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事件〜集会〜ごはん♡

本業の忙しさ極まれり!

ラジオと戯れ書く事久しく。


本当に久しぶりの更新です。

お付き合いいただけましたら幸いです。

騒ぎの後、体育館で全校集会が開かれ、校長から1週間の学校閉鎖が言い渡された。

15HRで起きた事件(事故?)についても箝口令かんこうれいともとれるお達しが告げられた。

戻るべき教室のない公志達15HRの生徒達は、そのまま体育館で担任からの説明を受けて、解散となった。

公志は皆が体育館を後にする中、担任に歩み寄り話しかける。


「先生、村上先生、閉鎖中に部室への立ち入りは許可していただけないのでしょうか?」


村上と呼ばれた担任は、そのハッキリとした目鼻立ちと、底なしに優しい眼差しで公志を見つめると、口を開く。


「鬼塚ぁ、熱心なのは褒めるけど、学校に来たって放送を聴く相手がいないんだぜぇ? ゆっくりしてろって、な?」


フランクな物言いだが、口調はどこまでも優しい。

男の名は『村上雄一』

15HRの担任で、公志、茉奈果、日下、真梨が所属する放送部の顧問でもある。

三年生が実質引退してしまった夏休み前の今、部員は公志達15HRの四人しかいないのが現状で、公志は一年生の一学期で既に部長職を任命されていた。


「それにな、お前達に何かあったらどうするんだ! あの得体の知れない事件が解決するまでは、大人しくしてろって。 暇しないだけの課題を出してやんよ♪」


微笑みながら、その瞳には心底教え子を心配する光をたたえながら、あまり嬉しくない申し出を口にした。


「分かりました。それでは失礼します。」


公志は、相変わらず無表情だが、声色には幾らかの尊敬の念が感じられた。

公志は、担任の村上を尊敬していた。

父親の破天荒な歌舞伎っぷりを恥じる事の反動なのかも知れないが、心底尊敬出来る大人が近くにいる事は、子供にとっては好ましい。

特に公志達の年代の子どもたちには。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


校門を出た所で、公志と茉奈果は、日下と真梨に別れを告げ、駅を目指してあるき始めた。

日下と真梨は、二人とは違う方角、アウトレットの近くに整備された高級感溢れる新興住宅地が住まいの所在である。

駅を目指す長い下り、行きとは逆の長い下り坂を歩きながら、茉奈果は坂沿いを走る小川に目をやる。

上流の幼稚園が環境美化のいっかんとして放流した鯉の稚魚たちが、群れを成して流れに逆らっているのが見えた。

不意に公志が茉奈果に声をかける。


「なあ、茉奈果 飯、食いに行かないか?」


「え? どうしたの急に?」


と茉奈果。


公志は珍しく照れくさそうに、少し笑みを浮かべながら答える。


「いや、最近は部活の合宿の準備だったり、家の林の整備だったり、クソ親父に九字仕込まれたりで忙しかっただろ? 昼飯もまだだし………なんて言うか……デートっていうか……ダメか?」


茉奈果は、この公志の照れた笑顔が好きだった。

普段はぶっきらぼうで、誰に話しかけているのかさへ、よく考えないと分からない無表情な公志が、時折見せる笑顔がたまらなく愛おしかった。

親の言い付けで、子供の頃から許嫁として育ち、中学に上がってからは寺の敷地の離れとは言え、一つ屋根の下と言っても過言ではない状況で暮らしている。

自分達の"特異"として産まれてしまった境遇の結果だとしても、茉奈果は公志との婚約は嫌ではなかった。

ただ、公然の仲として学校でクラスメイトにからかわれても、肯定も否定もせずに、ただ受け流す公志の姿を見ては、少し切ない感情に囚われたりもするのであった。

だから、ごく稀に見せる自分にだけ向けられた笑顔がたまらなく嬉しく、愛おしかった。


「うん♡いいよ♫ どこに行く?」


そう尋ねると、


「トキバコ!」


即答であった。


茉奈果は、


「イ〜エス!ヤッフ〜イ♡」


大袈裟ではなく、心底喜んだ。

トキバコ→元は時箱

とは、しっとり和尚こと、公仁の友人夫婦が営むイタリアン・バルで、オーナーシェフの『まゆみさん』が作る料理は二人の大好物だった。


「まゆみさんのお料理久しぶり〜♡」

「こうじ君のお料理も好きだけどぉ、別格なのよね! ごめんね♫」


はしゃぐ茉奈果に公志は、


「お前なぁ、我が家は元々は男子厨房に何とやらって言って、本来男は台所にはたたないんだぞ!」


茉奈果は少し口を尖らせて、


「じゃあ、私のお料理食べてくれるの?」


公志の表情は一瞬で凍りつき、モゴモゴと言葉にならないうめき声を、ひたすら発している。

そう、茉奈果の料理は人の域を超えていた。

しかし、これは『神の等価交換』とは無関係、茉奈果の資質の問題である。


間が保たないのか、別の理由か、公志は普段めったに使わないスマホを取り出すと、どこかへ電話をし始めた。


「あ、もしもし まゆみさん? お久しぶりです。 はい、はい、元気です。」

「はい、コレから伺おうと思いまして……はい、腹ペコです! 茉奈果も一緒です。いえ、親父は今日は……はい、はい二人です。……え?良いんですか? 本当に? いえ、とても嬉しいです。では、お言葉に甘えて」


