が出すしかねえな」


「得意分野?俺・・・私にそんな物ありましたっけ?」


「本気で言ってんのか?お前・・・勇者の得意な事ってなんだよ?」


「戦う事です」


「だからそれをやれば良いんだよ。

もう少しで学園内で御前武闘大会があんだろ?それでお前が優勝すれよ」


「そんな事をしたら私の力の隠匿の方針が崩れませんか?」


「そこは上手くやれよ」


「はあ・・・良いんですかね?私に勝てる人間は学園には居ませんが・・・」

ヤニックは全学生徒の正確に戦闘能力を把握して「勇者の資質」を持つ者は居ない・・・その中で自分に勝てる可能性を持つ者は居ないと判断している。


「戦乙女の英雄・・・ファニーの嬢ちゃんはどうなんだよ?」


「それ・・・分かってて言ってますよねイノセント?

どうやっても彼女が私に勝てる訳無いじゃないですか?」

魔法無しの純粋な肉弾戦でもファニーがヤニックに一対一で勝てる可能性は皆無だ。


文字通りの桁違いの実力差がある。


「それを本人に伝えて煽り散らして怒らせるんだよ」


「なるほどな・・・そんでヤニックが本気のファニーに圧勝すれば少なくてもファニーよりヤニックの方が「武力」では上って皆んなが思うよな」


「そんなの反則極まり無いと思うんですが・・・ファニー嬢が可哀想です」

ファニーを思って難色を示すヤニック。


「そこはお前がファニーを王太子妃として娶って女として幸せにしてやってくれよ」


「ええええ?!私とファニー嬢が結婚?!」

ここで何故か狼狽えるヤニック、今までとは違う反応だ。


裏表無く自分に接して来てくれるファニーにヤニックも大分絆されていたのだ。

完全に無自覚だったが異性としてもファニーを好ましく思っていた。

ジャックの指摘で初めてその感情に気がつくヤニック。


「そうか・・・私はファニー嬢が好きだったんだ・・・」


「「「それマジで言ってんのかお前?」」」

クルーゼ、イノセント、ジャックの言葉が見事に被った。

何ちゅう鈍臭い弟分なんだコイツ?と思いが繋がる兄貴分達だった。


「まぁ・・・俺に任せろよ」ニヤリと笑うジャック。






「なななな!!!何ですってえ!!」


「王太子様!酷いです!お姉様を馬鹿にして!」


激オコのファニーとエスティマブル公爵令嬢、それはジャックが・・・

「王太子が「純粋な武力ならファニー何ぞ物の数じゃねえ」」って言ってんぞ?

と告げ口をしたからだ!勿論、本人は一声もそんな事は言ってないが・・・


「へへへえええ・・・そうですかぁ・・・ふうんそうですかぁ・・・」

ジャックの狙い通り激オコのファニー、ヤニックに対して本気で対抗意識が湧いて来ている。


「それでな?お前がもし御前武闘大会で負けたら「可哀想だから王太子妃に貰ってやんよ」って言ってんだけどファニーはどうする?」


「良いでしょう!!受けて立ちます!!

わたくしが圧勝して婚約者候補破棄状を殿下の顔面に叩き付けて差し上げますわ!」

ブチ切れファニーが「ヤニックに負けたら彼の婚約者になる!」宣言をする!


こうして御前武闘大会でファニー対ヤニック戦が確定して内心上手く行ったと喜んでるジャック。


「応援しておりますわ!お姉様頑張って!」

ムン!と両手で握り拳を作るエスティマに、

「お任せ下さいまし!王太子をボッコボッコにして差し上げますわ!」

と答えたファニー!もう戻れない。


「それでヤニック殿下が言うには種目は「槍術」だ。それで良いかファニー?」

当然ヤニック本人はそんな事を言って無い。


「!!!!!!そうですかぁ・・・どこまでも、わたくしを馬鹿になさいますのね?

うふふふ・・・楽しみですわ殿下」

槍術はファニーが一番得意な得物なのだ。


どこまでもファニーを煽り散らすジャックだったのだ。







「と言う事だ」事の顛末をヤニック本人に伝えると・・・


「俺が勝てばファニー嬢は俺の物?・・・」

予想に反して欲望丸出しの反応をしたヤニック。


「あれ?」ジャックはてっきり、「何勝手に決めてんすか?!」と怒ると思っていたのだが・・・案外強欲な弟分に思わず苦笑いするのだった。






そして学園でファニーとヤニックが偶然すれ違う・・・


「おはよう御座います殿下、御前武闘大会のお話しは伺いましたわ」

ニコリと満面の笑みを浮かべる激オコのファニー。


「おはよう、ファニー嬢、約束・・・俺も聞いたよ」

いつも全然違う野獣の様な迫力のある笑みを浮かべるヤニックに一瞬怯んだファニーだが、


「それはよう御座いましたわ、もし殿下に負けたら、わたくしは殿下の婚約者になりますわ」そんな事は絶っ対!にあり得ませんけど」

負けじと不敵な笑みを浮かべハッキリ公衆の面前で改めて宣言するファニー。


「きゃああああああ♪♪♪」


「カッコイイですわファニー様!」


周囲の女生徒からファニーに対して黄色い歓声が湧き立つ。


「ふふふふふ、御前武闘大会が楽しみだねファニー嬢」

迫力満点の笑みを浮かべ颯爽と立ち去るヤニックの背中を見つめるファニー。


《なっ・・・なによお?》背中を見つめるファニーの心臓はドキドキしている。

恋する乙女のドキドキを「戦い前の武者震い」と思い込むファニー。


ファニーとヤニックが戦う御前武闘大会まで後1か月だ。

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