150.機神試乗
あー、また予告詐欺っぽくw
順調にズレていきます。
それと、また何と星5を三人様に貰えてしまったようなので、明日にはまた、なろう限定の幕間書かせていただきます~。
※
「―――じゃあともかく、乗って試しに動かしてみましょうか。すぐ分かるって言ってましたけど」
試乗は大切だろう。
適合率がどうの、と言っていたが、いざ乗り込んで動きませんでした、では話にならない。
【しばし待たれよ。アルティエールの方にも、加護を授けるでのう】
いつの間にかサリサと入れ替わったヘルが、ゼンにそう言うと、軽い足取りで、ハイエルフの少女に近づく。
アルティエールは仏頂面だ。
それもその筈。ゼンがやられた様な事を、女性同士でも、される方は嫌に決まっている。
と思っていたら、ヘルはアルティエールの右頬に軽く口付けて、ノートに代わると、ノートもハイエルフの左頬に軽く口付けて、それでおしまいだ。
「なっ……何ですか、あれは!俺の時と全然違うじゃないですか?!」
ゼンはミーミルに食って掛かる。
【あ~……つまり、男性と女性の違いじゃろ。多分な】
「本当に?じゃあ、人の器で人間界に来たら、お二人はどういう風に、人に加護を授けるんですか?」
【……それは、その時次第じゃよ】
【……神には神の流儀というものがあってな……】
煮え切らない答えしかよこさない。
向こうでヘルとノートが、声だけで【役得役得★】と弾んだ声で話しているのが、本当の真実なのだろう。
「……もう女神なんて、信じません」
(中略)
【では、搭乗用のブリッジを移動させよう】
ジークの足元に、リニア移動の搭乗用のタワーブリッジがスルスルと動いて来るが、アルティエールは浮遊術でその上に、ゼンも跳躍で直接その登頂部に上がってしまう。
【そこに端の、手すりのある昇降部に乗れば、登頂部まで自動で上がるのだが、まあいいか……】
機械文明の利器に頼らないのはいい事だ。(その最終兵器に頼る癖に)
サリサは、一応、二柱の女神にある程度の事情は説明されていたが、来てすぐに身体の主導権を奪われ、加護だので、ゼンとの口論と仲直りをしていたので、周囲に並んで配置された巨人の集団や、機神のジークなどをちゃんと認識していなかった。
「うわ、何これ……。鉄の巨人?ゴーレム?あれに、二人で乗るんだ……」
今更ながらに驚き、かつて滅びた文明の遺産が並ぶ光景を、周囲をキョロキョロ見回して、感心していた。
ゼン達が来た事で、ジークが何も言わずとも、胸のハッチを開けてくれる。それは、ただの機会に自動反応ではない。やはり、自意識があるとしか思えない。
鋭角に突き出た感じのある胸部が、二人の乗る操縦席だった。
「座るところが2つありますが、これにどう乗ればいいんですか?」
【奥の、上の方をアルティエールが、手前側の少し下がった方にゼンが乗るのじゃ。そのシートに、ヘルメット……頭にかぶる物があるじゃろ?それをかぶって、手は所定の位置にある、アーム・ホールドに入れて、中の握りを軽く握るのじゃ】
ゼンとアルティエールは、言われた通りに、そのシートにあった随分と軽いヘルメットを被り、アルティエールは慣れた感じでバイザーを下ろす。ゼンもそれに倣った。
固定は、ヘルメットの端から反対の端に、自動でベルトの様なものが出て繋がり、首が苦しくない程度に締めて固定してくれた。
(こんなの手で出来るのに、機械にやらせるのが好きなんだな、この文明は)
色の濃いバイザーには、機神の今の状態、エネルギーの充填率等が、ムーザル語で表示される。一応、知識が流し込まれたゼンには、読める事は読めるが、余り意味が解るものではない。
「ゼン、表示されるものはこちらで確認するので、気にする必要はないぞ」
アルティエールがかけてくれた言葉に、ゼンは素直に頷く。
「そうするよ。流し込まれた知識だと、理解が追い付かないみたいだ」
「馴染むまで時間がかかるからのう。うむ、各機能オールグーリーン。全て正常値じゃ。ハッチを閉じるぞ。ゼン、腕をそこ、手すりにある穴にに入れて中の物を掴むのじゃ。そこと、ヘルメットの機能で、ジークに繋がるから、操縦はそれで解る」
ゼンはシートの両脇に、腕を入れる用の、機械の穴のような物を見て、恐る恐る手を入れ、中にあったグリップを握る。
ジークが、乗り手二人との繋がりを確認、ハッチを締め、前方に、乗り手が乗りやすい様に突き出ていた操縦席部分が、胸部の中ほどまで収納される。
