Episode27 完成
アインシュタインの相対性理論。
現代のタイムトラベルと呼ばれる事象の全ての始まりとされる。
絶対的な時間を相対的なものと再定義し、実際の実験や研究でも明らかになっている。
簡単に説明するとこうだ。
精密な原子時計を二つ用意する。
一つは航空機に乗せ、世界を一周させる。もう一つは出発点に置いたままとする。
世界一周を終えた航空機内の時計は、出発点に置いたままの時計より10億分の1秒、つまり1ナノ秒の遅れが出たのだ。
これを更に飛躍させると、移動速度が速ければ速いほど差は開く事になる。
光速(およそ30万km/秒)に近い、或いは光速を超える事ができるならば時間は7分の1以上まで縮まる。
1分間は8秒程になるというものだ。
光速で移動可能な宇宙戦艦を作り、地球時間で20年宇宙を航行し地球へ戻る。
地球上では20年経過しているが、宇宙戦艦の乗組員は3年程しか経過してないことになる。
よって、17年先の未来へタイムトラベルをしたことになる。
未来へのタイムトラベル然り、過去へのタイムトラベルも理論上可能とされる。
ただ、過去へ行く手段が実際にあるとして、過去に戻って現在有るべき事象を覆したとする。
例えば、自分の先祖を殺してしまった場合、現在有るべき自分の存在が消えてしまう事となる。
そうなると自己矛盾が起こってしまう。
過去に戻る方法を探すと言うよりは、戻ってはいけない、戻れないという事を証明する事が現代科学の研究対象となっている。
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四ヶ月前
「そうじゃ。お主ら、このまま人間として過ごしたいか?死のリスクは跳ね上がるがの。」
「そんな事が可能なのか!小さい嬢ちゃん!」
「お姉さま!それはオススメできませんわ!ジャッジメントに影響を及ぼし兼ねません。」
「ネムリちゃん、それって半人半霊じゃない分、物理的な事故が増えるって事だろ?」
「そうです。ジャッジメントが不利な方向に動く可能性が増えてしまいます。」
「でもそれが可能であるなら、人間らしく過ごせるんじゃない?ほら、学校とかにも通えるし。」
「お姉さま……。タクトさん達の事を思うなら私は反対です。絶対反対です!!!!」
「ええいわかった!」
大鎌から黒い霧が立ち込め、やがて霧は晴れた。
「巻島さん、見えてるけど……?」
「あん?何でだ?お、でもほら、コンビニ袋。中にはチキンじゃん。戻ってるぜ、無限チキン。」
「どういうことなの?ストナちゃん。」
「くっ、……たのじゃ。」
「お姉さま?」
「戻し方を!忘れたのじゃ!煩いのう。」
「えええっ!」「えー!」「何だって!」
「マジかよ。半人半霊の人間マシマシってか。ハハッ!」
「能力は使えた方が何かと便利じゃろう。ただし、人前で使わぬように。」
「勿論だ。あ、触れたものは透明にならないんだな。」
「なるはずじゃ。」
「念じたら透明になるってか?ふんっ!!」
手に持つビニール袋に向けて念じる様に力を込める。
「主らには何も変化が無いように見えるじゃろうが、巻島のビニール袋は消えておる。」
「触れて念じたら消える。便利なようで便利じゃない様な……。」
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そして現在、とある研究所。
今は廃墟の様な外観だが、その横に木造10坪程の小屋が建てられていた。
最も、この小屋は普通の人間の目には見えない。
一人の大学生と一人の科学者の力、透過の能力を開放されているからだ。
科学者は自らの透過能力を応用し、結晶化する事に成功。
その結晶を無限に湧き出るチキンの骨に組み込み、もう一つの影に潜む能力の運用により地中へ埋め込む。
そうする事で触れている木造部分やその内部、全てが透過するという仕組みだ。
小屋内には大きな浴槽、ハンドルのない自動車が置いてあるのが垣間見える。
「巻島さん。あれで本当にタイムリープが可能なんでしょうか。」
「ああ、ラウラとナタリアのアドバイスがなかったらここまで仕上がってなかったかもな。」
「でもあれって、どこかで見たことがある様な感じだね。」
「もうっ、最近お姉さまはどこに行ってるんでしょう。」
「そういや小さい嬢ちゃん、しばらく見かけてないな。元気なのか?」
「はい。『修行じゃ!』とか言って朝早く消えて、夜になったら現れるので、僕達もあまり顔を合わせていないんです。」
「サラリーマンみたいじゃねえか、ハハッ!」
赤い石が光を放ちながらホログラフィーが現れる。
『こういう知識は私達が回帰なった時に流れ込んできたんだよねー。』
「そんな優秀なスペクターも存在するんだな。」
『よくは存じませんが、ナタリアの言う通りです。まるであなた達の欠けている部分の知識だけを授かった様な……。』
「そうなんだ。それがあの時言っていた、ジャッジメントの行方を導くって事に繋がるのかな?」
「それで巻島さん。あのお風呂と車でどうやってタイムリープを可能にするんですの?」
「それを今からやろうってんじゃねえか。小さい嬢ちゃんは記念すべきオープニングセレモニーに出られないって訳だな。この中は涼しいぜえ。」
この時、盛夏の気だるさも吹っ飛んで消えてしまう様な事が起こる前触れなど、誰も感じ取ってはいなかった。
Episode28へ続く




