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103.三つの想い

また仮です。会話主体で整理出来てないのですが、量的には充分な量です。

つまり、これを完成させると、もう少し長く……。

23:40更新。やっぱり長くなったぁ。



 ※



 昼食後、自室にこもる二組の女子。その一方。獣王国二人組の方。


「完全に機嫌を損ねてしまった……」


 ロナッファは、意気消沈の余り、ベッドの上で膝を抱えて縦線背景を背負った落ち込みモードに入っていた。


「ロナ様は、師匠の事がお好きではないのなら、諦めた方がよろしいかと」


 リーランは溜息をついて、あえて厳しい事を言う。


 もう色々面倒なので、室内では本国にいた時と同じように呼び合う事にした。


「何故そのように冷たい事を、お前まで言うのだ」


「だって、王家の為に子供が欲しいだけなら、それを恋愛とはいえませんから」


「それは、いや、子供だけが欲しい訳ではなかったのだが、ゼンが私になびきそうもないので、妥協案と言うか、だな……」


 つまりは単なる様子見のつもりで、藪蛇をつついたのだった。


「そこで妥協してどーするんですか!そんな中途半端な想いなら、師匠も迷惑します!ついでに私もです!獣人族の娘は情が薄い、みたいに思われかねません!」


 これはリーランの本音だ。


「リーランは若いからそう強気でいられるのだ……。私の歳の差では……」


「むっかぁ~~!そんなに背が大きくて、胸、バインバインの癖に、ロナ様は贅沢です!傲慢です!そんなに完成された女性美を兼ね備えた身体をしていて、歳の差?そんなの最初から分かっていた筈です!獣王様に強制されたからではなく、本当に師匠の事を好きになったのなら、気にするのがそこですか?」


 獣王国ではロナッファに憧れているのは、男性も女性も同数ぐらいはいる。それは、強さだけではなく、常に気高く、凛々しく、そして美しいからだ。


「そうはいっても、ゼンは背が低く、小さいし、私はお前が羨ましい。背が高い事、大きい事を恨めしいと思ったのはこれが初めてだ……」


 そのロナッファが、伯爵令嬢で、やっとC級に上がれたリーランを羨ましがるなど、本来あってはならない事だった。それだけゼンに本気なのだろう。


「お気持ちは分からなくもないですが、それは他にはない武器を持っている、と思うべきです。私の見たところ、師匠に想いを寄せている女性に戦士系は……あの犬メイドには、多少の心得を感じますが、戦士とは言えないでしょう。