そして―――ゼンはジークとアルティエールの補助を介して完全に同調し、ジークはゼンの身体になった。
(これは、ジークの視界か。位置が高い。足元にいるサリサが小人の様だ……)
【ゼン、まず腕を、手をゆっくりと動かしてみるのじゃ。周りには当てない様に、な。その周囲には何もないが……】
ゼンは、まだよく解っていなかったが、手の平をニギニギしてみる。ジークの手の平が、ニギニギと動く。
「これって……」
手を目の前に、自分の腕を確かめる為に上げようと意識すると、ジークの視界にジークの腕が上がって来る。
「自分に身体の様に、ジークの身体を動かせる?」
「うむ、そうじゃ。それが機動装甲兵装や機神の同調機能じゃ。習い覚える必要がない、と言われた意味が解ったじゃろ?」
アルティエールが、別に彼女の手柄でもないの得意気に言う。
「なるほど、ねぇ……」
手を軽く振り、それから握り、軽く正拳突きをしてみる。
「少しズレてる様な違和感が?」
「うむ。今、お主の感じるズレを、わしが修正しておる。もっと色々な動きの情報が欲しいのう」
【向こう正面の扉を開けた。そこが、機動装甲兵装の練習場になっておる。物を壊さぬように、そこまで歩き、移動するがよい】
テュールが、神ならではの偉そうな口ぶりで、ゼン達に告げる。
ゼンは言われたように、慎重な足取りで、居並ぶ機動装甲兵装の前を通り抜け、練習場へと移動する。
そこで歩きながら、機動装甲兵装は、機神と出力が違い過ぎて、一緒に戦えない、という意味を実感していた。
ジークにみなぎる力は、ここに並ぶ機動装甲兵装達を、腕の一振りでバラバラに破壊出来そうな程に、力の差を感じた。
機動装甲兵装の動力炉が動いていないから、だけではない様だ。例えここのいる全機体が、準備万端で、ジークに襲い掛かったとしても、問題にもならないだろう。
ゼン達冒険者が、魔竜を前にして、自分と相手との違いを認識した時と似ている。
それ程までに、機神は突出した性能があり、動力炉を魔術で強化錬成された機体出力は、化物じみた数値を叩き出すのだ。
それは、ミーミルが予想した数値の、数十倍でなく数百倍の方を示していた。
魔力量の高いアルティエールと、“気”の練度が高く、数値的にも高いゼンが、それぞれ適合値が高く、元々の性能が高い機神との総合力が、設計者が予想する数値を上回ろうとしていた。
【機体そのものが、もしかしたら耐えられない領域までいくやもしれぬ。アルティエールよ、機体の耐久値を考えながら、お主が制御調整するのじゃぞ】
「……出来るだけやってみるが、ジークはゼンの意志に引きずられる傾向にあるのう……」
「3人全員の力が大きくて、ジークがもたないのなら、俺が力を抑えるよ」
それで勝てる相手ならいいだろう。そうでない時は……。
とにもかくにも、ゼンはジークを練習場へと移動させ、各種、動きの確認を行った。
アルティエールは、ゼンの動きにジークが完全に同調して動くように、微妙で繊細な調整をこなしていった。
ゼンはジークを、歩かせ、走らせ、跳躍し、空中で前転、後転さえもしてみせる。
機動装甲兵装用の大剣を持ち、振ってみる。
最後に造られた機神には、まだ専用の装備が出来ていなかった。
機動装甲兵装用の大剣は、ジークには片手剣のようで、ある意味丁度良かった。
剣を振り、突き、薙ぎ払う。
色々な動きを試す内に、アルティエールの調整は済み、ジークはもうゼンそのもの、と言ってもいい程の動きが出来る様になっていた。
二柱の、立方体に宿る二柱に、自分に宿っている女神二柱の、合計四柱と一人で、そのさまを見学していたサリサは、その蒼い色をした巨大なゴーレムが、ゼンそっくりの軽快な動きをするのを、目を丸くして見つめていた。
「まるでゼンそのものじゃない……」
【そういう機械、兵器なんじゃよ】
【悪くない動きだ。軽快過ぎて、忍びか暗殺者のようではあるが】
見学者が好き勝手言うなか、ゼンはジークの動きを確かめながら、ジークの力を自分の物のように使える状態に、ある可能性を感じていた。
「これ、もしかして『流水』が使えるんじゃ?」
【うむ。機動装甲兵装も機神も、乗り手の技量を再現出来るようになっておる。魔術も武術も同様にな】
テュールが当然の事の様に説明する。
【“気”もしかり。『流水』が人間の使う技術である限り、それを同様に使えぬ道理はないのじゃ。試してみるがよい】
