Episode39 リグレス!!
標高3,800メートル、南アンデス山脈の南米ペルーにあった、チチカカ湖周辺で発展したティワナク文明。
ティワナクには太陽の門という一枚岩で作られた門があり、そこを中心に地下神殿が建設されていた。
それらの巨石建造物は、数千年前にレムリアとムーの高次元エネルギーで創造され、当初は神と呼ばれる者たちだけが集まった。
地球の消滅が800年後に迫っている事が判明し、会議を執り行っていたのである。
審議は約700年にも及んだ。
再構築が可能なレムリア系の存在が不確かだったため、高次元エネルギーによる他の惑星へ移住する案が大多数を占めた。
しかし、アトランティスの血を色濃く受け継ぐ者たちはその案に反対した。
超金属オリハルコンを体内に吸収し、それを重力波に変換して核へ送る。
それによって結晶化を解消し、地球の寿命を延ばす事を提案した。
実験を兼ねて採用されたその案は、徐々に成果を上げていった。
体内に吸収されたオリハルコンが消滅すると共に、当事者は消滅してしまうが、地球の寿命は回復し、その対価として多くの生命が誕生した。
アトランティス大陸の消滅後、オリハルコンの製造が出来なかったため数に限りがあった。
枯渇する頃には、地球の寿命は残り2,000年を超えるまで回復した。
その残された2,000年の間に、再構築が可能なレムリア系人類を探すために定められたのがジャッジメントである。
回帰という生命を扱う内容から、その為事は死を司る神や、それに類似する者に委ねられた。
愚行を企てる者は、見通しが無いと判断しその時点で結晶化され、快挙を成す者も同様に再構築の可能性が無いと判断されれば結晶化された。
可能性のある者には、再び人間としての生を受ける事も稀にあった。
これがジャッジメントの起源、西暦500年程まで遡る。
ストナは人間が死に至る前から能力をある程度見極める事が出来た。
ジャンヌ・ダルクの転機の際も、ジャンヌに天啓と言う名の予見を持ちかけた。
ジャンヌは才能を発揮し、愛国者として戦い抜き、生きる事への執着心を持ったまま死を迎えた。
また、病床にあったキャサリンに敢えてジャンヌの死期を嗾け、身代りになる事を決心させ生きる事への執着心を持たせた。
その結果、本来の寿命よりも二年間生き長らえ、ジャンヌと共に死に絶えたのである。
【幾度となく滅びかけ復興を繰り返したレムリア人の本質。生への執着心を強く持つ者同士が同じ場所に集う】
これこそが転機本来のきっかけとなるのである。
こうして二人のレムリア人の末裔に、四つという多くの生命を与え、世界を、更には星を救う使命を担わせたのである。
笹森タクトの転機にも同様の仕組みがあった。
周囲の人間の記憶を操り、タクトをユメカの家庭教師として導き、屋上から転落死する様に細工した。
そして転落の際にユメカのパンツを見る事により、生きる執着が生まれ、転機へと至った。
ユメカはツンデレ傾向にあるが、生まれつき慈愛の精神に満ちあふれており、鋼のメンタルを持ち合わせていた。
そして、生きる事への執着心は勿論、それ以前に大きな使命を抱えている事をストナは察知していた。
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「ふむ。タクトはいつまで寝ているのじゃ?早く起きてあの火を消さんか。そして次の能力を見せてみい。」
ホーグの実を食べ、気絶状態だったネムリの意識が戻った。
「お、姉さま……、タクトさんはタナトス姉さまに残る二つの生命を封じられ……、殺されました。」
「な!なんじゃと!!あやつめ……。我もタナトスの記憶の一部を共有してはおったが、封印の地で能力を取り戻す前の出来事じゃったか……。それならば、残念じゃがタクトはもう蘇る事は二度とないじゃろう。ジャッジメントは……、終了じゃ。」
「そんな!タナトス姉さまは先程の戦いの最中に、タクトさん達を回帰させて自分に従わせると言っていたじゃないですか。それは一体どういうことですの?」
「あんなもの無知の戯言じゃ。回帰にせよ転機にせよ、ジャッジメントの対象者が後に残されているのは結晶化のみ。数日中にタクトの魂は地球の核に転送されるじゃろう。」
大鎌を強く握りしめ、怒りと悲しみから来る震えに耐えながら研究所や小屋の火災に向けて雨を降らせる。
「ユメカを回帰させる。タクトがおれば転機も可能じゃったが、致し方あるまい。ユメカの魂は今どこにおるかのう。」
「何か手伝おうかー?」
「いや結構じゃ、アポロンはラウラとナタリアを元の姿へ戻してくれぬか。」
「はーい。じゃ、ボクとトニは帰りまーす。パズズとミーちゃんはまだやる事がありそうだから置いていくね♪何かあったらトニにテレパシーで声かけてねっ。」
そう言い残し、トニはアポロンとラウラ、ナタリアを乗せゆっくりと天界へ帰って行った。
「ふぅ。煩いのが居なくなった所で続きをば。……うーん、どうしたものかのう。お主が死んでしまったのはイレギュラー、いや、レギュラー、やっぱりイレギュラーかの。お主は今から天国へ行くのか地獄へ行くのか、あー、いやホントはどっちも存在しないしのう。」
「お姉さま?何を呟いていらっしゃるのですか?もしや新しい能力ですの!?」
「あ、いや、セリフじゃよ。我は転機が専門じゃからの。過去に回帰もさせておるが、どうせすぐ死ぬじゃろうなって思ってコレといったセリフは用意してなかったのじゃ。」
なるほどと納得したネムリは、ユメカの横に座りその頭を膝の上に乗せ、ミーちゃんからホーグの実を受け取る。
ストナは大鎌を地面に置き、両手をユメカの方へ向けた。
「さ、お姉さま。いつでもどうぞ!」
「う、うむ。うーん、ユメカが、いや、やっぱしお主かのう。ホントは転機が良かったのじゃがのう。」
「お姉さま!セリフはもういいですから、早く蘇生を!」
「わ、わかった。ユメカよぉ~甦れぇ~。回帰!!」
『シンプルにまとめたね。思ってたのより。』
『実おいし。』
ユメカは静かに目を開けた。
「ユメカさん!良かった!」
「タクト……。ストナちゃん、全部見てたよ。」
「なんじゃと。お主よく生きておったな。霊の状態で死んでおったらそのまま核行きじゃったぞい。」
「うん。アポロンさんがずっと近くで守ってくれてたの。タナトスの大鎌が当たりそうになった時も弾いてくれた。タクトはもう、生き返らないんだね……。」
「アポロンめ、憎い事をしよる。」
『まだある。』
「ん?どうしたパズズよ。」
Episode40へ続く




