第三話 訪問
〈第三話〉
オレンジに染まった町の中を僕は歩いている。家の前に着き、時計を見た。予定の時刻より1時間も早かった。また早く着いてしまったた。また怒られそうだ。でも、今から1時間外で待つのも良くないしと考えて中に入ることにした。「姉貴〜」と呼びながらドンドン戸を叩いた。
「ほいよ。」
部屋の中から声が聞こえた。姉貴の声だ。そして扉が開いて姉貴の声がした。
「あのなぁ!カント!いつも言ってるけどよ、私のことをいつも姉貴って呼ぶのやめてくれ!本当に恥ずかしいんだ。」
姉貴は予想通り怒っている。
「頼まれてたやつ届けにきましたよって、」ふと、部屋の中央に目をやると1人の少年が座って眠っていた。僕は思わず
「何なんですかこの子、かわいいなぁ〜。」
と声に出していた。
「この子の事で相談があるんだけど」
姉貴はすごく困ったような顔をして言った。
「じゃあ、この子には部屋で移ってもらいましょう。」
姉貴は少年を部屋に連れていった。その間に僕は机に座って考えていた。あの少年は危険だと。姉貴が席についた。そして、姉貴があの少年との出会いについて語った。
「で、何を相談したいの?」
そう聞くと姉貴は少し黙りこう続けた。
「あの子を見たらわかるだろうけど、あの子は王家の血を引いている。」
だろうな。紅の目を見れば一瞬で分かる。僕たち庶民には蒼の目しかない。蒼の目は庶民である証明になるのだ。
「そんなの一目瞭然さ。ただ、問題は蒼の目だね。」
そう僕が答えると姉貴は頭を抱えた。
「そうなんだよなぁー。紅の目だけだったら、普通に王家に戻せばいい。しかしあの子には蒼の目がある。蒼の目は庶民の証拠。だから、あの子は庶民と王家の両方の血を引いているってことになる。」
「ただ、僕たちはそんな王家とは出会った事がないってことだね。」
と僕は遮った。他の国とは違い、王子が10歳になるまで、王子は庶民に顔を出さない。なんなら、王妃だって国民は教えてもらえない。おそらく警備の為だと思うが、世界中探してもこんな国はない。僕たちにとって、紅と蒼の王子など前代未聞なのにも関わらず、本当に国王のところに返していいかわからない。さらに、姉貴は続けて言った。
「あの子、ボロボロの状態だったんだ。」
姉貴の目は蒼くうるおっていた。姉貴は涙のなの字もない人だと思っていた。僕は黙り込んでしまった。窓から眩しい光が差し込むまで僕たちは静寂の空気の中に埋もれていた。
すると、姉貴は立ち上がり重い空気から抜け出した。
「とりあえず、何も分からないから、今から、王家の所に行ってくる。」
止めれないなと思った。いつもは慎重に詰めて100%に近づけて行動するのが姉貴だ。しかし、今の姉貴は感情のままに動いている。いつもは感情に流されない姉貴が気持ちのままに動いている。なぜかは検討がつかない。
「分かったよ。僕はこの子を守っとくよ。」
そうするしかない…
「ありがとうな、カント…」
そう言って、姉貴は出ていった。