第四話 執事の直感
窓の外には大きな森がある。そこをちょうどみた瞬間、
「コンコン」
誰かがノックした。いいぞと言うと、
「失礼します。朝食をお持ちいたしました。」
執事が食事を持って入ってきた。
「あちらに置いときますね。」
続けて執事は話した。
「本日の予定ですが、午前中は特に予定はございません。ただ、午後の2時ごろに隣国、パープ国の国王が訪問なさります。そして、3時から2時間ほど会議を行った後、6時ごろからお食事の時間となります。もちろんですが、お相手側の国王も同じ席で食事なされます。」
ここまで一気に言えてしまう執事には驚きだ。にしても、パープ国の国王と食事ができるのは楽しみだ。あの人は人柄がよく話しやすい。さらにあの人は美食家で我が国の食材を愛して下さる。あの人との食事は幸せな時間なのだ。
軽く返事をするとさらに執事は続けた。
「あー、今日から新しいメイドが増えました。今日は研修ですから合わないかもしれませんが。」
メイドは最近増えていなかったから久しぶりだな。そう思っていると、執事は付け加えて言った。
「あのメイドは少し普通じゃないんですよ。」
「普通じゃないってどういうことだ?」
執事はためらいながらも答えた。
「これはわたくしの直感ですから必ずしも正しいとも限らないってことだけ、頭に入れといてください。」
「わかった。で、どう変なんだ。」
「確かにあのメイドは技術はピカイチなんです。ただ、変なのは無駄がなさすぎるってことなんです。」
無駄がないとはどういうことなのかと問うと、執事は答えた。
「あのメイドは完全な集中状態で作業するんです。あと雰囲気が完全なメイドだったり、完璧すぎるんです。」
私は納得した。完璧な人はほとんどいない。1日目で完璧な行動ができるのは当たり前ではない。確かに変に思うのも不思議ではない。
「軽く注意しておけばいいんだろう。」
「それで良いと思います。それでは。」
執事はそういうと部屋から出ていった。
もう一度、森を見ても変化はなかった。