 だから、それを利点と考え、一緒に切磋琢磨する関係になればいいではないですか。


 ロナ様は、師匠と比べても、劣る戦士には思えません、師匠が駆け引き上手で、ロナ様は敗北しましたが、必ずしもそこに圧倒的な差があった訳ではありません。


 それを、子供だけ欲しい、みたいな事言われたら、師匠でなくとも呆れます!」


「ううぅ……。でももう、つい言ってしまったのだ。ゼンに嫌われた……」


「撤回すればいいでしょう!謝ればいいだけの話です!師匠は許して下さるでしょう。そういう度量の広い人だと、私は思っています。


 ロナ様は、師範代なのに、そんなにお心が弱かったのですか?」


「そんなつもりはなかったのだが、好きな者に冷たくされる事がこれほど心を痛めるものとは思わなんだ……」


 自国の武闘会では、片腕を折られながらも諦めず戦い、最後には勝利をもぎ取った事もある猛者が、ここまで恋愛事で弱々しくなるとは、誰も思わないだろう。


 むしろ普段とのギャップで可愛いと思えるぐらいだ。


「はぁ……。私は、ロナ様のお守りで来た訳ではないのですよ。表向きは逆なのに……。


 ロナ様が諦める、とおっしゃるのなら、兄さまを連れて帰国なさるのがよろしいかと。


 私は強敵ライバルが減るので、むしろ好都合です」


「……お前は、国に帰るつもりはないのか?」


「毛頭ありません。どうせ家は兄さま方の誰かが継ぐでしょうし、私には関係ありません。未練もありません。父さまも、それを望んでいるようでもありますし」


「羨ましい……」


「ロナ様がどうなさるかもご自由でしょうに。跡継ぎなら弟君がおられるではないですか。


 私には思い通りに行かず、スネているようにしか見えませんよ」


「手厳しいなぁ……」


 力なく笑うロナッファは、本当に弱々しく、誰かが傍で支えていないと崩れて倒れ、二度と立ち上がれないのでは、と心配になるぐらいに、か弱く見えた。




 ※



 一方こちらは、西風旅団の女性陣二人の部屋。


「―――ふむふむ。大体は分かったかな~。つまり、ユーちゃんがゼン君の心にあった、何かの封印を解いてしまって、ゼン君は一時的に変な状態になっていた、と~~」


 アリシアは、何故か凄く偉そうに腕を組み、ふむふむと頷いている。


「そうね。恐らくは、そんな感じだと思う」


「で、ゼン君がその状態の時に口走っていた事が、ゼン君の隠していた、封印していた“想い”なんだろうね~」


「……うん、多分、そうなんじゃないかな、と……」


 サリサはアリシアに相談した事で、少し胸のつかえが取れたような気がした。やはりもっと早く相談するべきだっただろうか。


「なら、サリーは私に言う事があるんじゃないかなぁ~?」


「へ?私が?シアに何を言うっていうのよ?」


「サリーってば、とぼけちゃって、もう~~。


 私、言ったよね『ゼン君がサリーを好き』だって。やっぱり当たってたんだから、サリーは私に土下座して、『すみません、アリシア様、私は心から反省して、これからはアリシア様の下僕になります』、って誓わなきゃ~~」


 やっぱり相談するべきじゃなかったかも、と思ってしまうくらいにふざけた事をほざいている。


「いくらなんでも調子に乗り過ぎよ!


 それにあの『好き』って昔の話だったの?」


「うん、そうだよ(嘘)。でも、再会してからは、そういうのが余り見えなかったから、あれはいい初恋の思い出、としてゼン君の中で完結しちゃったのかと思ってたんだけど(本当)。


 でも、再会してからも、そこはかとなく、そういうのはあったから、脈はあると思ったんだよね(本当)。


 でも、誰かさんの想いの方が、着々と大きく膨らんでいってたから、これはもう応援するしかないでしょう、って~~(とても本当)」


「待って待って。何それ、まさかシア、人の心が読めるの?」


 “見えた”とか“あった”なんて言うアリシアの表現は、ただ勘でそう思った、というのとは違うと感じられた。


「違うよ~。そんな便利な力ないよ~。ただね、昔から、人の恋心は、ぽわわぁん、と感じるんだよね。とても暖かで甘フワな、正の感情。そういうのが漠然と分かるの~~」


「……そんな話、私、聞いてないわよ!」


「サリー、覚えてないみたいだけど、昔からそういう話はしてるよ。全然信じてないのは知ってたけど。


 それに、人の恋愛観察は、私の密かな楽しみの一つだったし、そういう種明かしみたいなのしちゃうと、つまらないでしょ~?」


「何その悪趣味は!何がつまるのよ!」


 だが、確かにアリシアは昔からそういう恋愛関係な話をよくしていた。


 単にそういう話が好きなのだけと思って、恋愛事に興味がないサリサは話の中味をよく聞いていなかったし、かなり適当に受け流しているだけだった記憶はある。


「だって~、サリーはそうだって言ったとしても、ずっと否定し続けてたじゃない。私が、そういうの感じる、って言っても信じなかったと思うけど~」


 これは現在の話だ。


「それは……そうかもだけど……」


 親友同士だって、隠し事の一つや二つはある。それに、アリシアはこれを隠してもいなかった様だ。サリサに興味のない事柄なので、あえて詳しく言わなかっただけの事のようだ。


