認めさせてやる
フジワラ京――
マール=ハイストンの邸宅群、そのうちの一棟が無惨に崩壊している。
巨鬼が巨岩を投げつけて、破壊したのだ。
倒壊したのは、ハイストン家の邸宅で、書庫として用いられていたものだ。調べ物のために中にいたアスカ、ヒロミ、ゲン、そしてキョウの4人は、その直前に屋外に脱出できたので無事である。
書庫の前面が広場となっている。その広場に飛び出した4人は、遠くにいる巨鬼と目が合った。
身長50メートルを超えるであろう巨鬼が1歩足を進めるごとに、大きな地響きが轟く。
オットー
「また来たか」
トニィ
「だが、その撃退は造作もないこと」
アスカら4人が飛び出した広場には、マール=ハイストンの3兄弟の長男オットー、二男トニィがすでに居た。
オットー
「しかし、こちらに向かって来ている。 足止めが必要だな」
トニィ
「そういうことだ。 済まないが討伐隊の諸君、少し手伝ってくれないか」
トニィが言うには、彼の守護霊は遠距離攻撃型であり、強力な雷撃を放つことができるという。しかし、攻撃力が高い反面、発動に時間がかかるので、攻撃準備が整うまで敵の巨鬼を引き付けてほしいというのだ。
そういうことならば、と囮役を買って出たのはキョウであった。キョウは懐から数珠を取り出し、守護霊、唐紅の鬼神『炎の戦士』を召喚した。近距離攻撃型のパワー系守護霊だ。
アスカ
「私もいくわ」
アスカも五鈷金剛杵を振るって紅蓮の戦士『不動の解脱者』を召喚した。防御力に優れる前衛盾系の守護霊だ。
キョウ
「要らん。 ここから先は、オレ一人で十分だ」
オットー
「ほらほら、女の子には優しくするものだよ。 アスカ君は、よろしく頼むよ」
年長の立場から、一人で先行しようとしたキョウをたしなめた。敵は、これまで何人もの守護霊使いを葬ってきた巨鬼なのだ。一人で相手にできるような敵ではない、そう言ってやった。
トニィ
「そういうわけだから、君たちにも前に出てもらいたい」
トニィのそばについて防御陣形をとろうとするヒロミとゲンに指示した。
ヒロミ
「いえ、私の守護霊は回復系だから、むしろ後衛でサポート役に徹した方が良い思うのですが」
ゲン
「僕の守護霊は、中距離攻撃型です。 キョウやアスカ君のように前衛で戦うよりも、ここでトニィさんの護衛に回ったほうが力を発揮できると思います」
オットー
「ははは。 弟の心配だったら無用だよ。 ここに僕がいるからね。 いや、むしろ、兄弟の僕だからこそ、誰よりも弟を守ることができるとも言える。 むしろ君たちは、仲間の援護に回りたいのではないのかい?」
見ると、アスカとキョウが、先を争うように巨鬼に向かって駆け出している。
2人とも、猪突猛進な性格なのだ。このまま2人だけに巨鬼の相手をさせては、どのような無茶をするかも分からない。
そうだとすると、ここはオットーの言うとおり、アスカとキョウの支援にまわるというのもあって良い。
そう思い直したヒロミとゲンは、先を行くアスカとキョウの後を追いかけた。
ところが、さらにその先を走る1人の少年がいた。マール=ハイストンの三男の、アズマ=ハイストンである。
アズマ
「来たな巨鬼、今度こそ、貴様のその首、へし折ってやるぞッ!」
アズマが、大剣を握って巨鬼の前に立ちはだかる。
その大剣の柄を握る両手がブルブルと痙攣している。大敵と戦うには武器も大きい方が良いと、そう考えてアズマは武器庫から大剣を選んで持ち出したのだが、重すぎたのだ。
ゲン
「アズマ君! 無茶だッ! 守護霊使いでもない君に敵う相手ではない」
アズマ
「うるせいッ! どいつもこいつも、オレが守護霊を使えないからってバカにしやがって。 オレだって、オレだってやれるんだ。 証明してやるッ! あんな敵、怖くなんかないぞ」
そしてウォォと雄叫びをあげて、巨鬼に向かって、まっすぐ駆けていくのであった。




