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3話

莫大な魔力をもつ魔法陣を見せられたあと、俺たちは学院にある大講堂に向かって歩みを進めていた。

 

 「おい、大陰寺。今どこに向かってるんだ?」

 「んー?大講堂。朱雀が授業もどきをしたよねぇ?その時使った講堂だよぉ」

 「そうか……。それはそうと大陰寺。あれは本当に放っておいて大丈夫……」

 「ミカ、落ち着きなよぉ?作戦も何もなしに動いたって意味ないよ?今までとは訳が違うんだからね?」

 「……」

 

 俺は何も言えない。何も出来ない無力感が襲いかかる。しかし文句を言っても何も変わらないため俺はただ、大陰寺について大講堂へと向かった。

 

 

 大講堂につくとそこには見慣れた、というより先程まで鬼ごっこをしていた軍人達が席に座り、ざわざわと落ち着きなく座り待っていた。それだけでは無い。学院の生徒が、教師が、そこにいた。

 入った瞬間一斉に向けられる視線、視線視線――。

 

 「お、おおお……ひ、人多くね?てか……場違い感凄い。お腹痛くなってきた」

 「まぁ、そうだよねぇ、島の軍人のほとんどが。ミカをバカにし続けていた人がここに集まってるんだからねぇ……注目されるのは、いい気分だろ?」

 「……本気で思ってんのか?不調訴えたあと、お前をはっ倒すぞ」

 「いやー、怖い怖い」

 

 なんともないかのようにヘラヘラと笑い続ける大陰寺につきあうのが馬鹿らしくなって、ため息が出る。

 

 「さてと、君たちもあそこに、席に行ってくれるかなぁ?邪魔だから」

 

 大陰寺がビクトール達を指さし、席のある方へと指を向ける。

 

 「その言い方はないんじゃない?大陰寺?」

 「なに?じゃその子たちは十二天将程の力があると?」

 「それは……」

 「なら問題ないはずだよねぇ?」

 

 グラは肩を落とし申し訳なさそうにビクトール達に話をする。

 

 「おい、大陰寺、俺もそこまで言わなくてもいいとは思ったんだが」

 「ははは!何言ってるんだいミカぁ?これは夢でもなければゲームの世界でもないんだよ?なのに無駄死にを増やせと僕に言うのかい?

 少しは生き残ってもらってちゃんと働いてくれなきゃこっちが死ぬからねぇ?」

 「言い方の話をして――」

 「な、なぁ。そ、そこにいるのってまさか無能じゃないのか?」

 

 誰か、席の方から声がした。その声から発せられた言葉は久しぶりに聞く単語だった。

 その言葉を聞いた生徒はザワりとざわめきが起きる。

 

 「無能?ってまさか魔術が一切使えないあいつか!」

 「そ、そんなやつがどうしてここにいるんだ!そいつこそ外に出すべきだろ!」

 

 その言葉に大陰寺が俺に向かって振り返る。

 

 「……君も、よくここまで隠し通せたね……どうなってんだい?」

 「……なんの事だかさっぱりだ」

 

 咄嗟に目をそらす。大陰寺はその行動に諦めてくれたのかやれやれと呆れたようにため息を吐いた。

 

 「まったくねぇ、分かってるのかい?説明が面倒なこと」

 「なら放置しておけば……」

 「それが許されるとでも?見てみなよあの疑念に満ちた目を」

 

 その言葉通り席に座る学院生のほとんどが俺たちの会話を一言も漏らすまいと聞いていた。

 

 「わ、悪いとは思ってるぞ?ホントにな?」

 「ま、と言ってもミカには魔力を温存してもらっておかないとねぇ?」

 「かと言ってそのまま解放してくれる雰囲気でもないし……」

 「だからこうするのさ」

 

 そういった大陰寺が大きく息を吸うと大講堂に響く大きな声が鳴り響いた。

 

 「さぁミカ!行くんだ!ここは私が説得し食い止める!君は獣たちを助けに行くんだ!」

 「んなっ!?」

 「さぁ!ミカには好きに動いてもらおう!どうせ言うことなんて聞かないからね!ならば私は納得しないこの連中をどうにかしようか!実力行使で!」

 「お前……」

 