「でも、それって、その恋心があるのが分かるだけで、それが誰に向いているかは分からないんじゃないの?」


「その通りなのだ!でも、恋してる時って、無意識にでもその人の姿を目で追うから、すぐに誰かは分かっちゃうんだけどね」


 それはそうだろう。成程、恋心があると分かっていれば、その人が誰を目で追うかを見れば、もうその相手が誰かは一目瞭然なのだ。


 そこでサリサは、ゼンに問いただすまで、自分が、『ゼンはアリシアに恋してる?』と勘違いしていた話の、その理由を思い出した。


 過去、時々視線を感じ、見るとゼンがスっと目線をそらす事しばしば。


 サリサとアリシアは仲が良く、いつも隣り合って行動していたので、当然位置は近く、だから、ああ、ゼンはシアを見てたな、と思った、それがきっかけだった。


 まさかそれがそのまま、自分を見ていたなどとは、思いも寄らぬ出来事だ。


「ムフフ。それにしてもいいなぁ。少年の淡い初恋は、身分差と年の差に阻まれる、悲しき恋で、少年はそれを押し隠し、ついにはそれを封印する事に決めたのでした~~」


 なんていい恋物語だね、とかお気楽に言われても、それはお話の事ではない。


「……年の差はともかく、身分差って何よ?」


「何言ってるの、サリー。ゼン君は当時まだスラムの子供で、身分登録のない、国籍不明の違法居住者になるんだよ。普通の人と身分差を感じるのは当然でしょうが」


「あ、ああ、そ、そうね。そういうものなのね。でも、あの時だって、ゴウセルさんは、ゼンを養子に望んでたんだし、別にそんな風に考えなくても……」


「ブブー。察しの悪いサリーに例え話をします。


 とっても綺麗で可愛い超絶美少女アリシアちゃんは、ある貴族に望まれ養子になる事になりました。さて、アリシアちゃんの身分は、一応は貴族になりますが、本人的にはどうでしょうか?」


 アリシアは教師然として、いつのまにか伊達眼鏡をして、人差し指を振り振り言う。


「何その、やたら自画自賛の例え話は。……自分的には、平民のまま?」


「そうです!養子がどうのとかの問題じゃないでしょ?人の生まれは変えられません。ましてあの子は、自分の生まれすら定かでなく、その記憶すらない正体不明の異邦人なのです。


 生真面目なゼン君が自分をどう思っているか、なんて、サリサだって分かっていると思ってたんだけど?」


 アリシアはビシっと振っていた人差し指でサリサを指すと、伊達眼鏡を外し、小首をコテっとかしげる。


「う……。それは、そうなんだけど、ゼンはもう今や、大陸中の話題にすらなっている時の人、英雄『流水の弟子』で、だからこそ、旅の先々でもモテモテで、もうそんな事を気にしている人なんていないじゃない。王族に婿に、と望まれた事すらあるのよ?」


 大体が『流水の剣士の旅路』からの知識だ。


「うん、そういう意味では、スラム出でも成り上がれる職として、ゴウセルさんがゼン君に冒険者を勧めたのは凄い大正解だったんだろうけど、だからって、あの子の生まれが変わる訳じゃないんだよ。


 あの子がまるで増長する事がないのは、そういう事もあるからじゃないかなぁ……」


「そ、そうね……」


 なんだかよっぽどアリシアの方がゼンの理解者で、彼の事をとても思いやっている。弟として可愛がっている、というのは伊達ではないのだ。


「それはそれとして~~、問題の封印、なんだけど、サリサずっとこの事考えていたんだから、もう分かっているよね?自覚してるよね?それが、ゼン君のサリーに対する“恋心”だって事は……」


「……そうかな、とは推測してる……」


 サリサには、それが自分に都合の良い考えな気がして、どうにも肯定し難かったのだが。


「なら、自分がもう告白された事も、ちゃんと理解してる?認識してる?」


 畳みかけるようにアリシアは言う。


 旅団全員に対して言われた、『大好き』の一言に欠片程度の本音を混じらせた、と言っていた。隠していた想い、封印した想いの相手と同じなのは考えるまでもない。


「……うまく理解しているとは言い難い。正直、その当時に言われてたら、私にはその準備がなくて、受け止められなかったと思う……」


 サリサは恋愛奥手、ではなく、まったく興味外の話で、自分が誰かを好きになる事なんて永遠の来ないのでは、と本気で思っていた。


「ふむふむ。で、月日は経ち、二人はそれぞれ成長して、もう一度出会ったのでした。


 今、その事を聞いて、どんな気持ちになった?」


 答えづらい事を、アリシアはズバズバ聞いてくる。


「……多分、凄く嬉しい、みたい……」


「自分の気持ちなのに、断定出来ないの?」


「無茶言わないで。私は、恋なんてした事ないの!だから、色々頭ぐちゃぐちゃで、胸の中がモヤモヤしてて、ずっと不安定で、怖いの!これって本当に恋なの?もっと、綺麗な、暖かい、嬉しさとかに満ち溢れてるものじゃないの?」


