159.火星戦線(4)
少し長く……。文章量決めてなんて、器用な事出来ないw
※
白熱した光球にしか見えないヴォイドが、ゾートの『光の息吹』の様な光線を……熱線を立て続けに浴びせて来る。
次元シールドは、見た目は小盾だが、その効果範囲は大盾よりも広い。
光線や雷などは、光速で来るのでありがたい。
人型や獣型なら、その技を出す動作で、それをいつ、どこに出すのか分かるので、対応が可能だが、光球には当然、何の予備動作もなく撃って来る。避けるのはほぼ不可能だろう。
『流水』で逸らすにしろ反射するのしろ、それが来ると分かっていなければ、反射もクソもない。人は、光速に反応して動けたりはしないのだから。
だから、次元シールドがあるのは有り難かった。その効果範囲から、足や手が出ないように注意しなければ、一瞬で消滅しかねない。
「……膠着状態じゃのう。攻撃はどうするつもりじゃ?」
「う~~ん、どうしようか……」
攻撃方法は、なくはない。昔、師匠から聞いた屁理屈が、実現出来るなら……多分、ジークなら出来る筈だ。
問題は、星霊を助ける、救い出すには、どうすればいいのか……。
そう考えている今も、助けを求める声はどんどん小さく、消えかかっている。
恐らく、光球の中心付近。消化吸収されているのに、何とか抵抗しているのか……。
ヴォイドは、とにかく数撃てばどうにかなる、と思っているのか、目茶苦茶光線を、色々な場所から撃って来る。中央からであったり、端からであったりと。
余り角度をつけられるとマズイので、近づけない。外核の方まで、押されるように後退していると、突然そこから、数体の溶岩龍が首を伸ばし、無警戒だった後方から襲いかかる。
光弾を放ちながら、首を伸ばし、その顎で食い破らんと突っ込んで来る。
挟み撃ちか。力押しだけでなく、少しは考えている様だが残念、それはセインの幻術だ。
「『光の息吹』!」
幻を噛んで、手応えがない事を不思議がっている溶岩龍達を、横横合いから光線で薙ぎ払う。
本体に被せる形でない幻術だと、影がなくて見破られたりもするが、今この場所は光が乱反射して、影があるのかないのか分からない状況だったから、効果的だった。
「幻術なら、わしだって使えるぞ!」
「はいはい」
繋がっている状態の相棒の力も、こちらで使えるらしい。
高速移動で仕掛けをしてからの、大量分身!
光球を囲む、大量の機神。無駄に質感とかリアルで、本物と見紛う程の分身達は、アルティエールの凝り性の現れだ。
エネルギー量さえ上回れば、勝てると判断していた相手に勝てず、キレでもしたのか、光球は、幻がどうとか関係なしに、全方位に光線を射出した。
当たって手応えのある場所に、本体がいる、と判断したいのだろうが、そうは問屋が卸さない。
今までの穴掘り最中に、適当に収納していた岩塊に、ボンガのスキルで鏡面加工した物を、複数配置して、幻に重ね合わせている。
光線は、うまく逆向きに反射出来たりはしなかったが、複数の地点で、光線を遮った物が存在するのだ。本体の居場所など分かりはしない。
更に無駄な攻撃を繰り返し、力を浪費する。
そしてヴォイドは、今までの苛烈な攻撃の繰り返しで、かなり力を消耗している。
収納空間から大剣を取り出し、斬りかかると、光球から、また溶岩の時と同じような、無数の龍の首が出現し、こちらの攻撃をはばむ。
(龍にばかり擬態するのは何故だろう。スライム(魔物)的な憧れがあるとか?)
恐らく、『波紋浸透』を恐れているのだろう。斬られたら、それで最後だと。
次々出現する首は、八つ。ヤマタノオロチでも気取っているのか?そんな知識はないか。
光の龍には、『光の息吹』も弾かれる。
溶岩龍では軽く倒されてしまうので、こちらの光の龍に、迎撃を集中させる事にしたようだ。
恐らく、あの溶岩の龍は、ヴォイドの分身ではなく、遠隔操作をしていたのだろう。
星の核としての能力か?
分裂すれば、力は減少する。
核を吸収し切れていない状態で、分裂はしないだろう。
八首の龍の攻撃をなんとか躱しながら、ゼンはそう判断する。
その間、この空間の温度が、急激に上がっている事に、ゼンは気づいていた。
どうやらヴォイドは、攻撃の通じない敵に、この閉じた場所での蒸し焼きにでも、戦法を切り替えたようだ。
もし、ジークに次元シールドがなければ、かなり有効な戦法だっただろう。
だからゼンは、熱攻撃が効いているフリをして、フラフラと頼りない動きになりながら、光龍達の攻撃をギリギリで躱す。
より熱量が増し、光龍達の攻撃は激しさを増す。
今の光景は、はたから見たら、太陽に剣を向ける愚かな騎士か、風車を相手に挑もうとする、ドン・キホーテのようにでも……。
繋がっているアルティエールには、これからゼンが何をしようとしているのか、伝わっている。
本当に、それが出来るのか?と、少しばかり不審に思っているのが分る。
師匠と修行していた時の、会話が思い起こされる。
『『流水』は、力の向きを変える。これは、力の本質を掴む事が出来れば、その力の性質をも、逆向きに変える事が出来るのかもしれんな』
(俺には、力の本質なんて分からない。物質の構成する分子の運動が加速するのが高温で、減速させ、止める事が絶対零度になる、とか言われても、まるで意味が解らない。
それでも、力の向きを変える、その本質は変わらない筈なんだ!)
