第一話 出会い
「お嬢ちゃんはまた仕事してきたのかい。」
夕飯の材料を買っていると店主に声をかけられた。
「いや、今日は仕事はなっかったです。」
「そうかい。そうだ、これおまけだよ。」
そう言って店主は袋いっぱいの野菜を手渡してきた。
「こんなにいいんですか?」と尋ねると、「今日は君に助けてもらってからちょうど、1年だからね。記念だよ。」
そう言われて気づいた。今日はこの町に来てから丁度1年なのかと。
確かあの日、暴動があって見に行ったら、死にそうなヨボヨボなおじさんが借金の取り立て屋に殴られていた。それであの時、私はその日の夕食を作って貰う代わりに助けてることにしたのだった。
「けど、あの時のあんたはカッコよかったな。短剣を使って、男2人をあっという間にに倒しちゃったんだから。本当にありがとう。助かってるよ。」
そんなこと言われると流石に照れる。一応、私の職業は詐欺師だ。とは、言っても普通に詐欺師をやっているわけではない。詐欺師を騙す詐欺師をやってるんだ。なんて言えないから探偵って看板を掲げている。
「お野菜ありがとうね、おじいさん。また明日。」
そう言って私はお店を出ていった。
黒ズボンの左ポケットが振動した。携帯がなっていたのだ。誰だろうと思って携帯をみると、カントの名前がみえた。電話にでると、元気な声が聞こえた。
「もしもし、姉貴。元気ですか。」
姉貴と呼ぶのはやめろといつも言っているのにカントはよぶのをやめない。
「元気だけど、もうそろそろそうやって呼ぶのやめて欲しいんだけど。てか、あんたが電話をかけてきたってことは調査が終わったってところか。」
カントは私にずっとついてくる情報屋だ。ただ、腕はピカイチなので、頼ってしまう。
「ああ、調べきったよ。いつ、行けば良い?」
飯作って、食べて、運動して、とやることを考えた結果答えがでた。
「じゃあ、2時間後でおねがい。」
「了解。じゃあ、2時間後で〜。」
にしても、早いな。カントは変なやつだが、いつも朝に頼んだ仕事が夕方には終わってる。それなのに、仕事内容は丁寧で文句のつけようがない。
そんなことを考えながら、路地に入った。するとそこには灰色のローブを羽織った子供がうずくまっていた。
くそ、こういう子を見捨てられないのが、自分の弱みなんだよな。そうは思っても声をかけてしまう。
「おい、大丈夫か。動けるか。」
返事がない。まさか、死んでなんかいないよな。そう思い、その子供のフードをとった。すると、その子はビクッと少し動いた。
生きてるなら容赦なく顔をみようと思い、その子の短髪の黒髪を掴み顔を持ち上げた。そして私は驚いた。
その少年は鮮やかな紅の眼と深い蒼の眼を持っていた。少年は薄っすら微笑みを浮かべて言った。
「僕って、なんなの?」
その微笑みをみていると懐かしい母の記憶が私に迫ってきた。いやな気持ちになった。
私は何を思ったのか、少年の手を掴み、路地の奥へと歩いていった。