 今までになく不安げで頼りのない様子を見せるサリサを、アリシアは思わず抱き締めてしまう。


「ああ、もうサリー、可愛いなぁ。私はそういう時期すぐに終わっちゃったけど、そういうのも恋だよ。まだ実ったって決まった訳じゃないくて、ゼン君の本心を確かめてないから、その不安と苛立ちで、心が揺れているんだと思うよ」


 サリサはされるがまま、自分の心の不安で身体も少し震えているのを、抱き締められて気づいたぐらいに情緒不安定だ。


「……そう、なのかしら?少なくとも、あいつのその“想い”とやらが分かれば、私の苛立ちはなくなるの?」


「うん。それでどうなるのかは、サリーが自分で実感して欲しい。問題は、ゼン君が、何で心を封印なんかする程に、思い詰めているか、だよね」


 アリシアはヨシヨシとサリサの頭を子供のあやすように撫でる。サリサはそれを振り払う気力もない。


「身分差とか年の差とかじゃないの?」


「それだと、ただ隠そうとはしても、封印するまで思い詰めないんじゃないかと思うの。


 だから、あの闘技会の精霊ショーの時の事。何となく予想はつくけど、これはゼン君本人に確かめた方がいいと思う。ゼン君から、怒りを感じたんでしょ?」


 やっとサリサを離したアリシアは、話を続ける。


「うん。何かに怒ってた。それに、“確信に変わった”って」


「確信に変わったのは、サリーに対する“恋心”だと思う。だから、それがそうだ、と分かるくらいの出来事が、その時にあったんだね」


「あの時に?…………私には、分からないわ。思い当たる事がない……」


「それは、本人に聞いてみるしかないかな。必然的に、その話に触れると思うから」


「シアには分かるの?」


「多分、ね。でも、人から話されたくない事柄だと思うから、話さないでおく」


 勿体ぶっている訳でなく、本人が話すべき内容なのだろう。


「後、まだゼン君について、話しておくべき事があると思うから、そっちに話を移そうか」


「話しておくべき事って?」


「ゼン君の、傷、大きな精神的外傷トラウマになっている事。


 それがあって、ゼン君は特に女性と親しくしない、する事に対する恐れがある。それも、封印の要因の一つになっていると思うから」


「それって、もしかしてザラさんの事?」


 ゼンのスラム時代をよく知っている訳ではないが、ザラの話は、内容が内容なだけに、とても小さな話とは言えないと思える重要案件だ。


「そう。ゼン君はそれまで何でも逃げて、その足で揉め事を避けて何とか暮らしてたらしいけど、ザラさんの事だけは別。とても、特別。


 ゼン君は、多分初めて、自分から大切だと思う人を取り戻そうと、自分から能動的に行動した。でも、それは無残な失敗に終わり、ザラさんは取り戻せずに、死んだ……」


 アリシアは、自分でも涙があふれ出るのも構わずに、話を続ける。


「ちょっ、待って、シア。ザラさんは死んでなくて、ゼンが取り戻したじゃない」


「それは、今現在の話。あの時、ゼン君は失敗して、ザラさんは死んだ、と、ずっと思っていた。ザラさんを救出する前までは、ずっと」


「……そうね。ゼンが自分でそう言ってたものね」


 二人でその話を聞いたのだ。


「だから、その事はゼン君の、唯一の大きな挫折の記憶。リュウ君やラルクが、『悪魔の壁(デモンズ・ウォール)』の序盤で大怪我をした、あれが旅団の大きな初挫折で、それまで失敗らしい失敗がなかったせいか、二人の落ち込みは凄くて、パーティー解散、冒険者は引退、とまで言ってたよね」


「ええ。正直、あれは私らにはどうする事も出来なかった。前衛の、戦士の問題で、男の矜持プライドとかもあったみたいだし、ゼンが来てくれなかったら、間に合っていなかったら、本当に私達、冒険者じゃなくなってたかもしれないわね」


 過程でも、そうなって自分達がバラバラになっていたとしたら、とても幸福な未来など考えられない。それだけ重大な分岐路だった。


「うん。それはそれとして(かなりひどい)、ゼン君の挫折は、それよりも更に重傷だと思うの。だって、ただ迷宮で魔物に負けるのよりも、大事な人を連れ去られ、取り戻そうとしても力足りずに失敗して、その人が死んだ、と、思いこんでいただけでも、ゼン君にとっては死なせたも同然なんだから」


