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133.クラン名『東方旅団』

二日ぶり?遅れてすいません。

つか、暑くてしむ……



 ※



 ゼンは、とりあえずボンガに指示の出し終えたコロンの作業を中断させて、クランに紹介させる為に、食堂に連れて行った。


 ハルアは、残って修繕作業を続けるボンガと話をしている。


 前に、鎧に素材を貰った事とかのお礼を言っているようだ。彼女は、ボンガが従魔だから、とかで物おじする理由にならないらしい。本当に、不思議に個性的なエルフだ。アルと気が合うのも頷ける。


 エリンはコロンと一緒に、ゼンに付き従っている。


 それが自分の役目、と思い込み過ぎているような気がするのだが、今は非常に助かっているのだし、何か文句をとやかく言う時期ではないだろう。


 いつもなら、クラン参加者は鍛錬をしている時間だが、鎧の事やら何やらで、まだ食堂で話し合っているのは、帰宅時に確認済だ。


 ゼンが、二人を連れて食堂に入ると、リュウとラルクが、コロンの姿を見て、少し微妙な顔をした。別に、ゼンが女の子を選んで連れて来た訳ではないのだが。


「ガゼバ親方のお弟子でさんで、コロンさん。前からハルアと組んで物作りしてたらしいので、この方に来ていただきました」


 やたら気弱で内気そうで、エリンの後ろに隠れかねないドワーフの少女を、今まで来た女の子とは意味合いがかなり違うと気づいてくれたのか、リュウとラルクは怖がらせない様に、丁寧に挨拶している。


 ゼンは、こちらを注目している皆に話しかける。


「皆さん、いいですか?ガゼバ親方は、今それほど仕事が立て込んでいないので、鎧の作業はすぐに取りかかれるとの事です。量が量ですので、完成まで多少時間はかかると思います。


 こちらは、ハルアと一緒に仕事をしてもらう、鍛冶師のコロンさんです。専属として雇いましたので、何か修繕などの仕事は、こちらでもお願い出来ますから。


 自分は一応、従魔用に、実験的な武器とか、魔具なんんかを造ってもらおうと思ってます」


 コロンは、ほとんどの者には聞こえない様な小声で挨拶して、頭を下げていた。


 ガゼバの店の常連であるチームには顔見知りもいたらしく、親し気に声をかける者もいた。


 挨拶が終わると、鍛冶場の様子が気になる、のではなく、大勢の人の前にいるのが辛かったのだろう。コロンはすぐに頭をさげさげ、食堂を出て行った。


 錬金術師は、一人で特殊な武器や魔具を造れる者もいるが、鍛冶師と組ませて特殊効果は完成品に付与して造らせた方が効率的に作業が出来る。役割分担による、適材適所。


 二人は、いいコンビになるのではないだろうか。


「……エリン、チーム毎に、頼む鎧の数と、色、デザインをどうするか聞いてメモして来てくれ。術士の補強するローブとかも、準備してもらって、後で回収しよう。


 俺は、『剛腕豪打』と『破邪剣皇』『いにしえの竜玉』に話して来るから」


「はい、分かりました。ゼンさん」


 エリンは元気よく返事して、張り切って仕事をしてくれる。


「あ、ゼン、ロナッファさんとリーランさんが、この先の事で話がしたいから、自室に来て欲しい、と言ってたぞ」


 リュウが、思い出した様に、獣王国の二人の伝言を、ゼンに伝えた。


「分かりました。これが終わったら、話して来ます」


 ゼンは、『剛腕豪打』のドワーフ兄弟に、今持っている金属鎧を補修するので、親方がその鎧を持って来て欲しい、と言っていた事、後、雇われの獣人族二人を連れて、鎧のサイズを測りに行って欲しい事、それと術士の外套ローブも補強するので、ある分持って行って欲しい事を伝えた。


「……うちの契約冒険者の分も、鎧を提供してもらえるのか?」


「クランで一緒に戦ってもらうのなら、そこで区分けする意味はないと思いますが」


「剛毅よのう。いや、ワシらが金を出す訳ではないのじゃから、有難いとしか、言い様がないじゃが」


 『剛腕豪打』の、他の二人の獣人族はフリーで雇われる、契約方式をとっている冒険者だ。冒険者の中には、傭兵の様に、パーティーに契約して雇われる者もいるのだ。


 彼等に、契約外で報酬を与える意味は無い。言いたい事は、分からないでもないが、正規のメンバーだろうと、契約の者だろうと、捨て石にする訳にはいかない。そこから崩れるような弱い箇所をつくる方が無意味だ。


 後、ガゼバの店を使っていなかった『破邪剣皇』には、鎧のサイズを測ってもらわなければいけないので、店の方にメンバー全員で行ってもらう。


 ガイは、普通に了解し、サブリーダーのロータスと相談している。


 彼は、初日に突っかかって来て以来、すっかり大人しくなっている。


 自分よりも実力者であれば、従うのに不満はない、強者至上主義なのだが、彼はギリギリ20代でC級に昇格した、西風旅団を除けば、破格の若さでランクを上げている、若手のホープだ。


