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066.悪魔の壁(16)36

あれ?書こうとしていた内容と違うような?書き切れてない様な。

もしかしたら書き直すか、書き足すか、したいです。


5/26 20:00(変更)



 ※



「話は聞かせたもらったぁ~~」


 堂々と盗み聞き宣言するアリシアの耳を、サリサはつまんで捻り上げる。


「どの耳でそういう事言ってるのかな、この子は~~」


「い、痛い、サリ~、痛いよぉ~~」


 アリシアは涙目でサリサの腕を叩く。


「うぅ、それに、私は手遅れになる前に止めてあげたのにぃ~。サリーがしたいのはゼン君を責める事じゃないでしょ~~」


「っく……」


 サリサは思わず手を放す。確かに、熱くなり過ぎて、言い過ぎていた。


 でも、余りにも自分で何もかも背負い込もうとするゼンに、腹が立ったのは本当で、いつも頭が良く、正解を導き出せる筈の彼が、この事では的外れな事を言っている気がしたし、当てにされない自分達が情けなくもあったのだ。


「それに、私は、途中から聞いていただけだけど、二人とも間違っていると思うの~~」


「途中って?」


「私は、王様が結界に穴開けて、話し合い聞いてるの見て、便乗させてもらっただけなんだけど~~、ゼン君の悩み事が~、なんか戦ってる階層ボスが変だとかって話ぐらいからかな~?」


 となると、冒頭の秘密の話は聞いていない事になる。


 サリサが精霊王を睨むと、


「わ、わたくしは、えーとえーと、そう、悩んでる事が、とリサがその少年を問い詰めている辺りからですね」


 と言ってサリサと目線を合わさない。


(最初からまるっと聞いてたわね、ドーラってば……)


 だが、精霊王はあくまで精霊だ。人間に言いふらしたりする相手がいる訳でもなく、員数外と考えてもいい気がする。


「ドーラ、今夜聞いた事、臣下の精霊にふれまわったりしたら……」


「ひどい、親友をそんな疑いの目で見るなんて……」


 ヨヨヨと悲しむ王様は、どうにもわざとらしい。精霊は基本的に好奇心旺盛で噂好きだ。王と言えども、ドーラも例外ではないかもしれないのだ。


「親友は、秘密の会話を、結界に穴を開けて盗み聞いたりしないわ」


 まったくもって正論だった。


「だから、他に少しでももらしたら、もう親友でも何でもないから。加護も返上する」


 ガーンとショックを受けている風でもあるが、彼女はこういう人間的、修羅場的なやり取りでさえ楽しんでいる気が、サリサはする。


 なにせ、寿命すら超越する、自然界の精霊の頂点なのだ。あくまで今は見た目を人間に寄せているだけで、その精神構造は人間のそれとはまるで違う筈だ。


「ところで、今結界はどうなってるの?穴開いたまま?さっきまでの会話、テントの方まで聞こえてたりは……」


「大丈夫だよ~。穴は小さくて、近くに行かないと音、聞こえなかったし、今は、私達が入ってから塞いだんですよね~?」


「そうです。わたくしが、完璧に塞ぎましたし、今はもう何者も近づけない様にしましたから」


 何やら偉そうに、鼻高々と語るが、部外者が中に入った時点で台無しなのだが……。


(そもそも何で実体化までして盗み聞きなんて人間臭い真似してるんだか。だから、シアまでがそれに乗っかてしまったのだし……)


「それでも心配なら、ほら~~」


 精霊王ユグドラシスが華麗に手を振ると、いきなりそこは、殺風景な迷宮ダンジョンの“休憩室”ではなくなり、どこかこじんまりとした可愛い少女趣味な小部屋の中に移動していた。


