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Episode28 Future Age

小屋の中はひんやりと冷房が効いており、炎天の季節を微塵も感じることはなかった。

間近で見ると浴槽は広く丸く型取られ、エアコンの影響を無視するかの様にもくもくと湯気が立っており、壁の温度計には42℃と表示されている。

一方、ハンドルのない自動車は、小屋の隅の大きな円盤状の床に設置され、普段よく目にしている乗用車が改良されたであろう代物、黒いパールコートが施され輝いている。


どう考えても過去や未来へタイムリープができるカラクリは皆目検討も付かない。

否、検討は付くが、まさかアレでは?といった所だ。


「よーし!みんな、どっちがいい?」

「えー、どっちって、どっちと言われても。」

「今日はお披露目会だ。勿論、俺が実験台として行き来したから安全面は保証する。過去に行ってみたいか、未来に行ってみたいかどっちがいい?」

「そうですわね。過去は体験した事ですから、未来がいいのでは?」

「正直不安しかないですけど、未来にしてみましょうか。三日後くらいにしときません?」

「よし分かった。何が何でも絶対に守ってもらいたい事が一つだけある。」

「この前話してた、対消滅?」

「ああそうだ。過去や未来の俺たちとの遭遇だけは絶対にしちゃならねえ。バックトゥ何とかとは訳が違う。あれは映画の中だけの話だ。」


……。


………。


…………。


「巻島さん。質問いいですか?」

「おう!なんだ?」

「この車って、今言った映画のデロリア…」

「あー待った。それ以上言うな。」

「え、あの浴槽ってもしかして、テルマエロ…」

「嬢ちゃんもストップだ。」

「何ですの????」


巻島の説明によるとこうだ。

浴槽は過去へ行くワームホールとなっていて、乗用車は未来へ行く光速車。

いずれも到着した地点に蒼い渦が出来上がり、元の時間へ戻るためにはそこを介せば瞬時に戻れると言うのだ。


「習うより慣れろってな。言っとくが、これらの装置だけじゃ時間は行き来できないぜ?これを使うんだ。」

「キシリトール!」「脳細胞がトップギアの!」「変な石ー!」


巻島が普段から首に下げている蒼石の欠片が増幅器となり、浴槽にブラックホール(仮)を生成し、過去にホワイトホール(仮)を生成する。

乗用車はアクセル全開と同時に時速141,6キロまで加速、超伝導磁気浮上リニアモーターカー推進システムを運用し、円盤状の床から超強力な磁力を発生させ磁気相互力と蒼石の力で一気に光速へと達するのだ。


「総員!席に着け~!」

「あの、これって壁に激突しますよね。」

「いや、激突する直前にタイムリープできるから問題ないぜ。」

「だからあんな隅っこに車があるのですね♪」

「うーん。唯一純粋な人間の身としては恐怖でしかないなー。」


愚痴を言いながらも席に着く。

ハンドルがあるであろう部分はタッチバネルが搭載され、シートにはジェットコースターでよく見かける固定ベルトが設置されていた。


「えっと、じゃあ、2,018・07・30っと。時間帯は今くらいでいいな。14:00。場所はここだとまずいから座標を少しずらすぜ。」

「恐い!巻島さん!やっぱり恐い!降りたいー!」

「ユメカ、もう手遅れだ。」

「お腹がぐるぐるしてきました。」

「行くぜ!!!」


エンジン音もなく一気に加速したため、背もたれに勢い良く押し付けられる。

体は1ミリも動かない。

動かせない。


「恐い無理!ぶ…」


━━━━━

























「つからない痛ーーーーい!」


乗っていた自動車は消え、尻餅を付くような形で原っぱに着地した。


「あいててて……、ここが、三日後の未来?」

「フツウですわね♪」

「巻島さん、車はどこに行ったの?」


ホコリを払うユメカのスカートの動きに目が行ってしまう。


「不可抗力、自然現象。僕は悪くない。」

「タクトって本当にバカだよね。」


タクトがパンチを繰り出されている事もお構いなしに巻島は説明を始めた。


「ハンドルはよぉ、構造上外すことになっちまったんだ。デロ……、車は元の世界の元の場所に戻る仕組みだ。これでな。」


そう指を差した場所に、説明通りの蒼い渦が出来上がっていた。


「これって、旅のとび…」

「わかったわかった。落ち着けよタクト。ここに入れば三日前の車の中に戻れるんだ。勿論、コレがないとダメだけどな。」


胸元の蒼石の欠片がキラリと光ったような気がした。


「ここが三日後の世界だという証拠はあるんですの?」

「あっ、見てネムリちゃん。スマホの時計、7月30日14時になってる。」

「間違いないぜ。元々この世界にいる俺らは今日もあっちの研究所に集まってて、俺らがここに来る事も知ってるはずだぜ。」


にわかに信じ難いが、これまでの現象を考えると信じざるを得ない。

現に、遥か向こうの丘に巻島の研究所とタクト達にしか見えないはずの小屋も見える。

一瞬でここまでたどり着く事も考えにくい。


「とりあえずプチ未来体験も出来ただろうから、今度は戻りだ。戻りも一瞬だが、船酔いするやつは気をつけてくれな。」

「船酔いは平気~。」

「私も多分平気です♪」

「やっぱりこれって……。旅のと」

「みんな配置に着いたな。じゃあ行くぜ!!!!」


━━━━━






















視界がぼやける。

視界が回る。

気持ちが良いとは決して言えぬこの感覚。


「うっ……、具合悪い。」

「だらしないなあ。着いたよタクト。」

「ハハッ!船酔いするやつは気をつけろって言っただろ?」

「すごい!車が発進する前の状態ですわね♪」

「ああ、言った通りだろ?夢じゃないんだぜ?」

「巻島さん、これの本来の目的はその蒼石の出処を探る事でしたよね?」

「そうだぜ、今日は疲れただろうからもう解散にしような。次回はあっちだ。」


巻島の指し示す方向にある浴槽の壁は、相も変わらず42℃を表示していた。


Episode29へ続く

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