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015.引退冒険者と、ゼンの変化

これで、この次がボス戦ですね。

お待ちかね?かどうかは分かりませんが、ともかくボスです。


それはそれとして、ゼンのヒロイン度がグングンあがってるのは、なんなんでしょうねぇ。スカ〇ターが壊れそうですよ。

他のヒロイン達に頑張ってもらいたいとこですが、女子力低いのしかいない上に、女性の登場人物少なっ!これは人気出ないよw(自虐




 ※



実力判定は終わった。


「君達の実力なら、万全の態勢で臨めば、初級迷宮ダンジョンロックゲート( 岩の門)のボス程度でつまずく様な恐れはほぼないと思う。


 ボス3種の内の最強の、オークキング一党がでたとしても、な。何事も絶対、という事はないが、油断せずに挑戦してくれ」


 元B級冒険者で今回の鑑定を勤めたレオは、そう締めくくる。


「後……、そうだ、あそこのボスは、条件次第で、ボス戦が続く事があるんだが……」


「え、ボス2連戦!なんでそんな事が起きるんですか?」


 リュウエンが驚いて真剣な顔で問うのだが、


「いや、報告が何件か上がっているだけで、ギルドでもよく分かってないんだ。ただ、2戦目もそう代わり映えのしない、1戦目と種族は違うようだが、な、ボスで、報告してきた冒険者パーティーは、なんらかのご褒美的な物ではないのか、と。実際ボスの戦利品ドロップが2倍になった訳だからな」


 と、軽い調子だ。


 チリとゼンの心の中で何かが動いた。それは、何かの予兆だったのだろうか。


 死を身近に感じ、そして他人の死を何度も見てきたゼンだからこそ感じた予兆。


 かすかな不安を、ゼンは胸の中で押し殺した。


「そうですか……」


 リュウエンはゼン程ではないが、ボス戦にある不確定要素が気にいらない様子だった。


「いや、不安に思う必要ないぞ。君らなら、ボス3種同時に出ても倒せると思う。それは保証しよう」


「ありがとうございます!」


 元B級冒険者のお墨付きだ。嬉しくない訳がない。


 大丈夫だろう、と心に言い聞かせたのは誰だったのか。


「あ。すみません、ちょっと個人的にお聞きしたい事があるんですが、いいですか?」


 役目を終え、ホっとしているレオにリュウエンが話しかける。


「うん?……そうだな、次の指導予約まで時間ありそうだし、調度、昼だ。食事がてらに聞こう。2階の食堂でいいだろう?」


「え!ここ、食堂あるんですか?」


「ああ。君らここ初めてじゃないだろ?最初案内されて、聞かなかったのか?」


「ええ。なんか不愛想な女の人で」


「げ、それもしかしてハルアか?」


「あ、そんな名前だったと……」


 他の3人が後ろでコクコク頷いている。


「すまん、一番のハズレクジ引いたな。そいつはギルドの専属錬金術師なんだが、基本それ程忙しい部門じゃないんだ、錬金は。大体研究。


 だから、新人の案内とかをやってもらう事もあるんだが、あいつは極度の面倒くさがりで、どうしようもないグータラなんだ。どうせ、「ここが訓練場」、とか言って使い方とかそういうマニュアル的な事さえ教えなかったんだろう?」


「その通りです。すぐそそくさと帰ってしまいました」


 苦笑いするしかない。きっと研究馬鹿とかそういう手合いなのだろう。


「ギルマスに報告案件だな。あのバカ……。ともかく行こう」


 鍛錬場の内部、円形の壁沿いに半円進んだ場所に階段があった。そこを上がり、また円形を戻る感じに進むと、意外と広い食堂があった。何人かの冒険者が休憩なのかくつろいでいる。


「ここって、1階の、玄関の箇所の上部分ですか?」


「そうそう。他に、トイレとか、あるいは売店とかも大体円形の壁部分にあるから、1周すると分かるんだが、ギルドのカウンターでパンフ貰ったほうがいいかな」


 全員物珍しげに中の様子を眺めている。


「ここは、一部テラスになっていて、まだ早いから空いてるな。あそこで食うとして、ここはあのカウンターで頼む先払い形式だ。注文して自分の席を教えれば、出来上がったら持って来てくれる。トレイに載ってるから、食い終わったらそれをカウンターまで下げるんだ」