「……なに、ここ?」


「リサをいずれ招待しようと思っていた、私の秘密の小部屋です☆彡」


 恐らくは、前からあったとかではなく、サリサと友人になった、一昨日の夜の後に、急造したのだろう。


「わたくしは、部外者として参加しませんから、ここでどうぞ心行くまでお話し下さいな」


 精霊王ユグドラシスが指をパチンと鳴らすと、それだけで高級そうな陶磁器のカップにお茶が、湯気を立てて3つ、部屋の中央の小さな座卓に現れる。その周りには、いかにも柔かそうなクッションが3つ置かれ、座ってみると、その部屋の床にしかれた絨毯まで異様に柔らかい。


 部屋自体、明るい暖かな色彩で統一され、小物の類いや家具までいちいち少女趣味だ。可愛いぬいぐるみまでもが置かれている。


(私やシアの部屋よりよっぽど女の子してる……)


 そこに3人はそれぞれ座るが、ゼンはかなり居心地悪そうだ。


 アリシアは、へー、わー、凄~い、と感心ばかりしている。


迷宮ダンジョンの中でも、“安全地帯”は別空間に繋げてもいい場所ですし、だからこちらに移れたのです」


 3人から少し離れた所で精霊王ユグドラシスも、絨毯に横座りしてくつろいでいる。参加しなくても横から聞いているつもりの様だ。


 という事は、ここは迷宮ダンジョン内ではなく、精霊界の何処かなのか、別空間にわざわざこの小部屋だけ作ったのか、それは聞かなければ分からない事だ。


 とりあえずサリサは、現状の変さを無視しようと決意する。これでは話が進まない。ドーラとは、また後で話せばいい。恐らく、ここと外では時間の流れが違う。睡眠時間の心配をする必要はないであろう。


「シア、話戻すわよ。ゼンも」


「……うん」


「あ、は~~い」


 手を元気よく上げるアリシアの天然具合は頭が痛くなるが、ともかく話を進めよう。


「シア、さっき、私達二人が、間違ってるとか言ったのは、何の話?」


「うんうんだから~、ゼン君は、今回の変ボスと昔の変ボスが、自分のせいかもって言ってて~、サリーは、私やサリーのがその原因かもって、あ~、さっきそれで私の事、“変”とか言ってたの、ちゃんと聞いてたんだからね~~」


 アリシアは頬を膨らませて怒ってるが、アリシアが色々な意味で変なのは、リュウでさえ認めるところだろう。変ボスとか変な単語作ってるし。


「はいはい、ごめんなさい。それで?」


 サリサが適当にいなすので、アリシアはまだ不満そうだったが、それでも自説を続ける。


「むう。サリーは、私等が原因かも、って言ってたけど、それも違うと思うの。だって、私達は、ゼン君がいない間なーんにもそんな変なボスとか会ってないんだし。


 そして、ゼン君も、色んな迷宮ダンジョンを探索した事があるみたいだけど、変な事はなかったんでしょ?」


「そう、だね。特におかしな事はなかったよ」


「なら、答えは簡単。“私達、5人が揃ってる”から、そのおかしな変ボスが出る原因、と考えるのが妥当で普通な、明快な解答じゃないのかな~~」


 それは、ゼンもサリサも確かにまるで思いつかなかった、別方向からの考え方だった。


 あえて言うなら、“変”な要素の、ゼンとサリサ、アリシアの3人が揃った事、と言い換えてもいいのかもしれないが、“5人が揃う”という単語ワードには、何か説得力のある響きが含まれている様に感じられる。


 それを、アリシアという聖性の具現、神性すら感じられる巫女的な存在が言っているのが、何かしら不思議な説得力があった。


「……そうね。あの時も“5人”いた。そして今、私達は再会して合流して、“5人”に戻った。その事に、何かしら重要な意味があるとしたら……」


 思えば、4人でパーティーを組み、フェルズに来るまで、自分達は、いつも何か欠けている気がしたいた様な、そんな感じがする。戦力的にもそうだったのだが、もっと根本的に欠けている何かを意識していた気がする。


 だからずっと増員を希望していた。でも、ぴったりと来る人材は来なかった。そう、欠けた形を埋めるような者は来なかった。


 そして、フェルズに来てゼンに出会った。


 彼は当時まだ子供で、ポーター( 荷物持ち)に過ぎなかった。それなのに、彼は単なるポーター( 荷物持ち)以上の活躍をして、しっくりと『西風旅団』に馴染んだ。


 それこそ最後の欠けた欠片(ピ-ス)が埋まったパズルの様に。


 だから、なのだろうか?少年が旅立ち、皆が空虚な思いをしていた。胸に穴の空いて様な、落ち着かない、寂しい感覚を覚えていた。


 せっかく埋まった場所にまた穴が空いてしまった様な?


