第九話 紅と蒼
目を開けると、ここはまた、森?あの夢か…でも、何も聞こえない。そして、まっくらだ。目をこらすと紅い光がうっすらと見えた。よく見ると、その光は2つあった。その光がだんだん近づいた。少しずつ、近づくその光を見てるとどんどんいやな気持ちがする。その光はボクとそっくりなすがたの子の眼だった。あの夢がまただ。また、追われる。そう思って、走り出したのに、足が動かなかった。視線をおとすと、足がこおりついていた。そんなことをしている間に、紅いボクは目の前にせまって言った。
「ぼくはアンスだ。」
アンス…?アンス、アンス。そうだ、ボクの名前ってアンスだ。
「ボクもアンスだ。」
「違う、お前はアンスじゃない。」
そう言って、紅いボクはボクの首をつかんだ。つかまれた首がだんだん冷たくなっていく。紅いボクは言った。
「ボクはアンスだ。お前はいくじなし。ボクはゆうきがある。力がある。」
「違う、確かに、ボクは何もできなくて、森から逃げ出したけど、ボクがアンスなんだ!」
体が動かなくなってきた。
「お前はしれんから逃げた。蒼い眼がまどわした。そのいまわしき、蒼い眼が、蒼い眼がなぁ。」
寒い、寒い…氷が顔をおおって、きた。
「逃げたお前は、ぬくぬくと温かい料理に踊らされて、ぼーっと、しれんすら忘れていた。」
「温かい料理…関係ないだろ。確かに初めて食べた温かい味だったけど…」
初めて…あ、そうだ、ボクは王子だ。屋敷で冷たいご飯、けど、あの温もりお父さんの顔…そう、少しきおくをほっているうちに、体が冷える。氷はもうすぐで、ボクをほういするところだ。
「しゃべりすぎたか…いいさ。紅い眼の力はいだいだ。そこで、せいぜい、泣いてろ。」
そう言って、氷につつまれた、ボクをおいて紅いボクはどこかに行ってしまった。
氷にうつるボクの眼は、両眼ともに、蒼かった。