セン達が入ってきたのとは逆側の扉が開き、基本フレームに装甲を適当に張り付けた感じの、間に合わせっぽい機体が、剣と盾を持って現れた。
【機動装甲兵装の模擬戦用の無人の試験機体じゃ。基本的な動作しか出来んが、試すのには充分じゃろうて】
ゼンは、ジークを出て来た機体に近づかせる。
ある程度の距離に来た所で、向こうから剣を大上段に構え、向かって来た。
ゼンはその剣を、剣で受け、横に流す。
基本の受け流し。試験機体は、強制的に向きを変えられ、一瞬ジークの位置を見失う。
首を回し、ジークの位置を確認すると、今度は横から腹を斬るような斬撃を放つが、ゼンはそれも剣で受け、そのままその力を完全に逆向きに受け流す。試験機体は、自分の剣の力で強制的に逆方向へ押し返される。
「……今まで出来なかった、“反射”が出来る……」
ゼンは、『流水』による力の向きの操作を、自分から横に90度、つまり直角に逸らすのが限界だった。それが、ジークでは出来てしまったのだ。
【今まで出来なかった事が、出来ても不思議ではないぞ。お前は今、自分の力に、ジークとアルティエール、両方の力の補助を受け、いつもの数十倍以上の身体強化も出来ているような状態だからな】
試験機体が、接近戦は不利だとでも考えたのか、いったん離れ、肩にあったビームキャノンの低出力を撃って来た。
ゼンは、ジークの剣でそれを受け、そのまま振って、元の軌道で跳ね返した。
「なんと!ビームを跳ね返せる、じゃと……」
「撃って来る事さえ分って受けれれば、の話だけどね。魔術もこんな感じでやってる。これも、俺じゃ横に逸らすのが精一杯だったんだけど…」
二人分の補助で、自分の修行不足を補っている今の状態は、真面目なゼンとしては余り嬉しいものではない。複雑微妙だ。
(ヴォイドを殲滅する為なんだし、不満を持つのはおかしいよな……)
それに、ジークの機体を、自分の身体同様に動かせて、『流水』まで使える、という思いがけない事実は、やった事もないロボットを操縦して、不慣れな戦闘をする訳ではない、という事だ。
つまり、基本いつも通りに戦える。
使った事のない兵器関連はアルの担当らしいし、正直、これからの戦いの展望が開け、かなり安心した。
それから、一通りの動きを、試験機体相手に試して、試乗訓練は無事に終わった。
※
【二人とも、機神を乗るのあたっての不都合などは、出ていないようじゃな?】
ジークの機体から、飛び降りて降りて来たゼンと、浮遊術が飛んで降りて来たアルティエールに、ミーミルは確認を取る。
「はい、大丈夫みたいです」
「うむ。わしが操縦出来んのはあれじゃが、まあ今回はゼンに花を持たせよう」
別に、ゼンとしてはアルティエールがメインになっても構わないのだが、適合値的に、それは駄目なのだろう。
「……それじゃあ、サリサ。フェルズに戻ったら、適当にアルティエール関係で、お偉い人からの依頼を受けなくちゃならなくなった、とか誤魔化しておいて欲しい。
なるべくチャチャって終わらせて、すぐ戻って来るからさ」
サリサは敵の、今回の危機の詳細は知らされていない。可能性の並行世界の説明等も、説明してもどこまで理解出来るか、納得出来るか分からない。
案外サリサなら、簡単に解ってしまうかもだが、自分が、未来の可能性が良くない世界にいる事など、知らない方がいいだろう、とゼンには思える。
神々も同様の意見だから、詳細の説明がされていないのだろう。
「……これ、二人乗りの機体なんですよね?私が乗って、行けないんですか?」
そのサリサが、思いがけない事を言い出した。
「それは……」
ゼンは、何と言って説得していいか迷って口ごもる。
「駄目じゃよ。お主は、確かに魔術は大した物じゃが、それだけじゃ。特化し過ぎておる。
それで、わしに勝てるのなら話は別じゃが、そうではなかろう?」
サリサをきつく戒めたのは、アルティエールだった。
「想い人と一緒にいたい気持ちは解るが、これから行く戦場では、そんな感情に任せただけの行動で、ゼンの生還率は大きく変わるのじゃ。だから、今回は我慢じゃよ」
「アルティさん……」
サリサも、当然分かっていた。そして、詳細が説明されなくても、本来、干渉出来ない筈の神々が揃って、過去の滅んだ文明の超兵器を持ち出してまでしてやろうとしているのが、どれ程大変な事なのかを、予想出来ないサリサではないのだ。
だから、ゼンの傍を離れたくなかったが、アルティエールの方が圧倒的に正論なので、口をつむぐしかない。