「へえ、こういう形式、初めてです……」


「女給とかの人件費節約の為、らしい。ギルドは資金難などにはならないが、無駄に金を使っていいわけじゃないからな」


 レオに習い、カウンターで注文と料金の支払を済ませ、割符のような物を受け取る。


「これで何を注文したか分かるから、持って来た時向こうがそれを料理と引き換えに持っていく。もし注文した物が来なければ割符をカウターで見せればいい、とこんな感じだ」


 テラス席に着いた一行は、晴れた青空と、フェルズの街並みを見た事ない角度から見れて大喜びになる。特にゼンと女性陣。


 それ程待つ事なく料理が届く。まだ時間が早めだからだろう。


「それで、俺に聞きたい事ってなんだ?」


「あの、レオさん、なんで冒険者引退したんですか?その若さでB級って、もう凄い有望な冒険者だったんじゃ?」


 疑問をそのままにしておけないリュウエンだった。


「あ~~、やっぱりその話か。うん、よく聞かれるんだ。だから、そうだと思った」


「すみません」


「別に謝ることはないさ。よく聞かれるから答え慣れてるしな。


 一応言っておくと、俺は若く見えるが、もう34だ。童顔なのかな。まあそれでも、将来を期待されてた冒険者だったよ。(お前ら程じゃないんだがな)」


 心の中でそっとつぶやく。余りほめ過ぎて有頂天になり、天狗になっても困る。


 ゼンとは正反対だとか旅団メンバーは密かに思った。


「結婚してるんだよ。結婚した当初は、こいつを護る為、なら何でもできる、そう思ったものだ……で、すぐに子供が出来て、産まれた」


「おめでとうございます」


 思わず皆が言ってしまう。


「ありがとな。もう2歳になる。あいつを腕に抱いた瞬間だ。全てが怖くなったんだ……


 B級だろうとC級だろうと、魔物の討伐に危険はなくならない。それを理解して、自分からなった冒険者だ。強くなって、金の稼ぎも良くなって、何の不安もない、筈だった……


 なのに、あの小さな命を抱いた瞬間、もし、自分が死んだら、こいつはどうなるんだ、とか、未亡人になって一人で苦労して子供育てるあいつのやつれた顔とか、そういう悪い未來がやたらちらついて、俺は……戦えなくなった……」


 食事の手が止まる。軽く聞いていい話ではなかった。


「集中力の欠けた戦士なんて戦場では邪魔にしかならない。自分でも、なんとか割り切って戦いに集中しようと努力したが、駄目でな。


 最後にはリーダーから、辞めてくれ、と言われてしまった。このままだと仲間の方に危険が及びそうなぐらいに、俺の状態は不安定だったんだ……」


 ふうと一息ついてからレオは話を続ける。


「だからまあ、こうしてギルドに就職して、中位のランクの冒険者を指導したり、昇級試験の監督官をしたり、だ。


 稼ぎは比べ物にならないが、妻はむしろ、辞めてくれて良かった、と泣かれてしまった。冒険者の妻なんてのは、俺が考えている以上に不安な日々だったらしい。だから、今は俺はこの選択で良かったと、本当にそう思っているよ……」