 ゼンこそが、自分達が待ち望んでいた最後の欠片(ピ-ス)?


「と、名探偵アリシアちゃんは推理するのですが~、どうでしょう?」


 アリシアの脳天気な明るい声に、サリサは夢想から目覚める。


(今、何を?妙な事考えてる場合じゃない。集中しなきゃ……)


「そ、そうね。確かに、アリシアの言ってる事の方が、私が言ったのよりも説得力あるかも。ゼンも分かった?あんたがどうのと言うよりも、私達全員に等分に、今回の原因があるかもって……ゼン?」


 ゼンが、うつむいて震えている。


「なに、どうしたの?」


 サリサは、ゼンの近くまで膝立ちしてすり寄り、肩に手をかける。


「ゼン君?」


 アリシアもゼンの所まで立ち上がって歩み寄り、その隣に座る。


「え?あ、ごめん。何か、色々間違ってたね、確かに。さっきサリサに言われた事も、ほとんど合ってた感じだし、アリシアの話も俺の半端な思い込みより、よっぽどちゃんと考えられてて、論拠も合って、説得力あって、考えるしか能がない、とか思っていたのに、その考えが間違えてたんじゃ、まるで意味ないよね……」


 自分に唯一誇れる(と本人は思い込んでいる)もので間違ってしまった事がショックだった様だ。


「え、いや、意味がないとか、別にそんな事ないでしょう。こういうのは色々考えて、皆が集まってそれでそれぞれの考えを持ち寄ると、自分が思っていた答えとは違う道筋の答えが出たりする。よくある事よ」


「そうだね~~。間違えるのは悪い事じゃないし、それを他の人の考えを聞き、受け入れて修正すればいいだけの事だよ~~」


「そっか。そうだね……」


「あんたは、なまじ頭が良過ぎるから、大抵の事が自分の中で解決出来てしまうんだろうけど、それで済まない事だってあるのよ。せっかく仲間がいるんだから、もう少しこちらを頼って、相談してよ。これでも年上なんだから……」


 サリサはしみじみ呟く。色々任せきりにしてるのに、頼れも何もあったものではないかもしれないが、それでも、人には適材適所、向き不向きがある。きっと、こんな風に、ゼンが出来ない事を、自分達が埋めたりする事もあるのだろう。


