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Episode31 星の崩壊

その日の深夜、研究所内に全員が揃った。

ラウラやナタリアも巻島の過去に起きた事に関して、これと言った助言をする事は出来なかった。


「なあ、ストナ。お前はどう思う?」

「あ、ああ、何じゃったかの。巻島の?でんでん?」

「お姉様、聞いてなかったのですか?巻島さんの持っている、脳細胞がトップギアになる石の話ですわよ♪」

「ジャンヌ・ダルク姉妹が出てきて、その石を探している様子だったの。」

「何、ジャンヌ・ダルクとな。ほう、あやつらがその賢者の石を……のう。」

「賢者の石?って、ストナちゃんが大昔作ったっていう?」

「ほう、我が作ったのか。フフッ。通りで我の記憶にない訳じゃ。」

「ストナ?どうした?」

「お姉様、様子がおかしいですわ。大丈夫ですか?修行のし過ぎでは。」


「フフッ、小賢しい。半人半霊ハーフどもめが。今はヒューマノイドか。フフッ、もう小芝居は終わりじゃ。」


パーカーのネコミミフードを脱ぎ、腰まで長く伸びたブロンドヘアがなびく。


「ストナ、悪い冗談はよせよ。髪、しばらく会ってない間に伸びたんだな。」

「まだ気づかぬか愚かな人間よ。お前とは一度顔を合わせた事があった気がするがのう。片割れに記憶を消されたのか。」


空間全体にストナの声が木霊する。


━━━我はタナトス、全死神を統べ、その記憶を共有する者。片割れは主らと共存しておったようじゃが。何の因果か片割れの記憶だけが共有する事ができなかったのじゃ。


━━━時間を遡る能力がどうしても必要でのう、賢者の石は片割れが作ったと聞いて、全ての辻褄が合ったぞ。


━━━これで時間を遡り、賢者の石の起源ルーツを辿る事が出来る。


「片割れって事は、お前はストナじゃないのか!」

「如何にも。主らがストナと呼んでおるのは我の双子の妹じゃ。最も、今はもう封印の地で眠っておるがの。フフッ。」


ロシアでの出来事だ。

エルミタージュ美術館、紋章の間、13番目の柱。


タナトスが仕掛けた罠とでも言うべきか、現世と地獄ハイドを繋ぐ、言わば鬼門の様な異世界への扉がその柱にはあり、タナトスとストナは入れ替わっていたのだ。


「ってこたあ、あの声の主が小さい嬢ちゃん、いや、タナトスだって言うのか?じゃあ、これは……。」

「赤い石……、ラウラさんとナタリアさん。」

「ふむ。察しが良いのう人間。」


どこからともなく現れた大鎌を振りかざすと、赤い石は眩いばかりに光を放ち、そこから二人の少女が現れた。


眼光も鋭く、前傾姿勢に垂れる褐色の体。

今や修道女とは言えぬその姿は、鋭利な爪を持ち、口からは僅かに牙が伺える。


『それが、賢者の石なのですね。』


『ちょうだいちょうだいー。』


「フフッ、それは賢者の石ではない。賢者の石の欠片じゃ。じゃが、欠片でも持っておけば片割れの記憶を辿って再構築リターンのきっかけが掴めるやも知れん。」


瞬時にナタリアがその鋭い爪で巻島の首元を斬撃した。

爪と巻島の首元のチェーンがぶつかり、鼓膜を切り裂く様な金属音が響いた。

蒼石が奪われると同時に血しぶきが上がる。


「巻島さん!!」


『わぁ!すっっっごいよこれー!体が軽くなるー!』


「グハァッ、ってえなぁ。返せよ。それでまだ……やることがあんだよ。」


膝から崩れ落ち、巻島は意識を失った。

タクトはふとあることに気づき、苦悶の表情を浮かべる。


「のう人間よ。何か不思議か?ククッ、どうしてこんな事になってしまったのか?もっと早く気づけなかったのか。とか思っておるのではあるまいな。」

「タクトさんの、苦味レーダー。」

「そういえば何も感じなかったの?」


不敵な笑みを浮かべ、タナトスは深く息をいた。


「フフッ、主らをヒューマノイドにした時に、諸々の能力は封印させてもらった。我が本当に半人半霊ハーフに戻す方法を忘れたとでも思っておったのかのう。もっと他の心配をしたらどうじゃ?クククッ。」


ジリジリとにじり寄る、ラウラとナタリアから目を逸らさずに後ずさりするタクト達。


「しかし人間は愚かな生き物じゃのう。そんな得体の知れぬ石の中の生き物を神仏かの様に讃えおって。見ていて滑稽で仕方がなかったわい。そやつらは元々人間であったが、回帰リグレスが起こった時に吸血鬼ラミアとして我に従わせたのじゃ。」


『ねえ、ロキ様が言っていた星の崩壊ブレイクダウンって、これでやるのー?』


『もうすぐこの星の寿命は尽きます。早急に結晶化を進めましょう。』


「まさか、修道女のラウラさんとナタリアさんを化け物にしたって事か!それに……、どういうことだよ、星の寿命が尽きるって。」

「片割れに聞いておらぬのか、この星の寿命はあと100年程で終わるのじゃ。コア容量キャパシティは直に埋まり、結晶化する。そして全てが無に還る前に我らの誕生する遥か前の時代、超古代レムリアに行き、その文明の力を持って星を創り変えるのじゃ。無論、人間の居ない超古代人のみの世界じゃがの。」


ストナが封印されてしまった今、絶体絶命とも言える状況だが、引き下がる訳にはいかない。

タクトは必死に次の言葉を探した。


「待ってくれ!僕たち人間にも過去に戻る手段はあるんだ。協力してこの星を守ることはできないのか!」

たばかるな人間よ。そんな石の欠片で出来ることなんぞたかが知れておる。主らはいつの時代もその様な事を抜かし、理解者が現れたかと思えばすぐに死んで行く。新たな文明を築こうともせずに目先の争いに耽る。その結果がこれじゃ。この星を崩壊ブレイクダウンさせ、その結晶の力で我は超古代レムリアへ行く。もはや人間に用はない。死ね。」


無慈悲な大鎌が空を舞う。

一つ、二つ、三つ。


「くっ、やめ……ろ。」


咄嗟に指を鳴らし大鎌の動きを抑制しようと試みる。


「ぬるいのう。我を誰だと思っておるのじゃ。フフッ。」

「タクト!後ろ!」「タクトさんっ!」

「ぐっ、ハァアッ……。ユメ…カ……。逃げ……。」


ナタリアの背後からの急襲により、男が一人、その場に力尽きた。


Episode32へ続く

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