それがルールだ
ヒロミ
「卑怯よ! ボールを手前に落とすなんて」
アスカと対峙するは少年リュウゾウ=ウォータ。2人の蹴鞠勝負で、リュウゾウの守護霊水色の獅子『見本市の遊戯』が、ボールをアスカの守護霊紅蓮の戦士『不動の解脱者』のはるか手前にボールを落とした。ために『不動の解脱者』は間に合わず、ボールを拾えず。
それをヒロミは「卑怯」となじった。
リュウゾウ
「『卑怯』なものかい! 『卑怯』とはルールを破ることさ。 ボクは、蹴鞠のルールに則って、ボールをお姉ちゃんの守護霊に向かって蹴ったんだ。 それを『卑怯』といわれる筋合いはないよ」
アスカは、蹴鞠をプレイした時点で、『見本市の遊戯』の呪いにあてられている。ボールを落とし、右手を失う。
アスカ
「ヒロミ、もういいわ。 要は、あと3ポイント、私がこの子から取れば良いだけでしょ?」
ヒロミ
「アスカ、大丈夫?」
アスカ
「任せて。 私には策があるわ。 今、思いついた」
リュウゾウ
「『策』だって? フフフ、こう言ってはなんだけれども、ボクの『見本市の遊戯』は、蹴鞠がとても好きなんだ。 小細工は、通用しないよ」
そう言って、リュウゾウがボールを拾い、これをアスカに向けて蹴り上げた。
ボールが、またもアスカの守護霊『不動の解脱者』の手前に落ちようとする。
ヒロミ
「また!」
アスカ
「大丈夫! そう来ることは読んでいた!」
『不動の解脱者』が右足を伸ばし、辛うじてボールを拾った。
そして、左足、右足、肩、ひざと、軽快にリフティングをする。
アスカ
「どう、うまいものでしょう?」
リュウゾウ
「うまい、うまい。 お姉ちゃん、ようやく蹴鞠の楽しさを分かってくれたのかい?」
アスカ
「いいえ。 蹴鞠なんてつまらないわ。 だから次のひと蹴りで勝負をつけるの。 それ!」
ヒロミ
「あ! アスカ、それは!」
『不動の解脱者』は、『見本市の遊戯』とは反対方向をめがけて、ボールを蹴り上げた。
ボールが、アスカのはるか後方で弾んだ。
アスカ
「こうやって、ボールを反対方向に蹴ってしまえば、あなたの守護霊はボールを拾えないわ。 これで1ポイントよ」
リュウゾウ
「……」
アスカ
「どう、参った?」
リュウゾウ
「……ダメなんだよ」
アスカ
「え? 何?」
リュウゾウ
「ダメなんだよ。 ボールを後ろに蹴っては。 ボールはきちんと、相手に向かって蹴らないと。 ボク、さっき、それがルールだって、言ったよね」
アスカ
「……」
ヒロミ
「……確かに……この子は『蹴鞠のルールに則って、ボールをお姉ちゃんの守護霊に向かって蹴ったんだ』と言っていたわ……」
アスカ
「それじゃぁ、私、3ポイント取られたことになって……」
アスカの身体は、一瞬真白い煙に包まれて、木板の人型にされてしまった。
リュウゾウが、その木片を拾う。
リュウゾウ
「フフフ。 これでボクのコレクションがまた増えた」
ヒロミ
「待ちなさい! アナタ! その人型をどうするつもり?」
リュウゾウ
「どうするって? ただ眺めるだけさ。 この人型からはね、少しずつ霊気が滲み出ていくんだよ。 その滲み出る様子をじっと眺めるのさ。 そして最後には、干物のように木片が乾燥して、このように艶々の見事な人型となる。 ボクの『見本市の遊戯』はコイツが大好きでね」
そう言って、リュウゾウは手にした壺の中から適当な木片をひとつ取り出し、『見本市の遊戯』に手渡した。守護霊がこれをバリバリと喰らう。
ヒロミ
「なんと恐ろしいこと……」