「じゃあ、少なくとも、俺が今回の原因で、何か責任取る様な事には―――」


「まだそんな事言って!なる訳ないでしょう。もう。責任どうこうの前に、私達のが色々世話かけまくってるのに、どこからそんな発想が出て来るんだか!」


「うんうん。何でもゼン君が原因で起こったりしないし、起こっても、それはみんなで乗り越えればいいだけだよ~~」


「そう、かな……。ごめん。俺、みんなに迷惑かけたくないから、それで、自分が原因ならもう、またここからいなくなるしかないのかと、少し考えてしまって……」


「やめてよ。迷惑とか他人行儀に考えないの!シアも言ってるじゃない。皆で乗り越えればいいって。あんたがいなくなるとか、こっちは考えたくもないんだから」


「ゼン君の悪い癖だね、それ。サリーも言ってたけど、自分が、とか考える前に、相談しよう。私達もちゃんと考えるから~」


「うん。ごめん、じゃない、ありがとう。これからは、なるべくそうする」


 ゼンの中で色々と、本当に色々と落ち着き、安心できる結論になった。それで自分の“変”さがなくなる訳ではないが、少なくとも、今回思い悩むのは筋違いだった様だ。


「それに多分、私達は“5人揃えば無敵”だよ~。どんな困難だって、乗り越えられるんだから~~」


 またアリシアが意味深に不思議な事を言った。


 それこそ根拠のない、妄想夢想の類いの様な言葉だったが、それにさえも何か深い意味がある様に感じられるのは何なのか。


「はいはい無敵無敵。私もシアが無敵だと思ってた時もありました~」


 茶化した言葉でお茶を濁すが、これ、まさか“神託”だったりしないでしょうね、とサリサは密かに不安になる。


「ぶーぶー。本気にしてない~」


 膨れるアリシアはいつも通りだ。余り深読みしないでおこう、とサリサは思う。


「……それでは、相談事が終わった、と見てよろしいのでしょうか?」


 仲良く喧嘩するサリサとアリシアに、おもむろに精霊王ユグドラシスは話しかける。


(こう、威厳ある風にしてれば、麗しくも清廉なる王様なのに……)


「ええ、まあ一応」


「では、殿方には退場してもらっても?」


「……」


 そこでゼンは、黙って少し考え込んだ。そして―――


「すいません、ちょっとサリサと二人だけで話させてもらえませんか?」


 サリサは驚き、余り表情に出ない様にするその裏で慌てふためいていた。


 アリシアが肘でついてくるのを、手でシッシッと振り払う。


「……それは、他の人には聞かれたくない話をする、という事ですか?」


 何故か精霊王ユグドラシスの顔つきが怖い。


「出来れば。声が聞こえなくするだけでいいですから」


「では、その端の方で遮音結界を張りますから」


「感謝します、陛下」


 ゼンはサリサの手を取って立ち上がる手助けをする。


「な、何かしら……」


 そのまま手を引き移動する。


「聞こえない所で話すから」


 別に変な話をする訳でないのは分かっている。音だけ聞こえない様に、と言ったのだから。


 なのに、何故自分の動悸が激しくなるのか、サリサ自身にも分からない。


 精霊王ユグドラシスが指定した場所らしき所まで来ると、向こうの物音が聞こえなくなった。


 ゼンは、そこで手を上げ空間を撫でる様な不思議な動作をする。


「?何してるの?」


「んー。まあ、一応の用心で、ね」


 そして最後に、サリサの額に手を伸ばす。


「ななな、何を?」


「用心だってば」


 額に、二つ指を置き、何か念じる風だ。


「ん。これで聞こえない筈。“気”で結界の強化と、加護を通して聞かれたくないから、少しだけ覆う様にしたんだ」


「……あー、なるほどね」


 見ると、ドーラが凄く悔しそうな表情でレースのハンカチを噛んでいる。どうやら、本当に聞こえなくさせた、と言うか、また盗み聞きする気満々だったのか、あの王様は!


「……レースのハンカチとか、何処で手に入れてくるんだか……。いや、それよりも、盗み聞きする図々しさを、どうにかしないと……。


 そ、それで、話って何?」


「……アリシアが入って来る前に、話してた話の内容」


 ゼンはひどく真面目で真剣だ。


「あれ、かなり図星で、結構こたえた……。


 “自意識過剰”や“何でも自分一人で解決出来る”、“従魔がいるから、万能”とか、いちいちグサグサ来た……」


「え、あ、や、ごめん、私も言い過ぎたと―――」


「そんな事ない!」


 言って、ゼンはアリサの手を強く握りしめた。


(あ、手、離してなかった……)


「従魔の事なんて、自分でも、注意しよう、あれは、あの子達の力であって、決して自分の物じゃない。ちゃんとわきまえて、その上で使わせてもらってると、思っていた筈なのに、何処かでやっぱり、自分の力の様に勘違いしてる、“馬鹿な自分”は確かにいるんだ。サリサは正しい!それに気付かせてくれて……」