「やるぞっ!」
光龍が周囲を囲み、襲い掛かる。温度は急激に上昇し続ける。
「『反転』!」
その時、全ての時が、止まったかに見えた。
八首の光の龍も、その本体である光球も、全てが凍り付き、停止していた。
「や、やったのじゃ!」
アルティエールが、感極まって歓声を上げた。自身も、ひどい疲労で衰弱しながら。
ゼンはまた、既視感を覚える。
確か、初めての討伐任務で行った、赤熊討伐で、こんな光景を見た事が……
(サリサ……)
「……まだ、終わりじゃない」
加減が上手くいったかどうかは分からないが、光球の中心部付近まで、凍結は及んでいない筈だった。
<ボンガ、頼む>
<はい、ゼン様!>
「『抽出』」
ボンガの金属精製のスキルで、凍ったヴォイドの中心部から、ヴォイド抜きの、中心部を抜き出す。
ジークがかざした両手に、ジークの手の平より小さな光球が現れる。
「こんなに、小さくされてしまったのかや……」
【ギリギリだったな。数分と経たず、吸収は終わっていただろう】
【うむ。見事じゃ、ゼンよ】
「……どうも」
褒められても、疲労困憊なゼンは嬉しくも何ともない。無茶な仕事をやり遂げた達成感は、徒労感に近い。
すると、光球から小さな、妖精のような少女が現れた。
燃えるような髪を持ち、光り輝く小さな少女が。
少女は、光球から飛び立つと、ジークの胸部、操縦席部分にやって来て、スルっと操縦席内部まで透過して入って来た。
(ジークの障壁は……そうか、敵意のない者には反応しないんだ……)
「……これ、何ですか?」
ゼンは、ヘルメットを外し、自分の所でニコニコしながら浮いている、光る少女を困り顔で持て余していた。
【それが、この星の星霊じゃよ。色々幼いのは仕方がない。生命の少ない星じゃからな】
「これが、星霊?」
「随分、精霊王とは感じが違うのう」
ゼンが感じた疑問は、アルティエールが代弁していた。
【アレは、人の世の、表も裏も知り尽くして、ある程度スレておるからな】
「……まあ、それはどうでもいいです。少し待ってね。今、戻せる物は戻すから」
ゼンが優しく話しかけると、少女はニコニコ無言で頷いた。
ゼンは、ヘルメットを被り直し、ジークと同調すると、改めて、凍った球の中心部まで、完全に凍らせた。
ヴォイドは、急激な温度差による破壊で、全て死に絶えている様に感じられた。
「もう一度、『反転』」
更に凍った球を、元の高温に戻す。
凍った龍も、溶けて光の球に溶けて同化した。
そして、圧縮されていた体積も、元の大きさに戻る。
ゼンはジークを端まで下がらせ、その復元を見守った。
それでもまだ、空間には空いた場所があり、それがヴォイドが消費したエネルギーの分の体積であるようだ。
敵意のある意志も、生命反応も、光球からは感じられない。
最後にゼンは、次元シールドで次元の狭間に逃がした分の力を、盾の機能を逆流させて、ある程度まで戻した。狭間に拡散したものもあるので、こちらも完全ではない。
「完全に元通り、にはならないけれど、これで……」
言いかけたゼンの顔に、妖精のような少女は凄い満面の笑顔になって抱き着く。
ヘルメットも透過してしまうようだ。
そして、ゼンの額に口付けすると、ジークの手にある、小さな光球へと戻って行った。
ゼンがその小さな光球を、元に戻った核に近づけると、スゥっと波紋を浮かべながら、星霊の光球は核の中へと戻って行った。
【星霊の加護までいただけたようじゃな】
【……どこまでたらしなのやら】
「まったくじゃ」
撃退が成功したのに、何故悪しざまに言われているのか、疲れた頭でゼンは落ち込みたくなる。
「……呑気な事言ってる場合じゃ、ないみたいです。まだ一体、地表にいる。いや、どんどん離れていく?」
ジークの強化による、ゼンの感覚の範囲外まで行きそうな、ヴォイドの反応があった。
【これは……マズイぞ。奴は、母星を目指しているようだ!】
「勝てないと見て、先に目標へ行こうとしておるのか!」
「すぐにここを出て、追わないと!」
戦いは、まだ終わりではなかった……。
セ「出番、ありました!」(凄い嬉しそう)
ゾ「良かったな」(変わらず上機嫌)
ボ「うんうん」(いつでもニコニコ)
ガ「影なき場所に、出番なし」(少し悲し気)
ル「ぶ~~~。なんで、るーは、ひのとりとかじゃ、ないんだお?そしたら、でばんあったかもしれないのに~~!」(地団太踏んでる)
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