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156.火星戦線(1)

と言う訳で、本編です。

少し、短いです、火星の戦い、始まり~



 ※



 ゼンは、火星上空から、ヴォイド()の大体の着陸地点を目指して降下している。


 何か、不思議な既視感デジャヴュを覚える。


 前に、一回同じ事をした様な?


 何故かイラっとする。


「どうしたのじゃ、ゼン」


 ゼンの様子がおかしいのは、ジークと同様にリンク(繋がり)しているので、アルティエールには当然伝わる。


「いや、なんだろう……。直前に、悪い夢でも見たような……」


「何をおかしな事を。お主はずっと起きて、ジークを操縦していたではないか」


 まったくもってその通りだ。居眠り運転などしていない。


「うん……。多分、気のせいだ。それより、火星の大気圏に入るよ」


 火星の大気は、重力が弱いせいもあって、層が薄い。


 ゼンは、充分減速して火星への降下を続ける。


 と同時に、昨夜従魔達から言われた話を思い出す。


 従魔達からは、自分達のスキルも、ヴォイド()との戦闘に役立てて欲しい、と言われていた。


 確かに、ゼンがジークの機体で『流水』が強化された形で使える様に、従魔達のスキルも、ジークの力で強化されたものが使える理屈になる筈だ。


 それらは、確かにヴォイド()との戦闘に有効だろう。


 今までの魔物との戦闘では、修行の為や、自分の力ではないから、と遠慮して、リャンカの治癒スキル以外、余り使う機会がなかった。


 彼等を実体化させた時は、当然個々に使っていると思うが、それと中にいて、あるじに自分のスキルを使ってもらうのとでは意味合いが大きく違う。


 それに、この戦いではなりふり構わず行かなければ、全てを失う事になる、後の事など考えられない、瀬戸際の戦いなのだ。手段など選んでいる場合ではない。


 ゼンはその事を胆に命じ、アルに頼れ、と言われた事も合わせ、従魔達にも頼ろうと、考えを改め直したのだ。(……ルフは問題外だが)




「ここが、ヴォイド()の着陸した場所?」


 何もない、単なる荒地だ。


 火星の酸化鉄を多く含んだ土地は、そのせいで星全体が赤く見える程に主要な成分だ。


 火星は、荒野か砂漠が主で、緑などまるで見当たらない。海もない。川もない。


【……この様に、水の少ないこの地では、生物が生きて、進化、発展する要素が少なく、文明など、出来る以前の問題なのじゃ】


【それはそれとして、着陸の痕跡も、何もにないな。足跡など残す様な生物ではないかもしれんが……】


 あるいはあったとしても、風で全て消されてしまったのかもしれない。


 だが、漠然としたヴォイド()の気配のようなものはある。


 先の戦いで、小さな粒子まで分裂したヴォイド()の集団に囲まれた時のような、どこにいるのか、ハッキリと特定出来ないのだが、着陸した瞬間から見張られ、監視でもされている様な、ジトっと湿った感触がある。


 まさか、分裂して大気にでも溶け込んで、こちらを囲んでいる?


 だがそれに、何の意味があると言うのか。火星の薄く偏った大気からでは、大したエネルギーは得られない筈だ。


 全てを吸収して、この地を真空にしたとしても、その大気に頼っている訳ではないゼン達には影響がない。


 現地生物には大問題だろうが、ジークは小動こゆるぎもしないだろう。


 途方に暮れて、周囲を見回していると、地響きがした。


 ゼンは、近くにある砂漠に目を走らせながら問う。


「ここって、砂虫サンドワームのような魔獣がいるんですか?」


【その可能性は否定せんが、あれ(・・)の様に巨大になったりはせんぞ。水も栄養も、何もかも足りんのじゃからな】


 ミーミル(知恵の神)が言っているのは、ゼンの師匠ラザンが倒した、グランド・サンドワームの事だろう。


 それ以下の敵しかいないのなら、ジークには、本当に虫程度の相手に過ぎない。


 地響きが、真下から近づいて来るのを察知した。


 ゼンが、反射的にジークを後方に飛び退らせると、地面の中から、赤黒い、細長い巨体が地面を突き破って現れた。


「なんだ?竜、なのか?いや、首が長いから、東方に生息するという龍?」


 ゼンは、更にジークを『流歩』で下がらせながら、相手の全貌を掴もうとする。


「かなりデカイのう。何故赤黒いのじゃ?あれは、溶岩かや?火炎系はわしの専売特許じゃのにのう」


 龍と見紛う物が、口を開け、赤い光弾を放った。


 ゼンはすかさず避けるが、避けた場所の地面は溶けてえぐれた状態となった。


「火がどうのって熱量じゃないみたいだよ……」


 炎の精霊王(サラマンダー)の加護があっても、あれを受けて無傷ではいられないだろう。


 ジークの耐熱障壁シールドでも、どこまでもつか分からない。


 素直に受けるつもりもないが。


(しかし、あれがヴォイド()なのか?確かに、その気配は感じるが、まだ広範囲に広がった気配も、感じるままなんだけど……)


 すると、地面のそこかしこから、まったく同じな溶岩の龍が次々と現れ、ジークに向かって光弾を一斉斉射して来た。


「地面に潜って、火山流でも吸収して来たんですかね?」


 ゼンはほとんどを躱し、当たりそうな物のみ『流水』で逸らした。


【火山は、なくはないが、どうにもそれだけとは思えんのじゃが】


 確かに、火山の一つや二つなら、ジークで丸ごと吹き飛ばせるだろう。


 そう考える間にも、溶岩の龍は刻一刻と増え続け、不気味な様相を呈して来た。


(うっとおしいな……)


 ゼンは早速、従魔のスキルを使ってみる事にした。


<ゾート、行くぞ!>


<了解だ!>


「『雷の咆哮』!」


 Uhoooooo!!