 自身過剰気味になっても、仕方のない実績を上げて来た剣士だった。


 サブリーダーのエルフ、ロータスはそれをいさめる意味で、このクランに参加をさせた様だった。彼の成長を補佐するのが、サブリーダーとしての生き甲斐なのだそうだ。


 恐らくそれは成功で、リュウ以外でも、他のリーダー達は充分強く、彼はここでの鍛錬を一番楽しんでいる様に思われた。


 後、初日にどこぞのハイエルフ様に失礼な事を言って、燃やされたのも、大人しくなった一因かもしれない……。


 残りの『いにしえの竜玉』は、やはりあの鎧は部族で受け継いできた物らしく、こちらの提供は不要だと言っていた。


 そもそも竜人の鱗は、それ自体が天然の鎧だ。本物の竜程ではなくとも、魔法防御、物理防御に優れている。鎧自体、不要だと言ってもいいぐらいなのだから。


 残ったメリッサに、補強用のローブを出してもらうと、一応アルティエールはどうするかを尋ねる。


 ハイエルフ様は、気紛れにちょくちょく姿を消している。


 この話合いでも姿を見かけなかった。


 メリッサは、多分必要ないと思う、と言っていた。今までも、適当なローブを羽織っていただけで、防具に何のこだわりも持っていなかったのだそうだ。


 防壁にしろ障壁にしろ、規格外のものを展開出来る人外だ。必要ないのは分かっていた。


 それでも、お揃いがどーの、とスネられると困ると思ったのだが、いないなら仕方がない。後で、また話をしてみよう。



 ※



 素材等をガゼバの店に持って行く前に、獣王国組の部屋に行く。ゼンの隣室だ。


 そろそろ、彼女達の進退にも、結論を出すべきなのだろう。


 旅団での話し合いでは、ゼンに一任する、との事だ。


 ゼンは、前の様に、ソファに座って二人と話し合う。


「リーラン達は、本当にどうしたい?二人と婚約した男なんて諦めて、本国に帰る気とか、はないの?」


 前からの繰り返しのような物だが、ゼンが婚約した事で、その意味は、二人にとって違うものとなっているだろう。


「ご迷惑なのは、重々承知しています。でも、私はこの初恋を、この気持ちを捨て去りたいとは思わないんです。すみません、師匠」


 リーランの決意が変わらないのは、予想していた。見た目よりずっと頑固なのだ。


「本当に我等を遠ざけたいなら、いっそはっきり嫌いだと言ってくれ。そして、出て行け、と命令されれば、我等は家長の意志に……」


 家長とか言われても困るのだが。うちの場合だと、それはチームリーダーのリュウになってしまう。


 ロナッファは、逆にゼンに対して弱気な所を見せる。年下への初恋というのは、色々難しいのだろう。


「俺は、別に君らを嫌ってはいない。この半月ぐらいは、楽しくやれていたと思う。


 でも、将来的に俺が君らを好きになる保証なんて、当然与える事は出来ない。それでもここに居残るつもりなら、覚悟を決めて、仕事をして欲しい。


 クランに参加し、どこかのチームに参加するか、新しいチームを作るか。


 クラン活動自体は、まだ先になるけど、どうするのか考えておいて欲しい。


 残るなら、扱いは、他の参加者と同じになる。ひいきはしないが、差別もしない。だから、リーランは、もう俺を師匠と呼んではいけない。これは、大事なけじめだ」


 そこに、線引きをした。どういう意図があるのかよく解らないが、リーランのその呼び方には、甘えが感じられるからだ。


「それを受け入れるなら、残ってもいい、という事でしょうか?」


「そう言ったつもりだけど。


 それと、ロナとの鍛錬は、ちゃんと俺の為になってる。アルとロナだけが、ここではAランク以上の冒険者だから、迷惑とかは思っていないが、それが恋愛的な受け入れだと誤解されるのも困る。今は、いい戦友だと思っているよ」


 そう言われて、嬉しいかどうかは分からないが、今最大限に言えるのはそれぐらいだ。


 二人は、お互いを見て、しっかりと頷くと、


「「残らせて下さい」」


 とはっきり声を揃えて宣言した。


「残るんだな。なら、他と同様に、鎧を作る。俺や、他のチームと一緒に店に行こう。採寸とかあるから。


 後、リーランが多分、このクラン参加者の中で一番弱い。ロナッファが稽古をつけて、他の足手纏いにならない様に鍛えて欲しい」


 ロナッファは師範代だ。任せて心配はないだろう。


 これにもロナッファは、しっかりと頷く。


「それと、A級のロナには、ここのギルドから、しばらくしたら行われる、危険な作戦に参加して欲しい。これは依頼だ。ギルマス直々の」


「わ、私も!」


 思わず、と言った感じにリーランが言うが、これは無理だ。


「リーランは駄目。他のクランのメンバーも、それには参加させるつもりはない。危険だって言っただろ?」


 ギルマスの、冒険者集めは難航している。余りかき集め過ぎて、魔物に対して対抗する為の冒険者のいない空白地帯をつくると、それはそれで、その地が危険になる可能性もある。