 どう反応していいか分からなかった。慰めを言うような間柄ではない。そうですね、と軽く肯定していいような話ではないのだ。


「そんな顔するな。これは別に悲しい話じゃないぞ。心弱い者が、怪我も何もなく、円満に辞められたんだ。ハッピーエンドなんだよ。


 俺は引き際を間違えず辞められた幸福者なのさ。本気で、な。


 余り深く考えるな。俺はそろそろ行くが、君らはゆっくりしていけばいい。ここは飲み物や軽食も豊富だ。好きな物食べて、俺の言った事なんて忘れていいんだぞ」


 そう言って、自分の食べ終わった分のトレイを持つと、レオは爽やかな笑顔を浮かべて去って行った。


 旅団メンバーは、話を聞いたリュウエンが慌てて立ち上がり、ありごとうございます、と言ったが、レオは振り向く事なく、ただ片手をあげ、分かっていると合図した。


「もう、だから、人それぞれだって言ったの……」


 サリサリサはお冠だ。余り人の事情とかを詮索するのが好きではないのだ。


「まあ、そう言うなよ。お陰でここの食堂の事とか分かったんだ。それにレオさんの話は、色々考えさせられるが、あの人の言うように悪い話じゃないんだ」


 ラルクスがリーダーのフォローをし、


「そうだよ、サリー。引退した元冒険者さんは、奥さんと子供さんと一緒に、一生幸せに暮らしました、めでたしめでたし、な話だよ?」


 アリシアは優しく微笑んで、決して悪い話ではなかったのだと言い含める。


「……まあ、そうかもね」


「そうだ。それに、もし俺達の内誰かがそういう風になったとしても俺達は笑って送り出せる。


 そう。それが誰であったとしても、だ……」


 リュウエンの言葉に、全員が神妙に頷き、この話は終わりになった。



「……それじゃあ場所を変えて、改めてゼンの歓迎会をやらんか?」


 リュウエンは場所を変える事で気分を変える事を考えたのだが、他にも目的はある。それは皆同じだった。


「あ、賛成!ゼン君に聞きたい事あるし~~」


「そうだな。右に同じだ」


「私も、そうね。こちらも全然悪い話じゃなさそうだし」


 話題の的にされているゼンは、いつも通り無表情なのだが、すこしだけ不思議そうに首をかしげた。



 ※



 ゼンと旅団メンバーの皆が来たのは、彼等の宿近くの美味しいと評判の居酒屋だった。普通の食事も出すので昼から営業している。


 まだ昼を食べたばかりの時間だが、今日はゆっくり居座って歓迎会を行い、それと、ゼンへの詰問会なのであった。


 奥の大きなテーブル席に落ち着くと、まずは適当な軽食やら飲み物やらを注文し(流石にまだ酒は頼まなかった)、そして皆の視線がゼンに集まる。


「なんか、ゼン君変わったよね?」


「あ、分かるな。雰囲気が柔らかくなった、というか、うん」


「確かに。なにか、いつもピリピリしていた警戒感が解けた感じする」


「つまり、私たちに心を許してなかった、って事よね。ちょっとショック」


 サリサリサはわざと拗ね風に言ったりしている。


 皆がゼンの変化に注目しているのだ、


「……変わった様に、見える?」


 ゼンはいつも通り無表情な自分の頬を撫でて、逆に問いかける。


「見た目じゃなくて、今まで持っていた独特の……人に慣れていない野生の獣、みたいな感じがないんだよ。なんか、人に飼われて可愛がられてすっかり丸くなって、ペットの愛玩動物に成り下がった、みたいな?」


