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Episode41 おばあちゃん

紀元前1,323年

テーベの街


当時のエジプトは砂漠気候ではなくステップ気候で、砂漠地帯が大半を占めていたが、数多くの木々や草花が点在していた。

ユメカが訪れたその街は、古代エジプト第18王朝のファラオの死後から十数年、ネクロポリスに封じられたその魂を祀る儀式フェスティバルの真っ最中であった。


「あそこに見えるのがテーベの街かー。随分遠く離れた所に出たなー。」


広大な砂漠の遠景に見える街まで、数キロ。

しかし蒼い渦の存在を考えると、これくらい離れた場所の方が安全なのであろう。

空には飛行する人間の様な姿も伺える。

あれが神と呼ばれる存在なのだろうか。



照りつける日差しに耐えながら街に到着した。

街には華美なドレス姿に身を包んだ女性や、ロインクロスと呼ばれる腰布を巻いた男性、身の丈2メートルはあろう獣人が暮らしていた。

古代エジプトではビールは国民飲料と言って良いほど頻繁に飲まれていたが、ワインは気候柄栽培出来なかったため輸入に頼っていた。


ユメカは酒場らしき建物を探すが、一向に見当たらず、途方に暮れていた。

そこに犬の散歩をしている青年が現れた。


「おや、何かお探しですか?お嬢さん♪」

「え、私ですか?」

「突然声をかけてしまい失礼しました。お困りだった様に見えたもので。私は太陽神アポロン、この国を統治する太陽神アテンの親戚と言った所です。こちらはアヌビス、普段は犬の姿をしていますが獣人です。」


そう言うと、アポロンはアヌビスの首輪を外した。

アヌビスは見る見る巨大化して行き、二足で立ち上がり右手を胸の前に揃え丁寧にお辞儀した。


「アポロンさん!あ、は、初めまして。私はフルムという旅の者です。この街にある獣人が集まるという酒場を探しています。」

「ああ、能力者なのかい?酒場は君の目の前にあるよ♪」


アポロンが指差す方向には小さなオアシスの様な池があった。

アヌビスが池の水に触れると、姿を消した。

アポロンに手を引かれユメカも池の水に触れた。


「ようこそ。ラディーズへ。」


仮面を付けた獣人がユメカを迎える。

獣人の背丈に合わせて作られた建物のせいか、天上がやけに高い。


「うっ、獣臭い……。」


中はカウンターテーブルに座席が10席程並び、そこには様々な毛色の獣人が並んで座っていた。


「獣人は口数が少ないからね、静かで落ち着くだろう?それで、ここに何をしに来たの?」

「ここにブロンドヘアの女の子は来ますか?その子を探しています。」

「ブロンドヘアの女の子?アハハッ、ブロンドヘアのおばあちゃんなら来るけど女の子はいないかな。」

「おばあちゃん?ですか?」


「ようこそ。ラディーズへ。」

「だーれがおばあちゃんじゃと?まだ80歳やそこらじゃわい。」


振り返ると、ブロンドヘアで長身の美しい女性が佇んでいた。


「妹ちゃん、このコがキミの事を探してるみたいだよ♪」

「初めまして、私はフルムという旅の者です。単刀直入に言います。エリクサーの精製を私に手伝わせて下さい。」

「エリクサー?ギリシャ語で粉……?そんな物は作っておらぬ。それに、お主は何者じゃ。どこぞの神の使いか?」


ユメカは失敗したと思った。

この時、まだエリクサーは精製されておらず、その名も存在していなかった。

だが、そこはユメカの機転が利いたセリフで難なく乗り越える事が出来た。


「私は預言者として世界各地を旅しています。この先あなたは偉大な効果を持つ薬を開発するでしょう。そして私は、それに関する賢者の石の能力を回復する事が出来ます。」

「ほう。賢者の石を知っているとは、あながち間違いではないようじゃな。では場所を変えようか。アヌビスも来るのじゃ。」


━━━━━


まばたきをした瞬間、先程の池の前に立っていた。

ストナが歩き出しながらユメカに問いかける。


「そなたの黒髪、チベットの農耕民族の出身か?とても良い香りがするのう。私はタナトス。死を司る神じゃ。よろしくな。」


タナトスを見上げ、いつも見るストナの愛らしい風貌とは違う、その美しさに戸惑いながら握手を交わす。


「しかし、なぜお主も付いて来るのじゃ。お呼びではないぞ。」

「いいじゃない♪回復ヒーリング能力なんてしばらく見てないから興味津々でね♪」


しばらく歩くと、レンガと石で作られた小さな平屋の建物に着いた。

建物に入ると、簡素なキッチンがあり、生活感の感じられない埃の被ったテーブルには、いつの物かわからないパンがカビまみれのまま置いてあった。


そしてタナトスは一つの石畳の上で歩みを止めた。


「ここじゃ。はようこちらへ。」


石畳に乗ると、まるでエレベーターの様に地下に進んだ。

どれほど地下に降りたのかわからない。

そこには、声が響きそうなくらい広い空間が広がっており、長方形の石の台の上には様々な薬品、ホルマリン漬けにされたヘビの様な生き物、金色に輝く延べ棒、銅製の皿に乗った石があった。


「どぉれ、では見せてもらおうかの。賢者の石はとある液体薬を精製する途中でその能力を失ってしまった。どうやら力の配分をを間違えてしまったらしいのじゃ。」

「はい。それでは失礼します。」


指先に意識を集中させ、光の雫が溢れる。

一瞬にして賢者の石は輝きを取り戻した。


「わーお!これはすごい!一瞬で回復しちゃったよ。今まで見た中で一番すごいや♪」

「おおおおお!やりおるなお主!早速例の液体薬の精製に取り掛かる!アヌビス支度せい!フルムとやら、今この地域には疫病が蔓延していてのう、まずは液体薬の精製を先に行う。それが落ち着いたら改めて礼をさせてくれ。今降りてきた石畳に乗れば上に行けるようにしておくから、好きに使ってくれ。」

「はい、タナトス様。ありがとうございます。」


━━━━━


「好きに使ってくれって言われてもなあ。こんな所で眠れないじゃない。」


ユメカは部屋の隅々まで掃除する事にした。

部屋の隅には現代の物と相違ない、石で造られた浴槽と思われる物や、トイレの様な設備もあった。

浴槽の掃除に取り掛かった時であった。

色の違う壁のレンガに手が触れた途端、一気にお湯が湧き出た。


「わ、お湯が出た。」


ユメカは湯船に浸かり、ビニール袋から取り出したチキンを頬張った。


「上手くいくのかなー。不安だなー。」


現代へ戻れる期限:残り6日


Episode42へ続く

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