 ぎゅぎゅぎゅ~


「……あ、あの、その、ぜ、ゼン、君。て、手、離して。いた、くはないけど、熱いから……」


「……へ?あ、ああ、ご、ごめん、手、離してなかった!」


 ゼンは慌てて無意識に握っていた手を離すが、お互い気まずいばかりだ。


「だ、だから、その、叱ってくれて、ありがとう。俺、こっちに戻って来てから、色々嬉しい事多くて舞い上がってて、調子に乗ってたとこあって、なのに迷宮ダンジョンでは変な事あるから、無駄に悩んで落ち込んで、妙な思い込みもしたけど、お陰で助かった……


 と、それだけはちゃんと話したかったから……」


 とゼンは言ってサリサから離れようとしたが、今度はサリサがゼンの腕を取って引き留めた。


「?」


「わ、私も、言っておく事があるから。あの万能がどうのって話、私にもあったから、勝手に重ねて話したの……」


「私が王都の魔術学校に入って、あそこって、金持ちとか貴族の子供が多くて、平民は皆縮こまって勉強してたけど、私はそういうの負けたくなくて、必死で勉強して、その、多少は才能あったと思うから、色々魔術覚えて浮かれて、万能感の酔いしれてた時があっったの……」


 種々様々な呪文を習得出来て、舞い上がってしまった恥ずかしい過去。


「その時は師匠の先生に叱られて、ゼンが教えてくれたみたいに、耐性や対術用の障壁の事も教わってたのに、ここまで来る間にその事を忘れて、シアにも助言出来てなかったのに、自分ばかりが偉そうな事を言って……」


「それって昔の話でしょ。むしろそれを思い出して俺を叱ってくれたのなら、確かに今の俺には、そういう思い上がった所あったから、そんな風に自分を責めないでよ」


 涙目になっているサリサの、自分の腕掴んでいる手をポンポンと優しく叩く。


「俺は昔より少し強くなれただけで、やっぱりまだまだ未熟な子供で、“あの”剣みたいに、それを俺に知らせてくれる、叱ってくれる存在は、貴重なんだ。だから、もっと怒って叱ってくれても全然構わないから」


「……全然少しじゃないし、じゃあその、自己評価の低さも改めなさい。ゴウセルさんも、あんたのそういう所、心配してたんだから……」


「……善処します」


 視線が合って、お互い苦笑する。


 暖かな柔らかい雰囲気に、二人が包まれているその横、結界のすぐ傍で、物凄い表情の精霊王ユグドラシスと、こちらも凄くニマニマ笑いが堪えられない風のアリシアがいた。


 ゼンは、そのへだてる結界を手で払って、改めて精霊王ユグドラシスに言った。


「あ~~、話は終わりましたので陛下、自分を戻してもらえますか?」


 ゼンは礼儀正しく頭を下げるのだが、


「……では、ケダモノを抱えた少年よ。疾く去りなさい。余り、リサを悩まさぬ様に」


 その言葉は冷たく厳しい。


「了解しました……」


 一礼した、ゼンの姿がすぐにその場から消える。


 精霊王ユグドラシスは、サリサの腕にしがみつくと、グイグイ強引に引っ張って、先刻の座卓の所まで戻る。


 そして、サリサは腕の精霊王ユグドラシス―――ドーラを腕に抱き着かせたまま座らせられる。


 アリシアも戻って来て、同じ様に座るが、顔のニマニマはそのままだ。


 サリサはそれを、放っておく事にした。今何か言っても藪蛇にしかならない。


「……あー、シア、こちら、見た事あると思うけど、精霊の王様、精霊王ユグドラシス。私達、先日、その、再会して、友達になったの……」


 今更どう紹介すればいいか迷ったが、そのものずばり、言うしかないだろう。


「違います!親友になったのです。リサ、訂正してください!」


「あー、はいはい。親友になった“ドーラ”よ」


「そうなんだ~~」


 アリシアはまるで動じず明るくマイペースだ。ゼンの事の追及は、とりあえずしないでくれるらしい。


「でも、私が元祖サリーの親友のアリシアです!」


 何故か胸を張って力説している。


「むむ。私こそが、本家親友です!」


 バチバチと火花を散らし、美少女同士がにらみ合うのは、ある種、絵になるが、状況が意味不明過ぎる。


「いや、なんでそこで張り合うの。どこぞの観光地のお土産屋じゃないんだから……」


 その後しばらく、どっちが大事なの?とか、新しい親友の方が新鮮で長持ち、とか、本当に意味不明の言い合いをしばらく経た後、お互いは分かり合ってしまった。


「アーちゃん」「ユーちゃん」と呼び合い、親友同士も又親友、とか意気投合してしまったのだ。


(いや、何となく、こんな風になる予感はあったんだけどね……)