「ププ、やだラルク、それ上手い表現過ぎてツボにはまったわ」


 ローブの上からお腹を押さえつつサリサリサは、目に涙までにじませている。


「うん、そういう感じだ。俺らは闘気を使う……まあ、まだ初級レベルで、だが、使うから、他の人から感じる雰囲気とか内面の気配とかに敏感なんだよ。


 隠してるつもりかもしれんが、結構分かりやすいぞ。術者サイドも精神力を使うからな。普通の人より見えてしまうのさ」


 リュウエンも苦笑いしつつ肯定する。


 つまり、この場の全員にかなりあからさまに分かってしまうのだ。無論、心の中が見える訳ではないので、昨夜何があったか知る者はいないのだが………


「ねね、ゼン君。それって私達の勧誘のお陰……だけじゃないわよね。昨日の帰り際までは、少し嬉しそうに見えたけれど、ここまで劇的に変わっていなかったもの」


 アリシアはとても嬉しそうに微笑んでいる。ゼンの変化を一番喜んでいるのは彼女だろう。


 もしかしたら、彼女にはある程度の予想がついたのかもしれない。


「あの後、ゴウセルさんと大事な話があるって残っていたが、何の話があったんだ?俺達が聞いていい話なら聞かせて欲しいんだが?」


 リュウエンが事の核心と思われる部分にズバリ切り込む。遠回しにとか出来ない彼も不器用なのだ。


「………ゴウセルに、養子にならないかって言われて………」


 ポツリと小さな声で言うゼンの頬が、ほんのり紅く見えるのは照明のせいだったのか。


「おお、それはめでた………」


 皆がざわめき。祝福の言葉を言おうとした瞬間、それを外すのがゼンならではだった。


「断った………」


「え??」


「は??」


 一瞬にして暖まった場が凍り付く。


「だってもう、名付け親にもなってもらって、それ以上なんて………」


 なんて不器用で遠慮深く、純朴な子なのか!色々じれったくなってしまうが、今回は珍しく大丈夫だった。


「だから、その……今までもずっと世話になってて、ずっと凄く感謝してたんだけど、そういうのって、ゴウセルには、全然伝わってなかった、みたい、だから、その、ありがとう、って、ゴウセルに言えて、そうしたら、ゴウセルも喜んでくれて………」


 ゼンにしては、頑張って説明してるが、色々恥ずかしい事を言ったのを端折はしょっているのがいかにもゼンらしい。


 結局、事態は収まるべきところに収まったのだ。


 四人全員ホっと胸を撫で下ろすと同時に、自分達も世話になった恩人と、この器用さと不器用さという相反する性質を併せ持つ、奇妙な少年の想いが、行き違わなくて良かったと、安堵するのだった。


 すると、やはり少し赤い顔をしたゼンが立ち上がって、旅団メンバー一人一人を見まわして言った。


「リュウさん、ラルクさん、サリサ、アリシア。みんなも、改めて、その……ありが、とう……。


 俺みたいな、まだ、大した役に立てない、その、足を引っ張りそうな、足手纏いのチビを、冒険者に鍛えてくれるって、言ってくれて、すごく、う、嬉しかった……だから、ありがとう……。


 みんな、その…………」


 その余りにも小さな、ささやき、少しはいる他の客の喧騒で聞き逃しかねない、本当の本当に小さな声で、(みんな、大好きだよ……)と。


 みなの動きが、凍り付いた様に止まったのには気にせず、ゼンは座りなおす、


 そしてマイペースに目の前の料理をパクパクと食べ始めるのだが、その様子がいつもと違うのは、照れ隠しなのだと誰が気づくと言うのか。


 少年が必死に言ってくれた言葉が、西風旅団のメンバー、一人一人にジワジワ浸透して、その意味が実感となって伝わった途端、メンバー全員の顔に血が昇り、ゼン以上に真っ赤になってしまった。普段は言わない、だからこその真摯な想いの言葉の威力は爆発力が凄い!


(なんだ、これ!女の子に告白されたみたいに熱くなる……!やばっ……)


(なんか思い出すな、あの時俺も、年上の先生に……)


(か、勘違いなんかしてない、わかってるわ、これは、あれ、友情的な『大好き』なのよ。みんな大好きって……あれ、なんで私、ガッカリしてるの……?)


「や~~ん、とっても嬉しい!ゼン君、お姉さんも、大好きだからね!」


 素直な思いを言葉に出来るアリシアだけ声に出して答えていた。


 それから、皆のテンションが変に上がりまくり、夕方過ぎには料理やアルコールを追加注文し、ついつい深酒コースのドンチャン騒ぎになるのだった。


 翌日、きつい二日酔いで活動出来たのは、故郷でも蟒蛇うわばみで、お酒をいくら飲んでもツブれないアリシアと、酒を飲んでいないゼンだけだった。


 迷宮ダンジョンのボス攻略は、明後日に延期となったのであった……。

リ「え、オレ全然ドキドキとかしてないからな」(汗

ラ「ゼン、女の子だったら良かったのにな。実は女の子、とかじゃないのかね……」

サ「ば、バッカじゃないのあんた達。私は、ちゃんと、冷静に、受け止めてるわ……うん、本当に……」

ア「なんかテレてるゼン君可愛かったね。やっぱり弟欲しいなぁ。あ、チーム入りするから大丈夫だ。嬉しい~~」


ゼ「え、と。これ、からも、頑張、り、マス……」




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告?ですが ゼンの他人の死を難度ものところと ゼンの歓迎会と詰問会のとこがジンになっています 作者様が切望しているとのことでしたのであげさせていただきました。大丈夫ですかね?
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