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Episode30 なぞなぞ

「あれだ。あの耕運機のタイヤの隙間にでんでんは挟まってた。」

「じゃあ、近くで見張ってればいいんじゃない?」


二番穂や枯れ草の影に息を潜める。

一つ隣の果実畑から犬の鳴き声がした。


「何か食べてますわね♪」

「落ちたリンゴを食べてるのか?」

「あの鳴き声は間違いない、でんでんだ。」

「クシュン!ごめん、アレルギーなの。こういう場所苦手。」


子犬はこちらに気づき、距離を離しながらもリンゴを貪っていく。

気づかれたと分かっていたが、体を低く保ち後を追う四人。


リンゴの木に隠れ、また次のリンゴの木へ隠れ移動する。

その先に子どもたちの声が微かに聞こえた。


『あのリンゴを落としたら今日は解散な!』

『エアガンなんて当たりっこないぞ。』

『まあ見てろって。』


「待て!俺だ!あれは俺だ。動くなよみんな。」

「え、た、たた、対消滅。」

「いいから黙って。」

「あら、銀河が吹っ飛んでしまいますわね♪」


『僕のパチンコの方が威力は上だぜ!』

『スリングショットって言うんだよ。』

『みんな構えろー!行くぞー!SMAAAASH!!』


子どもたちが一斉にリンゴの木を目掛けて撃ち続ける。

地球の重力に吸い込まれる様に一つのリンゴが落下した。


『へへっ、僕のパチンコも当たったよな!』

『ちぇっ、シュンジまた改造してくれよなー!』

『おい、もうすぐ晩飯の時間だから帰ろうぜ!』


一人二人と帰路に就く。

子犬は小石が飛び交っていた事など気に留めていない様子で、次から次へとリンゴを噛じり歩いている。


「あの子犬、自由奔放ですわね♪」

「しかし誰も蒼い石を持ってこねえな。やっぱエイリアンなんていなかったかー。」

「科学者がエイリアンに期待するのも面白い話ですけど。」

「待って!誰か来たよ!」


草木の隙間から枯れ葉を踏み進む足音が聞こえる。

そしてその足音は三人のすぐ目の前で止んだ。


「妙ですね。この辺りにあるはずなのですが。」

「ピカピカなんでしょー?すぐ見つかりそうなのにね。」

「慌てる旅ではありませんし、他を当たりましょう。」

「うん。じゃあ行こっか。あ、ワンちゃん!危ないよ、離れてー。」


少女が指を鳴らすとたちまち竜巻が起こる。

あまりに突然の出来事で、茫然自失となり誰も声を発することが出来ずにいた。

竜巻が収まる頃には子犬の姿も無く、砂埃を被ったタクト達の姿があった。


「何ですの?今の方達。」

「まさか死神?」

「いや、あれは……。ジャンヌ…ダルク…。」

「お、俺、あいつら、夢で見た事あるぜ。」

「僕もです。」

「あのお二人がジャンヌ・ダルク姉妹ですの♪初めて拝見しました♪」

「ユメカは知らないよな。」


かくかく……。


しかじか……。


━━━━━


「ふーん。で、何でジャンヌ・ダルク姉妹がこんなド田舎にいるわけ?」

「僕にもわからないよ。」

「ピカピカする物を探していた様ですけど。」

「それってコレのことか?あ、でんでん!どこ行った!」

「さっきの竜巻でどこかに飛ばされちゃったんじゃないの?」

「じゃあ、あっちだ。あそこの耕運機。」


『何してるんだお前はもう。髪の毛が挟まってハゲちゃってるじゃないか。カタツムリみたいな形のハゲだな。痛っ!いててて…、俺も手を切っちゃったよ。怪我仲間だなー。いってー!』


「ああ、遅かったか。」

「結局、キシリトールの出処はわかりませんでしたね。」

「ジャンヌ・ダルクがその石を探してたんだとしたら、この事をストナちゃんに伝えたら何かわかるんじゃないの?」

「そうですわね♪お姉様なら知恵を貸してくれると思います♪」

「じゃあ次は三年後だ。でんでんが年老いて戻ってきた年に行ってみよう。」


幼少期の巻島との距離が非常に近い事におののいたタクトとユメカは、早く元の世界へ帰ろうと足早に歩いた。


「まてまて、この石がないとどこに飛んで行くかわからんぞ。」

「元の世界に帰れないってこと?」

「ああ、どこの時代のどの場所に出るか保証はできねえな。」

「ちょ、ちょっと、それを早く言って下さいよ!」


━━━━━


鬱蒼うっそうと茂る林の中、その少し向こうに、かつて子どもたちが作ったであろう秘密基地の成れの果てがそこにはあった。


「こんなところで遊んでたの?信じらんない。」

「ハハッ!男なら誰しも経験あるだろ。しばらく誰も来てなかったから草木が生い茂っちまってるけどな。」

「この木箱は何ですの?」

「これはな、虫相撲の土俵だ。ここにカブトムシやクワガタを乗せて戦わせるんだ。ザリガニなんかとも戦わせた事もあるんだぜ。」

「巻島さん、ここに居て大丈夫なんですか?過去の巻島さんが突然現れたら……。」

「問題ないぜ、まだ学校の時間だ。俺は学校をサボったり休んだことは一度もねえ。」


突如、秘密基地を仕切るベニヤ板の奥から何かが飛び出してきた。

先程見た子犬とは打って変わって、白毛が混じってはいたものの、骨格や姿勢はしっかりと凛々しい様子で座る一匹の老犬の姿があった。


「でんでん、わかるか?わからないよな。俺だ、シュンジだ。」


困ったような鳴き声で応えた老犬は、すっくと立ち上がり木陰へと去って行った。

その後を追う。

巻島が小枝を踏み、その枝がてこの原理で持ち上がった。


「だっ、おわっ、ユメカさん!スカートが。」

「あら♪」


巻島が後ろを振り返ると全身に土や葉を纏ったタクトが項垂れていた。


「最近こんなのばっかりだ……。ツイてない。いやツイてるのか?」

「ばっかじゃないの!」


ユメカの声に反応し、老犬は奥へと駆け出した。

雑木林を何の装備もなしで通過するのは非常に危険である。

うるしつた、枝木が散乱し、歩き慣れていない者はいとも簡単に怪我をする。

しかしそんな事を言っている場合ではない。

草木を掻き分け進む。


「なにぃ!消えた!でんでん!」

「巻島さん!あの場所、今でんでんが消えた場所を見て下さい!」

「これは……。」


そこには、同様の物かの判断はつかなかったが、巻島たちが元の世界へ帰る手段として使用されるものと似た、蒼い渦があった。


「まさかここを通ってどこかへ行ったって言うの?」

「可能性はあるな……。」

「謎が謎を呼びますわね♪」

「巻島さん、一旦元の世界へ帰って整理しませんか?ストナの力も借りないと解明できないと思いますよ。」

「ああ、こうも非現実的な事が重なっちまうと、科学じゃどうもできねえな。ハハッ!」

「そうだ、ラウラさんとナタリアさんは?何か分かるんじゃないですか?」


光を失った赤い石を取り出し巻島はこう切り出した。


「タイムリープ中はただの石だ。とりあえず戻ろう。」


結局収穫できたのは、ジャンヌ・ダルク姉妹が蒼石を探していた可能性がある事。

でんでんが蒼い渦を利用して時間を行き来していた可能性がある事である。


Episode31へ続く

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