「そう……なって、しまうわね」


 二人であの話を聞いた時には、アリシアは今の様に涙を流し、サリサもかなりの衝撃を受けた重い話だった。


「だからあの、自分によくしてくれた人は皆死ぬ、みたいなジンクスをずっと背負っていたゼン君にとって、自分の命の恩人のザラさんを救えなかった事は、本当に本当に大きな傷になっていて、多分ゼン君は、女性と付き合いたい、なんて、ずっと思えなかったと思うの」


「自分の想いを、封印する程に?」


 アリシアはコクリと頷く。


「もし自分が関わる事で、また誰かが傷ついたり、命を落としたりする事は、もうゼン君の中では恐怖でしかなかっただろうし、だからゼン君は、凄くひたむきに強さを求めたんじゃないのかな」


「そうね。あいつがあのオークキングの時に行動出来たたのも、赤熊レッドベアの時に、妙に素早く石を投げれたのも、そうした恐れから来る用心の現れだったのかも……」


「だから、ゼン君にとって、ずっと女性と付き合う、なんて事は禁忌タブーだったんじゃないかなぁ、と思う。


 それでその人に不幸が訪れたりしたら、世捨て人にでもなってしまいそう……」


「そうかもしれない、のかな。あれだけ沢山言い寄る子がいたのに、みんな袖で振ってるものね」『流水の剣士の旅路』参照+今の現状。


「心に決めた人がいたからかもしれないけど」


「……それはいいから」


「と、そういう内情もあったとは思うんだけど、あの想いの封印って、ゼン君の感情も一部封印してしまってたんじゃないかな」


「感情って?」


「そのものズバリ恋愛感情。ゼン君て、やたら色々気遣いするのに、恋愛事には無頓着で、『俺にはまだ分からない』を口癖みたいに繰り返し言ってたじゃない」


「そうね。気遣い上手な割に、そこにはまるで理解出来ないし、したくもない、みたいなニュアンスを感じてたけど」


「だから、想いの封印、なんて、その想いだけを封印するなんて器用な真似は出来ずに、恋愛する心ごと封印しちゃってたんじゃないのかなぁ?」


 術士の術の中には、記憶操作などが出来る術もある。感情操作、というのは聞いた事がないが、“恋”という特定の気持ちだけを封印する、というのはいかにも難しそうだ。


「……私も、そういう術や暗示に詳しい訳じゃないから分からないけれど、説得力はあると思う」


「うん。それに、あの日以来、ゼン君の雰囲気が柔らかくなってた事に、サリーは気づいてない?」


「……あいつ、私だけ避けてるから、分からないわよ」


 目が合ってもすぐにその目をそらし、従魔に伝えた伝言だって、聞いている筈なのに、直接答えを寄こさない。


「そっか。それもそうだよね。ゼン君、今凄く優しくなってるよ。前から優しかったけど、前よりもっと」


 と言われても、サリサに向けられてはいないのだから、まるで分からないし、むしろ腹立たしく感じるだけだ。なら何故自分を避けるのか、と。


「でも、今朝がたの訓練で、なにか獣王国のロナッファさん、だっけ、と揉めてたみたいだけど」


 だからわざわざ今日あった、不和な出来事を持ち出す。


「それは、何かゼン君の言われたくない事を迂闊に言ったんじゃないかな。そういうの、ゼン君にはたくさんあるし」


「……そうね。私も、とにかく二人で話せるように、何とかしなきゃ」


 そうしないと、停滞した今の状況、モヤモヤした自分の気持ちに収拾がつかない、とサリサは強く思う。


「あ、それなら、私にいい考えがあるよ~~」


 アリシアはその時、やたら明るく言うのであった。




ミ「何か、怪しい策謀がうごめく予感ですの!」

リ「犬ならではの六感ですか?」

ミ「鈍い蛇には分からないですの」

リ「蛇の感覚だって、結構鋭いんですよ、先輩~~」


ゾ「いやあ、平和な日常だ……」

セ「ゾートさん、それは慣れではなく、現実逃避な逃げですよ……」

ボ「仲良しこよし」

ガ「危険回避、平常運転……」

ル「るーは目がいいお。だって鳥だもの」





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