 アルティエールのお陰で、フェルズに潜む勢力の戦力は、かなり細かい部分まで判明しているが、向こうは何らかの手段で、増援を増やせるかもしれない。魔族には転移術がある。


 もっとも、魔族だから全員、転移が使える、という程単純な話ではないらしい。あくまで、得意なものが多く、それによる転移符や魔具の技術が、人間族より先に進んでいるだけの話で、転移が使えない種族もいるのだそうだ。


 それでも、作戦決行まで余り長く時間をかけていると、作戦自体が敵側に漏洩する可能性も大きくなる。


 ギルマスはそれも計算にいれて、計画を前倒しに速く行いたいらしい。


 果たして、どうなるのかは、その時次第なのだろう。



 ※



「小城の、名前?」


 クランの各リーダーが、ゼンの言葉をオウム返しに繰り返す。


「はい。後、クランの名前。エリンに、登録名を考えて下さい、と言われていたんです」


 『崩壊騎士団』とか、『死神の力』とかの、アレだ。


「なにかいいのありますか?どちらかでもいいので、意見をお願いします」


 小城は、部屋や建物は大きいが、クラン全員がほぼ集まれる場所となると、食堂しかないので、自然、ここが会議室のように使われていた。


 まず、小城の名前が色々と上がるのだが、『アヴァロン』『バビロン』『オリュンポス』『ゴリョーカク』と、大体が、勇者が伝えた異世界の名称なのだが、どれも、こんな小さな城もどきにつけるような名前ではない筈だ。


「理想郷、とか、そんな凄い所じゃないでしょう?」


 ゼンは呆れた顔をするが、理想的な生活してるのに、とつぶやく女子等もいるのは、なんだろうか。風呂のせいだろうか?


「やっぱりもう小城でいいんじゃないですかね。別に、そんな大層な感じで、大袈裟な名称つける程の物じゃないし、借りているだけに過ぎないんだから」


 もうこっちは打ち切って、クラン名だけに絞ろうとかと、ゼンが考えていると、カーチャがオズオズと手を上げて言った。


「『フェルゼン』と言うのは、どうでしょうか?」


「それは、何かの歴史上の人名ですか?何かで聞いた様な気も……。


 いや、それ以前に末尾にゼンがついてるのが……」


 ゼンにとっては、“凄く”嫌だった。


「フェルズにある、ゼンさんのお城で、『フェルゼン』と、繋げてみたんです」


 皆がその名前を呟き、さざ波の様に、食堂全体にそれが広がって行く。


 何だか、ゼンは嫌な予感がして来た。


「借り賃は、俺が立て替えているだけで、別にここ、俺の城じゃないですから」


 とゼンが言っても、誰も耳を貸そうとはしない。


「いいんじゃないか、それで」


 何故か、賛成意見多数。リュウ達までもが、悪くない、とか言い始めている。


「……待って下さい。俺が、嫌なんですが。その名前……」


 ゼンが抗弁しても、


「しかしゼン、もう多数決で……」


 と苦笑いされる。


(数の暴力、許すまじ……。なんで、そんな名前にしたがるのだろうか……)


「……じゃあ、後ともかく、クランの方の名前をは?」


「暴風旅団とか、台風旅団とか」


「物騒だな。フェルズ旅団……語呂がよくないか。涼風、旋風、清風とかは?」


「ちょ、ちょっと待って下さい。なんでさっきから、旅団とつけるんですか?」


 今度は、リュウが慌てて、皆に抗議する。


「いや、ここは、もうどう考えても、『西風旅団』を中心に作られたクランだ。分かりやすく、名前をそこからつけるだろ?」


 ダルケンが、当然だろ、とすました顔で言う。


「他がバラバラだからな。混ぜても一貫性がないじゃろ」


 ガドルドまでもが賛成している。


「混ぜて、『蒼炎竜皇旅団』とか」


 ガイが言うと、やはり混ぜるのは無しだなぁ、と落ちがつく。


 結局、色々と案は出るのだが決まらず、最後に誰が言ったか分からない、『東方旅団』という名でまとまった。


 フェルズの冒険者ギルドが、東辺境本部である事、西の正反対だから、とか、理由はいくつかあったが、最後にはもう皆、なんだか面倒になったようだ。


 小城は“フェルゼン”。クランは『東方旅団』。


 ゼンだけが一人、小城のが良かった、とつぶやいていた……。




ミ「フェルゼン……。素敵ですの!」

リ「フェルゼン……。響きがいいですね」


セ「いい名前だと思います」

ゾ「悪くないんじゃないか?」

ガ「良名…」

ボ「とっても気に入りました」

ル「お?ふぇるゼン?おー!」


ゼ「まるで全然、少しも良くない……」





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