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死後の世界も実は結構捨てたもんじゃなかった  作者: 星の王子さま
ジャッジメント
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Episode2 能力者

謎の苦味と頭痛にもがきながら、視界に映っていたのは大きな鎌を持ち、黒いワンピースを身に纏った幼いブロンドヘアの少女だった。


「な……。かわいい……。」

「何でお主が生きているのじゃ。ああ、そういう事か。」

「……タクト!何……!そのガイコツ……!何なの!」

「ガイコツ……?ユメカの妹じゃないのか。」


タクトとユメカは違う者が見えている様な反応をした。

嘲笑しながらタクトを見つめる少女。


「フフッ、この女には兄弟も姉妹もおらぬよ。」

「タクト!逃げたほうがいいよ!このガイコツきっと死神か何かだよ!」

「面白い事を言うのう。いかにも我は死神じゃ。」

「何でこんなかわいい女の子が死神……。中二病かよ!」

「タクト起きて!逃げよう!」


慌てる二人をなだめる様に、少女は大鎌を床にトントンと小突いた。


「まあ話を聞くのじゃ。本来死ぬのはそこの女だったのじゃからのう。」

「ど、どういうことだ!」「どういうことなの!?」

「フフッ、察しが悪いのう人間よ。あの時間に飛び上がり、突風に煽られ転落する予定だったのは、そこの女、財満ユメカだったのじゃ。最も、ただの突風ではない。我が連れ去り葬る為の死の風とでも言っておこうかのう。そこが財満ユメカの寿命だったのじゃ。転機フェイトによってお主が身代りになった。という所かの。」


この少女が何を言っているのか分からない。

理解できない。


「フフッ、笹森タクト。お主が死んでしまったのはイレギュラーではあったが、どうでもよい。お主は今から天国へ行くのか地獄へ行くのか、はたまた蘇るのか天地のジャッジメントを受ける事となる。知っての通り、半人半霊の身じゃ。だが死因であった死に方はしない。転落死はなくとも、刺されたり撃たれたり、物理的な傷害を受けると死ぬじゃろうな。そしてお主は四つの生命を与えられている。その生命が尽きるまでジャッジメントは続くのじゃ。ジャッジメントの論意は自分で見つけることじゃ。物問いはあるかの?」


およそ小学生程度の見た目の少女が、訳の分からない言葉を連ねる。

朦朧とする中、言葉を振り絞り問いかけた。


「ああ……、質問だらけだ。僕は確かに死んだはずだ。この目で自分の死体も見た。それが数十分で綺麗さっぱり消えていたのはなぜだ。」

「ふむ。先程も申した通り、イレギュラーに起こった死じゃからの。気まぐれじゃが、この辺り一帯の出来事や人間の記憶は改ざんさせてもらったぞ。しかし、死の事実は変えられぬのでな、故にお主は行方不明となっておる。」


死神と名乗る少女は、流暢に説明して行く。

まだ気になることはある。


転機フェイトって言ったか。それはどういう事だ。」

「我が認めたイレギュラーな死においては、時に転機フェイトが起こるのじゃ。つまり、死ぬ予定だった者が生き残り、生きる予定だった者が死んだ時、お主らの意思疎通は許される。生命を一つ失う度に新たな能力を得る事となるじゃろう。お主と似たような境遇の者は他にも存在するじゃろう。そやつらとの疎通は可能じゃ。」


つらつらと考える。


「その……、その姿は何だよ。漫画のヒロインみたいな格好で現れて、そんな事言われても信用できるかよ!」

「お主が我を初めて見たときに、潜在意識でそう見たのじゃろう。ロリコンめが。我は気に入っているがの。ほほっ。」

「タクトってそういう……。」

「違う!ぐ、偶然だ!」

「フフッ、理解いただけたかの。因みに我は無闇に命を奪ったりはせぬぞ。安心してもらいたい。それと、我の名はストナじゃ。度々顔を合わせる事になるじゃろうから、当分の間はこの姿で居ようかの。」


長いブロンドヘアをなびかせ、黒い霧に包まれるストナと名乗る少女。


「フフッ、笹森タクトよ。お主はすでに一つの能力を得ている。指を鳴らしてみるのじゃ。我は用があるから失礼するぞ。じゃあまたの。」


そう言い放つとストナは天地に分裂するように消え去っていった。


「指を鳴らす?」

「やってみてよ。」


お世辞にもいい音とは言えないが、親指と中指に摩擦を加えて音を鳴らす。

何気なく視線に入っていたユメカのスカートが捲れた。


「おおう!?」

「何してくれてんの!」


ユメカの一撃が体に響く。


「待って、ここで死んだらジャッジメントに影響が……。偶然かもしれないだろ……。」


もう一度指を鳴らす。

またもユメカのスカートが捲れた。


「四回も死ねるなら一回死んでみれば!」


連打を浴びたタクトは声も出せず、右腕も上がらない様子だった。

頭痛と苦味はいつの間にか収まっていた。

すっかり日も暮れ空に星が輝き出した頃、タクトは今日起こった事を整理できるはずもなく、思考回路が鈍ったまま時間だけが過ぎて行った。


「あ、一つ言い忘れておったわい。笹森タクト、お主の一つ目の能力は触れずして物を動かすことができるものじゃ。重さと移動距離による疲労度は比例するから気をつけるのじゃぞ。あと、苦味は何かが起こる予兆じゃ。始めの内は頭痛もするじゃろうが直に慣れるじゃろう。」

「ストナ!いない……。神出鬼没かよ、てか言うの遅いぜ。」

「タクトまだここにいたの?うっわ、臭い。うちの浴室貸すから体洗って来てよ。」

「ああ、今日は走り回ったし冷や汗のオンパレードだったからな。でも家に帰らないと着替えがないんだよ。」

「明日ネットで注文してあげるから、今日は自分の家に行って取ってきて。」


突拍子もなく指を鳴らす。


「ちょっと、やめなさいよ!」

「ちが、違うんだ!服だよ服!僕の家から運べるか試したんだ。」


能力を使ったせいか、空腹感を再び感じた。


Episode3へ続く

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