【……あー、話を遮るのも野暮なのじゃが、あの機体に乗るには、ある一定以上の能力数値が必要なのじゃ。そこまで、サリサ嬢は届いておらん。乗るのは無理なんじゃ】
実際には、サリサの数値は56%で、何とか越えていた。アルティエールがいなければ、乗せる事になったかもしれないが、今は諦めさせる話の流れだ。
「うむ。今回は、わしに多少の責任がある。ゼンは、かならず生きてお前達の元に戻れるよう、このわしが最善を尽くす事を約束しよう。絶対に、な」
サリサに向かって、硬く誓うアルティエールを見て、その言葉に、想いに嘘がない事を、サリサは感じ取っていた。
(見ていなかった間に、何かあったのかしら?これだと、帰って来た時には、3番目の件、受け入れる事になりそう……)
サリサは、自分が無理を言っている事も分かっていたので、アルティエールの約束を、誓いを信用する事にした。
「ゼンを、よろしくお願いしますね」
「任せるのじゃ。傷一つ、付けずに帰してみせるぞい」
想いを一つにして、微笑み合う二人の少女。
自分が口出す事なく、丸く納まった事に、ゼンはホっと安堵する。自分だと、絆されて連れて行きたくなってしまったかもしれないから。
こうして、サリサはしばしの別れを告げ、二柱の女神の力でフェルズに戻って行った。
※
「―――それで、どこにどう行けばいいのじゃ?」
アルティエールは、時間凍結でとってあったムーザルの美味くもマズくもない、栄養面だけ考えられた軍用食を、モグモグ食べながら、二柱の神へと尋ねる。
ゼンは、普通に自分のポーチから干し肉だのパンだのを出して栄養補給している。
アルティエールは、単に好奇心で、ムーザルの物を食べているのだ。
【機神は、それ単体で星の重力を振り切り、大気圏を抜ける事も可能なんじゃが、そこで無駄な力を消費する事もなかろう】
【エーギル】が力を貸してくれる。海水に溶け込んだ鉱物を凝縮し、レールにして、氷で補強したトンネルを造ってもらう。弾丸を飛ばす砲身として。
そこに、トールも力を貸して、電磁加速をかける」
「ほうほう。海水トンネルのマスドライバーに、レールガンか!」
またアルティエールがはしゃいでいるので、ゼンは無関心に黙々と食事を続ける。
【ムーザルが、他の国に戦争を仕掛ける用で、機動装甲兵装を入れる弾丸型のカプセルがある。機神でも何とか入れるので、その砲弾を、ヴォイドが襲来している宙域に撃ち出す】
「長距離の奇襲用か。エグイ事を考える国じゃな」
【全世界を欲し、神界にまで手を伸ばそうとした侵略国家じゃからな……】
実際に、ムーザルは機動装甲兵装を地下工場で、10万体近くの機体が造られていたのだ。それらは全て、海の藻屑と消えた。
この施設を残したのは、ここが最新鋭の実験所で、神すら倒せる可能性のある、機神ラグナロクがあったからだ。
ヴォイドを想定していた訳ではないが、何かあったときの為に、と入念な神々の封印と、エーギルの絶対封印指定海域として、人間は勿論、魔物さえも近づけぬ場所として残されていたのだ。
それがヴォイドに対して、どこまで有効か、は神々にも分からない。
前回の映像からでは、充分対応可能と推定されるが、相手は別個体で、別の自己進化を遂げている筈だ。それに、自分と戦える戦力に対して、向こうがどういう戦術をとってくるのかも未知数。
実際に戦ってみなければ、分からない要素の方が多過ぎた。
だからこれは、生贄の羊が、どこまで運命に抗えるかの実験、と言ってしまってもいいのかもしれない。
ゼンもアルティエールも、それを承知で、これからの戦いに臨もうとしているのだ。
女子会エルフ編
ハ「ところでエリンって、なんでボクまで同居に引き込んだの?ボクとしては、願ったり叶ったりだったけど」
カ「強敵に塩を送る?余裕なのかしら」
エ「あー、そうじゃなくて、ハルアのが最初から頑張ってたのに、それを止めてた私が、抜け駆けみたいなのは、ズルいかなぁと……」
ア「馬鹿正直じゃな。戦場で長生き出来んタイプよのう」
メ「え、と。ここ、煽情じゃありませんし、別にいいんじゃ……」
ア「恋は戦場!それはいつの時代でも常識じゃ!」
ハ「殺伐としてるなぁ。ボクは、エリンのそういう所も、エリンの魅力だと思うよ」
エ「ありがとう。私も、譲るつもりじゃないから」
カ「若いなぁ……。でも、私も諦めない……」
シ「ガウ!」<頑張れ。主様!>




