Episode46 漆黒のワンピース
インターホンのモニターに映る少女は、純白の鎧に身を包み、視線を逸らす事なくカメラを見つめている。
「おい!鎧を着た女子高生が来てるぞ!嬢ちゃんの友達じゃねえのか?よくこんな辺鄙な場所がわかったな。」
「え、鎧を着る様な友達なんていないけど……。」
インターホン越しにその姿を確認するも、ユメカはピンと来ていない様だった。
「んー、どれどれ見せてみい。ぬお、数百年ぶりじゃのう。ジャンヌー、我の事覚えておるかー。」
「「ジャンヌ!?」」
皆は声を揃えて驚嘆した。
ジャンヌが深く一礼し、玄関を通過した。
その後ろを付いて行く様に、妹のキャサリンも続く。
背丈がストナ程なので、カメラに映らなかったのだろう。
華麗な鎧に身を包むジャンヌと、白いワンピース姿でニコニコ笑顔を絶やさないキャサリン。
「お主ら、数百年ぶりじゃのう。我の事を覚えておるかの。」
「あなたのような可愛らしい女性とは面識がございません。が、声でわかりましたよ。神様。」
「えーっ、この人が神様なの?全然姿が違うじゃないー。」
「あ、この姿は僕が創り上げてしまった姿だと思います。初めまして、ジャンヌさん、キャサリンさん。」
「す、すまん。妹のキャサリンは夢で見かけた事があるんだが、ジャンヌ視点だったもんで、顔は初めて見たぜ。よろしくな。」
ジャンヌ姉妹が目の前に居る事が信じられないという表情で、ユメカは詳細に眺めていた。
ストナが研究所の冷蔵庫を漁り、切り裂くチーズを見つけ、にこやかに問いかける。
「して何故お主らがここにおるのじゃ?」
「はい、私達は神様に与えられた能力で様々な時代を行き来し、歴史の行方を見て参りました。今の時代よりおよそ100年後、この地球は滅びます。20年程先から急激な温暖化が始まり海面は十メートル上昇、そして徐々に気温が下がり最終的には地球全土が氷に覆われて生物は死滅します。それと同時に地球は結晶化され、宇宙の藻屑となるでしょう。そこまでは確認はしていませんけど。」
「だから私とお姉ちゃんは、色んな時代と色んな場所に行って地球を救おうとしてたんだー。」
スケールの違う話の内容に、ストナ以外は口をポカーンと開けて話を聞くだけだった。
「あ、いやそれもそうなんじゃが、我が聞きたかったのは、どうしてこの場所にピンポーンをしたのか。ということじゃ。」
ジャンヌは周囲を見渡し、手の平を広げ指先を向けた。
「この方に呼ばれたので、1,848年のカリフォルニアからやって参りました。」
「え?私?」
「1,848年、カリフォルニアのゴールドラッシュですわね♪」
「そうだよー。よく知ってるねー。博士なのかな?」
「いえ、そこはたまたま授業でやったばかりでしたので♪」
ユメカが召喚を試みようとした時、何事も起きていないと思っていたが、ジャンヌとキャサリンは呼び寄せられていた。
本来召喚能力というものは、召喚士と同等かそれ以下の者を呼び寄せる。
つまり、ユメカの能力はジャンヌ姉妹と並ぶ物があったのである。
「私が呼んじゃったの?ごめんなさい。全くそんなつもりはありませんでした。」
「フフッ、タクトは子猫しか呼び出せなかったのにのう。」
「な、なんだよ。僕の能力の方がオリジナルだろ?なんでユメカの方が凄いことになってるんだよ。」
「まあいいじゃねえか。」
「そうですわね♪能力はたくさんあったほうがいいと思いますし♪」
ストナは何か思い出したかのように口を開け、切り裂くチーズを食べながらジャンヌの目の前で立ち止まった。
「さらっと聞き流してしまっていたが、お主時間を移動出来るのか?」
「いえ、私の能力ではありません。キャサリンのものです。私が主に使う能力は、万物の知識です。あらゆるもの物事を勝利へと導く能力等もありますが、今はもう使う必要がありません。」
キャサリンが手を挙げ、目を輝かせしゃしゃり出る。
「私の能力はタイムキャプチャーだよー。お姉ちゃんに教えてもらった時代の一部を切り取って、そこに移動できるんだー。」
「はい、私の指定した時代と場所にしか行くことは出来ませんが。申し訳ありません神様、私達は賢者の石という物を探し、それを創り上げた神を探す旅をしているのです。ですのでそろそろ……。」
「賢者の石だって!?それならユメカが……。」
「こ、これ?」
胸元に光る蒼石の欠片を取り外し、ジャンヌに手渡す。
ジャンヌは窓の外の太陽の光に照らし、まじまじとそれを見入っていた。
キャサリンが賢者の石に触れると、ブンブンと首を振った。
「ちがうー、これじゃないよー。アヌビス神が作る賢者の石はもっとピカピカしてるし、キラキラしてるし、色は金色なんだよー。」
「「アヌビス神!?!?」」
そう言い残し、ジャンヌとキャサリンは深く頭を下げ立ち去った。
外に出た途端、以前目にした竜巻が起こり、竜巻が消えると同時に二人の姿も消えていた。
話が飛躍し過ぎて、ストナでさえも付いていける状態ではなかった様だ。
「ストナ、僕、ストナに聞きたかったことがあったんだけど、今の話の内容が凄すぎて忘れちゃったよ……。」
「一つだけ我のエンパシーでタクトの心の内を読んだぞ。我の服についてじゃろう?」
「ハハッ!こんな時にタクトは何考えてるんだ。」
「真面目な話してる時に変な事考えないでくれる?」
「タクトさんったら♪」
「いや違うってば!ストナの服って黒いワンピースだけだと思ってたんだけど、今着てるワンピースって、生地が違うのかなって。」
「フフッ、黒のワンピースは我が普段から着ているものじゃ。今着ているのは漆黒のワンピース。ほれ、ここらへんにラメが入っておるのじゃ。」
「何の話してるのあなた達はー!」
死線を超え他愛もない話が出来る様になった事に、幸せを感じる一同であった。
ここに集いしはレムリアの子孫達。
地球の命運を背負った彼らは日常と非日常を繰り返し、この星を救うために一意専心するのであった。
次回作へ続く