「うんまあ、喧嘩するよりも仲良くなるのはまだいいとして……」


 ドーラはサリサ腕に抱き着いたまま、全然離れない。アリシアは何故かサリサの膝の上に頭を乗せ寝転がり、「耳掃除を所望する」とか言ってる。


「なんなのよ、あんた達は!シア、どきなさい!普段だって、耳掃除なんてした事ないでしょう!意味不明に甘えるな!ドーラもいい加減離れて!親友の意味、絶対履き違えてるでしょーが!」


 サリサの嘆きが、どこぞの空間に木霊していた……。



また時間ないので後に~

サ「ところでドーラ。貴方、私に誤解させる様な事言うから、凄い勘違いしたじゃないの!」

ユ「はて?何のことでしょうか?」

ア「なになに、何の話~~?」

サ「ドーラは、ゼンの事、多くの、け、“獣”をその身に秘めているから、くれぐれも注意しなさい、とか最初に言うから……」(顔を真っ赤に染めるサリサ)

ユ「はい、言いましたが、それが?」

サ「わ、私はてっきりゼンが―――」

  言いかけて慌てて口をつぐむサリサ。

ア「それって、ゼン君が言ってた、従魔さん達の事かな?」

ユ「はい、そうです。彼がその身に宿す従魔は全員、獣系の従魔ですから」

ア「おー、そういうの、ユーちゃんは分かるんだ?」

ユ「はい。そこまで分かるのは、精霊では私一人だけですよ、アーちゃん」

  わいわい二人は仲良く意気投合している。

ア「それで、サリーは何を勘違いしたのかな~?」

ユ「何でしょうね?」(ニコニコ)

サ(シアはともかく、ドーラは分かってて言ったのかぁ!)

ア「……あー、アリシアちゃんは分かってしまいました!ピンと来たー!」

サ「来るなー!」

ア「うぷぷぷ。サリーってば、ゼン君が美人なお姉さん達の魅力に負けて、ケモダモノな本能に負けて欲〇して、一人悶々としてる、とか思ったんだ!」

サ「ち、違、そ、そんなはしたない事、思ってません!ていうか、口に出して言うなー!」

ユ「あらあらまあまあ」

サ「あんたも黙ってなさい!」

ア「でもねぇ、シアは決定的な間違いをしている~~」

サ「な、なによ、あんたでしょ、勝手な思い違いしてるのは!」

ア「だって残念ながら、サリーの貧相貧弱なスタイルでは、そういう対象にはならないのです~。なるとしたら、アリシアちゃんみたいな、おっきい胸の~~」

サ「あ~~、うるさいうるさい!人を貧しい呼ばわりするなー!フェルズに来た頃は、ほぼ同じ位だった癖に、胸にぜい肉つけて!」

ア「これはぜい肉じゃありません~~」

サ「私は均整取れてるの!スレンダーなだけ!」

ア「そう思うなら、それでもいいけど~~。でも勝手にそんな思い違いして、上から目線で、可哀想な坊や、とかゼン君を憐れんでたんじゃないの~~?」

サ「し、してないしてない!勝手な想像で言わないでよ!私は単に、男の子って大変……じゃない、ちっがーう!」

ア「わー、へー、成程ナルホド。理解あるお姉さんだね~~(笑)」

サ「あ、あんたとはもうしばらく口聞かない!ドーラも!」

ア「あ、サリーそれズルだよ~~」

ユ「私、何も言ってませんが?」(にこにこ)

サ「ズルじゃない!理解ある風な笑み浮かべるなー!」





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