「カルボナーラとナポリタン、10人前づつお願いします!」



トキバコ、御殿場の古い商店街の一画に突如現れるオシャンなバルである。

公志と茉奈果は目の前に、カルボナーラとナポリタンを五人前づつ置いて、フォークでお上品に食べていた。

フォークで一度に巻き取る量は大人の拳ぐらいの大きさではあるが…

二人共、一口で拳を胃に落とし込んで行く。

咀嚼は平均三回、マンガである。


茉奈果の特異、公志の生死に関わる方向音痴の様な、明らかなペナルティはない。

ただ、その能力の性質上、能力そのものが普通の生活を阻害し、ともすれば生死に関わるのだから、バランスは取れているのかも知れない。

特異には、共通するペナルティがもう一つある。

燃費が異常に悪いのだ。

その人外の能力を体内に保持し続ける為なのだと、しっとり和尚は言う。

その桁外れな食事の量が原因で、時代によっては間引きの対象となり、場合によっては化物のように扱われ、命を奪われる事もあったという。


大量のパスタを胃に流し込みながら、茉奈果は公志に言った。


「ねぇ、こうじ君 さっき、くさっさんと話していた事、本当?」


くさっさん(日下純一)は、ひょんな事から迷子の公志を助け、ひょんな事から家族が公志の能力の世話になった過去がある、公志と茉奈果の事情を知る、数少ないクラスメイトで友人である。

父親は大の公志推しで、父親からは公志の為に死ね!と言われている。

本人は「そうだよねぇ♫」と、どこまで本気かは不明

ただ、それは別の機会に話すお話し。

・・・との、校門でのやりとり・・・


「鬼塚くん、どうだったすか? こう、やっぱり霊の仕業っすか?」


と、問う日下に公志は何故か、少し怒気にも似た苛立ちを含ませた声音で応えた。


「なんでもかんでも、霊のせいにするのは感心しない。」

「俺は、家庭の事情で霊と呼ばれる物に遭遇する事は多い。だが、必ず科学的な根拠を元に発生する自然現象だと思っている。」

「考えてもみろ、肉体を持たない霊の声、一体どこから発っせられているんだ? 肉体を持たない霊が、どうやって机をひっくり返したり、黒板に血文字を書いたりするんだ?」


いつになく公志は饒舌だ。


「肉体に魂が宿り、その魂が死後、化けて出ると言うのなら、ビニールの雨合羽に魂は宿るのか?工事用のヘルメットを被ったトンネルの幽霊は?ヘルメットに魂が有るとでも? そもそも、元が人間なのに、死後に物理的に人間以上の事が出来るようになる理屈が分からん!」


公志は、身近に霊と接する機会が多く有りながら、霊を超自然的な正体不明な怖いもの。

そう言う扱いをする人達が心底嫌いであった。


「神の力の代行者が、それを言うんっすねぇ。」


ニヤニヤと返す日下。


「ぐ、ぬ、うむ」


返す言葉を無くす公志、感想だけを述べる。


「まあ、今回は確かに霊の仕業だろう。 ただ、手応えみたいな物はなかったな。」

「散らした…そんな感じだ。」


日下はオウム返す


「散らした?」


公志は続ける。


「ああ、名前や生年月日が分からなければ、ピンポイントでの除霊は難しい。 下手に強い真言を唱えたりすれば、犠牲者が出るかもしれないし、俺の身体も保たない。準備が必要なんだよ。」

「だから、広く慈愛を恵んでくれる地蔵菩薩を呼んで、場の方を清めた。 結果、一時的に散らした……逃げられたと言い替えてもイイ。」


少し悔しそうな表情の公志。


「日が悪いですしね。」


日下の短いフォローに、公志は軽く頷いた。


ーーーーー「へぇ、そうだったんだ。」

「でも、優しくて、綺麗な蒼だったな♡」


と、茉奈果


「例の色が見える…いや、視えるってやつか。」


短く公志。


「うん、こうじ君がマントラを唱える時にね」

「目で見てるって感じじゃないんだよなぁ、何ていうか、こうボヤーっとしてフワフワーっとなってシュバババーンて感じ!分かる?」


茉奈果の問いに、

「全く」

即答する公志。


「あらー!二人共もう食べちゃったの?!早くね?」


クスクスと笑いながら、まゆみが冷えたレモネードをテーブルに二人分置くと、


「さぁ、それを飲んだら、二人共お寺に急ぎなさい!おしょさんが『バカ息子!電話にでんわ!カーッカッカッカッ』て言って私に電話して来たわよ。ありゃ怒ってるわね!急ぎなさい♡」


そう言うと軽くウィンクをする。


「ヤベえ!急ぐぞ茉奈果!クソ親父がダジャレ言ったなんて、ただ事じゃねぇ!」


二人は、ストローも使わず一気にレモネードを飲み干す。

こんな時でも、腰に手を当てる事は忘れない二人であった。



お付き合い下さってありがとうございました。


お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、僕は小野不由美先生の作品が大好きです。

パクリではありませんが、先生が作品内で渋谷氏に持たせた世界観に大きく影響は受けております。

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