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戦乙女の英雄 その5

「ええ~嫌ですぅ~」ジャックの「ファニーが王太子付きの侍女になる」の通達に露骨に嫌な顔をするファニー。


「まぁ、そう言うなって。

体裁的なモンで大した意味ある人事じゃ無いんだからよ」


「むー・・・!!あっそうですわ!

なら!リアナ・フォン・ブリタニア伯爵令嬢もそれに同行するなら、そのお話しお受けしますわ!」パン!と手を叩くファニー。


「んー?そりゃどう言う事だ?」


「リアナ様はヤニック王太子殿下に好意を持っています。

今回の事はお二人の仲を縮めるのは良い機会になるかと思いまして」


「ふ~ん?ファニーはそれで良いのか?」

ジャック的には敵に塩を送る行為にしか見えないのだ。


「わたくし?ええ?勿論構わないですわ?なぜですジャック兄様?」

マジで何の事か分からなくて首を傾げるファニー。


「ヤニックの野郎が最初から全然相手にされて無くて笑う。

分かったぜ、その条件を王太子に伝えて来るぜ」

ヨシ!帰ろうかとジャックが立ちあがろうとすると・・・


「ああん!待って下さいなジャック兄様。

久しぶりに会ったのですからジャック兄様の10年間のお話しが聞きたいですわ!」


ジャックのここ10年間の行動は王都近衛騎士団を辞めてからはヴィアール一門の者にも表向きにはかなり謎が多い。


実際には全て黙示録戦争に参加する為の行動で、影からヴィアール家の上層部が全面的なバックアップをしていたのだが、その事を知る者は少ない。


ちなみにジャックの奥さんは同じ拳闘士の勇者で滅茶苦茶美人で滅茶苦茶強い女傑である。


奥さんの方がジャックに一目惚れして猛烈ラブアタックをして陥落させたのだが妊娠が発覚して黙示録戦争には不参加になった。


「騎士団を辞めてからか?

うーん、冒険者になって世界を回っていたが・・・」

そこまで話しをしてハッとするジャック、絶対に地雷を踏んだと分かったからだ。


「その世界を回ったお話し、わたくしはとても興味がありますわー」

案の定、目がキラキラ輝いているファニー、ジャックは追い込まれた!