 剣狼(ソ-ド・ウルフ)の固有スキル、雷の息吹ブレスだ。吠え声と一緒に出すので、咆哮と呼ばれている。極太の雷が、四方八方に出鱈目にバラ巻かれる。ゼンも、これを攻略するのに、ひどく苦労をさせられた。


 威力がジークによって強化されているせいだろ。


 目前で向日葵畑か何かの様に、気味が悪いぐらいに生えそろっていた龍の首は、全てが壊滅状態になった。


 だが、まるで何事もなかったように、その瓦礫の下から、また次々と同じ物が生えて来る。


「まるでイタチごっこじゃのう。キリがないぞい」


<<次だ>>


「『光の息吹プレス』!」


 ジークの口部分の手前から、また物凄く太い光線が発射される。


 それは、ジークが向く向きによって目標を変え、全てを薙ぎ払う、光の聖剣の様だ。


(どちらかと言うとゴ〇ラじゃな)


 ハイエルフはこっそりと思う。


 放射状態が続き、ジークが向きを変える度に爆発が巻き起こり、もしこの場に生物が居合わせたら、阿鼻叫喚の坩堝となったのは間違いないだろう。


「……これは、怪獣大決戦か何かなのかや?」


 アルティエールは呆れ返って、それ以上の言葉が出て来ないようだ。


 ゼンも、自分の戦いの時とは規模が違い過ぎて、内心では苦笑を洩らしている。


 それでも、敵は変わらず無尽蔵としか思えない勢いで生えて来る。


「……おかしいな。まるでダメージを与えた手応えがない。こちらもそれ程消耗していないけど、それにしても妙だ」


【火山や溶岩流をただ吸収しただけ、にしては確かにおかしいのう】


【あれは、幻影や中身のないハリボテではないのか?】


「いえ、それはないです。『流水』で受けた光弾には、確かな力を感じましたから」


「ふむう。この星に、神すら知らぬ、未知の供給源があるのじゃろうか……」


【それも考えにくい。この星にある物は、限られておるからのう】


「ともかく、仕切り直して、ちょっと考えましょう。俺に、荒唐無稽な考えがあるんですが、それがあいつ等に可能なのかどうか、俺には判断のしようがないので……」


 ジークは、あの溶岩龍が生えて増えて来る度に移動していたので、もう最初の場所からかなり離れていた。


 その為、何もない荒野に見えていたがこの地だが、チラホラ岩山等の高地なども視界に入って来るようになっていた。


 ゼンは、またワサワサ生えて来る溶岩龍に向かって、一転その群れに突っ込む様子を見せた。


 後ろや左右にばかり避けられていたので、龍達の吐き出す光弾は完全に狙いを外され、爆炎だけが巻き起こった。


 ゼンは、奴等の密集した根本に出来た薄い影を狙って動いていた。


<ガエイ、頼む>


<了解です、主殿>


「『影転移』」


 龍達は、自分達の死角に入ったジークが突然消えて、どこに行ったのか理解出来ず、しばらくしつこく捜し回っていたが、結局見つからずに、地中へと戻って行った。


 そのジークは、近隣で見かけた岩山の影の中に潜んでいた。


 本来、『影転移』は、スキル保持者本人以外は出来ない筈だったが、そのスキル保持者が従魔で、ジークがその力を増強している今の状況ならどうなるか、を試した結果、ジーク毎使用出来る事が判明し、早速使用したのだった。


 もしかしたら、従魔の主である自分も、ジークなしの時でも使用出来るかもしれない、と従魔のスキルの新たな使用法を見出したゼンだった。




ゾ「フフン♪」(自慢げ)

ガ「任務だ……」(実は上機嫌)

ボ「次回以降、使ってもらえるらしいから」(いつもご機嫌)

セ「……ボクのは、戦闘向きじゃないんですよ……」(悲し気)

ル「ぶーぶー!なんで、るーにはつかってもらえう、すきるないのお?!」

ゾ「いや、その内、絶対便利で入用なスキル覚えるって」(汗

ガ「我慢肝心……」(困惑)

ボ「ルフは、大きくなったらゼン様乗せて、空飛べると思うよ」(通常)

セ「うんうん、きっとすぐだよ。それに、ミンシャやリャンカが決まったんだし、大きくなったらルフも、主様のお嫁さんに……」(あ、しまった)

ル「るー、それがあった!お嫁さん、やくそくした、ぜったいなるお!」

ゾ(馬鹿、余計な事を…)

ガ(知らぬ存ぜぬ…)

ボ「そうだね、大きくなったら、だね」(平常)

セ「あー、なんか、後で叱られそう……」

ル「~~♪♪」(凄くご機嫌)






★「続き早く!」「面白い!」「いいぞ、もっとやれ!」

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をご自由にお願いします。筆者のやる気と好感度がマシマシで上がります。(エ

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