 言っていることが先程と違う事に唖然とする。

 

 「ほらほらさっさと行ったー!その代わり生きて戻って来ないと……全員実験動物だからねぇ?」

 「……それは流石に戻ってこないとなぁ……」

 

 ニヤニヤと見慣れた薄気味悪い笑みを向ける大陰寺を流しみる。

  

 「わかってるよ。俺は戻ってくる」

 

 ふっと軽く笑みをこぼしたような息遣いが聞こえる。俺はそれを聞き、走り出す。席に座った人から聞こえる声を置き去りに大講堂を飛び出した。

 

 

 「良くもまぁ……人間は……土御門はこんなものを……」

 

 空を見上げれば身の毛もよだつ様な膨大な量の魔力を称えた魔法陣。そこに鎮座する1匹の獣。現に、白虎の毛が逆だっていた。

 

 「封印し続けておれたものだな……」

 

 けたたましく鳴く異様な獣。その鳴き声は周囲の空気を震わす。はられた結界が怪しい音を立てる。

 結界がはられていなければ街に住む人間は全て魔力の湛えた鳴き声によって内部から破壊されていたであろう。

 

 「さて、ここにいる人間たちを守る為、われも人肌脱がねばな……御影に顔向けできん……」

 

 白虎の周りから魔力が膨れ上がる。それに伴い本来の姿へと変えていく。標準サイズの虎から何倍も体が大きくなり本来の姿へと変貌する。

 収められていた爪は鋭く伸び、隠されていた牙は口からはみ出す。周りの魔力になびかれるように純白の毛がなびく。

 その姿になると同時に白虎よりも上空に鎮座していた獣の顔が白虎へと向いた。

 

 「……興味が湧いたか?我とて暇ではない。まともに戦えぬ玄武の所へと行かねばならぬしな……故に、落ちろ」

 

 その言葉とともに片足を上げ振り下ろす。その奇跡は空を裂き、上空の魔法陣をバラバラに引き裂いた。

 

 「なんだ。呆気ないな。その程度か?」

 

 嘲るかのように笑う。しかし興味が無いのかすまし顔を貫き通す。

 

 「なんにも反応せん。寝起きだからか、それとも興味を持たれておらぬか。両方か。まぁ良い……我がやるのは守ることだ」

 

 その言葉とともにもう一度片足を振り下ろした。

 

 

 西の方角で爆発にも似た音が鳴った時、南では猛火の嵐が出来上がっていた。

 

 「チィ!こいつ学院の方ばかり見て今目の前にいるやつのことを見向きもしてねぇ!なめてんのか!あぁ!?」

 

 朱雀も本来の巨大な鳥の姿へと変貌し目の前の同じように鳥の姿をした獣に炎を浴びせ続ける。

 

 「クソ!効いてるのか効いてないのかすらわかんねぇ!ほんとに大丈夫何だろうな!?」

 

 大陰寺!と叫びながらただひたすらに朱雀は攻撃の手を休めなかった。

 

 

 「……とりあえず結界は張ってはいるが……何もしてこないな……あいつ」

 

 自分と似たような姿をした敵を、玄武は眺める。

 

 「まさかとは思うが……他のもこんななのか?え?じゃ、こんな軽い仕事であんな大袈裟に?働き損?」

 

 はぁと大きくため息を吐き玄武は結界を張り続ける。

 

 

 「……ほんとにこれが敵なの?」

 

 壊した魔法陣から降りてきた竜。自分と同じ様な姿のそれが動かない事に疑問を覚え青龍はその周囲を回っていた。

 

 「何がどうなってるんだろ?」

 

 そんなことを呟きながら。

 

 

 「……これは……さすがに非常事態だねぇ……ミカ」

 

 大講堂の扉が半壊しおびただしい数の魔物が顔をのぞかせる。

 

 「土御門……しくじったんだね?」

 

 冷や汗ひとつ大陰寺はながした。

モチベがダダ下がりし、早く終わらせようと思い雑になるのを抑えられずにいた今日この頃……申し訳ないです

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