こうして2時間、世界を回った話しをさせられたジャック。

「ジャック様もお忙しいのにいい加減になさい!」

とトリー女史の喝が入るまでファニーの質問は続いた。


「とても楽しい時間でしたわ!今度はわたくしが兄様の所へお伺いします!」


「おっ・・・おう、待ってるぜ」

大分話しのせいで疲弊させられたジャック、黙示録戦争をぼかして話すのは大変だったからだ。


こうしてようやくヤニックの部屋に帰還したジャック。

ファニーからの要望を伝えると・・・


「リアナ伯爵令嬢?・・・ああ!観光地の!」

ヤニックは少しリアナ嬢の記憶が残っていた様子だ。


ヤニックが8歳、リアナ嬢が6歳の時、ヤニックがブリタニア伯爵領へ遊びに行き、そこで令嬢のリアナと数日間遊んだのだ。


「おっ?ヤニックの数少ない友達か?なら良いじゃないか。

リアナ伯爵令嬢も参加で決まりだな」

クルーゼが名簿帳にリアナ伯爵令嬢の名前を書き込む。


「ほんと友達少なくてすみません・・・

まさか8歳の時の友達を頼らないとならないとは・・・」凹むヤニック。


「まぁ、ヤニックの友人は勇者関連とエルフ関連に絞られちまうからな」

そう言って笑うイノセント。


「戦闘には強いんだが貴族社会関連じゃポンコツ揃いだモンな、俺も含めて」


「ジャックの兄貴も伯爵令息でしょう?」


「ウチは兄貴がしっかりとしてるから良いんだよ。

しかし決まったのは令嬢二人か?色ボケ王太子って言われねぇか?」


「確かに言われそうだよね・・・」やはり「令息」も必要なのだが・・・

王太子の学生侍従は将来のヤニック王太子専属の官僚候補になる。

令嬢ばかりだとやはり色々と問題があるのだ。


「あみだ・・・」


「は、ダメですよ?クルーゼ兄貴」・・・いや・・・あみだくじで官僚を決めんな。


考えても見つかりそうも無かったので最高学年の貴族子息の成績上位陣から攻めて見たら2位、6位、7位の生徒が受けてくれた。

一応は王太子の学生侍従は箔付けにはなるからだ。


最高学年の生徒は家門を継ぐ者、既に働いている者が多く、受けてくれたのは比較的時間に余裕がある大学進学予定の生徒ばかりだ。


普通こんな時期に学生侍従選びなんてやらないので本人達も臨時だと分かっている。

「出来る限りは協力しますけど同級生か下級生から早く選んだ方が良いですよ?」


「そうですよねーーー!すみません頼りにならない王太子で」


こうして出来上がったヤニックの学生侍従、侍女の名簿を見て・・・


「なんか無理矢理感が強すぎじゃね?」


「イノセントの兄貴、そう言う事を言わないで下さいよ・・・」


「ああ・・・悪かった。

それよりヤニック、今後はその「兄貴」呼びは厳禁な。

さすがにガラが悪すぎだ、どこのマフィアだよ」


「え?じゃあ何て呼べば?」


「普通に呼び捨てで良いっての、俺らヤニックの配下なんだからな」


こんな感じに今までに無い環境の変化に少しストレスを感じるヤニック、人知れずため息をついたのだった。






「りりりリアナです!よろしくお願いします」

カーテシーを忘れて思わずペコリと頭を下げてしまうリアナ伯爵令嬢。


「ファニーです、よろしくお願いします」

尽かさずペコリと頭を下げてリアナ嬢の失敗を目立たなくするファニー。


「ああ・・・固くならないでお・・・私も緊張してしまうから。

ファニー嬢話しを受けてありがとう、リアナ嬢は久しぶりだね」


今日は侍従と侍女と王太子の初顔合わせの日だ。

初々しい二人の侍女に先に集まっていた侍従達の頬が緩む。


何せ集まったのは全員が同格の伯爵家と言う珍しい組み合わせなので肩の力が抜けているのだ。

一応ファニーのヴィアール辺境伯家が頭一つ抜けた家格だが・・・

まぁそこはヴィアール辺境伯家なんで。


しかしその中で隅の方でカチンコチンに固まっている令嬢を発見したファニー。

涙目でファニーをじーと見つめるエスティマブル公爵令嬢だ。


「まあ!エスティマ様!」これには驚くファニー。


「うえええん、ファニー姉様~」テテテとファニーに走り寄るエスティマ。

ファニーに一回抱きついてからファニーのスカートの後ろに隠れてしまった。


何でも後学の為にと国王からこの集団にぶち込まれてしまったそうな。

そりゃ7歳も歳上の集団にいきなりぶち込まれたら11歳の少女には怖かろう。

後で抗議の手紙を書こうと心に決めたファニー。


「ヤニック殿下・・・まさかイジメたりなんて・・・」


「してませんって!!」


ファニーのもの凄い覇気に少し引いたヤニックだった。


こうして今後の方針について話し合ったのだがさすが最高学年の成績上位の生徒達、

「とにかく殿下が交流を広げて正式な侍従を決めるべきですね」正確に現状を指摘してくれた。


とにかく最優先はそこだそうだ。


「殿下が生徒会に関わらないのはあり得ないので一般教養成績は10位内を確保しなければいけません」

基本生徒会メンバーは一般教養の成績上位10位内から選ばれるからだ。


「うぐ!頑張ります」相当厳しい現実を突きつけられたヤニック。

魔導研究課なら勉強出来なくても何とかなるんじゃね?との思惑は打ち砕かれたのだった。


「なら!殿下のお勉強を見るのはリアナ様に致しましょう!」

パン!と手を打ち鳴らすファニー。


「ええ?!・・・そんな・・・」恥ずかしそうに下を向くリアナ伯爵令嬢・・・

しかしこの提案が思わぬ喜劇・・・悲劇を産む事になるのだ。

主にヤニック限定の悲劇になるのだが。


そしてファニーの「ヤニックとリアナをくっ付けようぜ作戦」も破綻する事になる。

運命はヤニックとファニーが結ばれる為に加速して行くのだった。

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