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Episode4 人として

夏休みももうすぐ終わりを迎える。

今日はタクトとユメカ、そしてストナの三人でデパ地下に買い物に来ている。

とは言ってもタクトは半人半霊の身なので、実際はストナと二人という事になるだろう。

わざわざデパ地下に足を運んだのは、ストナに色んな食材を見せてあげようというユメカの計らいがあったからだ。


「フフッ、ユメカよ。マーボードーフーとやらはどこに売っておるのじゃ?」

「麻婆豆腐はね、豆板醤トウバンジャンっていう辛味調味料に味付けをして、お豆腐を入れて作る料理なの。」

「ストナはあれだよな。最近食べ物の話ばっかりだな。」

「うむ。この前のナットーチャーハンは美味であったぞ。」

「じゃあたくさん買い物して福引券もらって、二人でガラガラしてこよー。」


ストナはあれから頻繁にタクト達の前に現れるようになり、どうやらこの世界の食べ物が気に入った様だ。

為事しごとの時は死神に戻るが、普段はこうやって人間として一緒に暮らす様になった。


━━━━━


一ヶ月前


「笹森タクトよ。お主が今食べている物はなんという食べ物じゃ?」

「あ、これ?ビーフシチュー。食べてみるか?」

「いやいや、遠慮しておくぞ。我ら死神は果実と魚介類以外受け付けない体なのじゃ。」

「そうなんだ。かわいそうにな、こんなにうまいのに。」

「ぐぬぬ。香りはとても良いのじゃがな。ぐぬぬぬ。」

「死神さんも人間だったら美味しいものたくさん食べれたのにねー。」

「ニンゲン?そうか!その手があったな。フフッ。」


突如周りに黒い霧が立ち込めた。

よく見るとその霧はストナの体から放出されているようにも見えた。

霧が晴れると同時に、テーブルに腰をかけスプーンを手に持つブロンドの少女が居た。


「フフッ、どれどれ。!!!!!!!なななんじゃこれは!美味じゃ!美味じゃのう!」

「何が起こったんだ……。」

「さあねえ……。」

「財満ユメカがニンゲンになれと言うからなってみたのじゃ。実に美味なるぞ!もう一皿持ってきてくれんかの。」

「そんな事が出来るのかよ。何でもありだな。というかそれ僕の皿。」

「死神さんもよかったらこれからここに住んでもいいよ?部屋ならたくさんあるし。」

「財満……、いや、ユメカ殿、その言葉に甘えさせていただくぞ。」

「ユメカでいいよー。私もストナちゃんって呼ぼうかな。人間の時に死神さん呼ばわりは周囲の視線を浴びちゃうよねー。」


━━━━━


デパ地下探索もかなり堪能した。

白いたい焼きが絶品である。

かなりの量の食材を買い込んだため、福引券も三枚になった。


「ガラガラじゃ!ガラガラじゃ!」

「1等(赤)お買い物券10万円分、2等(黄)お買い物券5万円分、3等(緑)は高級フィレステーキかあ~。」

「妥当な結果を見据えてステーキ狙いでいこうぜ。」

「フフッ、我に任せておくのじゃ。これを回せばいいのかの?」


ガラガラと回すが一向に玉は出てこない。


「ストナちゃん、逆逆。こっちに回すのー。」

「おお、失敬した。」


ハンドルを握る小さな手に力が入る。


…白


「豆腐か?豆腐が当たったのかの?」

「いや……、これはハズレだ。次だ次。」

「いい度胸であるな……。この我にハズレを引かせるとは。」


ガラガラという音が先程よりも激しく聞こえる。


…青


「青じゃ!肉か!肉じゃな!?」

「いや、青は5等だ。ふりかけセットだな。」

「ぐぬぬ、もう容赦せぬぞ。為事じゃ!為事をする!ガラガラは地獄送りじゃ!この世に生を受けた事を後悔するがよい!」


ガラガラガラガラとはち切れんばかりにハンドルを振り回すストナ。


…金


「おおっ!」「ええー!」「きたか!」


店員の祝福の声と同時に鐘が鳴る。

周囲も拍手とざわめき、そして歓声に溢れかえった。


「特賞!特賞でございます!南の島へご招待!」

「良かったねお嬢ちゃん!お姉ちゃんと楽しんできてね!」

「お嬢……ちゃんじゃと?もう一度、引か……せるのじゃ。肉じゃ!肉がよいのじゃ!!」


ストナのただならぬ雰囲気にタクトもユメカも焦りを隠せなくなった。


「ストナ待て!南の島だぞ!リゾート地だ。豪華食材の宝庫だぞ!」

「お肉もお魚もお野菜もたくさん食べられるよ!」

「なんじゃと!それを先に言わぬか!」


翌日、旅行会社へ行き、南の島への新幹線や船の予約を行った。


予約シートの家族の続柄欄にはこう書かれていた。

【財満ユメカ 姉】

【財満ストナ 妹】


「タクトはお留守番だからね。」

「フフッ、そうじゃの。荷物持ちでよければ参加してもよいぞ。」


Episode5へ続く

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