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Episode26 古からの使者

巻島に響く声。

あの時の声だ。

辺りを見回すが、それらしき人物の姿はない。


「誰かの声が脳内に直接入ってくるんだけどよ、俺に話しかけてる感じじゃないな。」

「例の声の主なのですか?」

「多分な。前よりもすごく近い感じがするぜ。……あ、止まった。何も聞こえなくなった。」

「とりあえず紋章の間を回ってからアレクサンドルの間へ行きましょう。」

「うむ、そうじゃな。それよりも帰りにあそこのカフェに行かぬか?カフェカフェしようではないか。」

「そうだねー。オシャレなカフェだったから寄ってみようかー。」


ロシアには有名な画家が少ないこともあり、展示作品はイタリアの物が多い。

宮殿であった時代の名残である、黄金の調度品等からは当時の栄華が感じられる。

巻島の足が再び止まった。


「紋章の間……、左から13番目の柱、アレクサンドルの間……、天使の像だとよ。」


金色に煌めく13番目の柱の前にやってきた。


「何も、ありませんね。」

「ふむ。特別変わった所はないのう。」

「ストナちゃん触ったらダメー。」


ストナは静かに後ずさった。


「ちとトイレに行ってきてもいいかの。」

「私も行きたいです♪一緒に行きましょう♪」

「13番目の柱っていうのは何かあったのかな。」

「特に何もねえなあ。」

「僕、周りを見て来ますね。」


柱の周囲を回ったり、文様を隈なく調べたが特に変わった様子はなかった。

ストナとネムリが戻ってきたところで、一同はアレクサンドルの間へと向かった。


「ものすごい数の絵画ですね♪」

「うむ。アレクサンドル1世の名を後世に伝えるために造られた空間じゃからの。大理石の暖炉やあそこに並ぶ銀食器が有名じゃな。」

「そういえばユメカのご両親は大理石を扱う仕事をしてるんだよな。どこの国にいるんだ?」

「イタリア。本社は日本にあるけど、あっちにも会社があるから行ったり来たりしてるよ。」

「へえぇ。嬢ちゃんち立派だもんなあ。」


先頭を歩くストナの足が止まった。


「ここじゃな。天使の像は。この辺りに何かあるのではないか?巻島よ。」

「何も聞こえちゃ来ねえんだよなあこれが。」

「あれ?これ何?」


天使の像の足元に割れた赤い石が埋め込まれていた。


「装飾品じゃないのか?どこかから落ちたんじゃ……。こらストナ!触るなって!」

うるさいのう。それに触ってないぞ。ほら。」


タクトの能力、触れずして物を動かす力の様にストナの手の上でふわふわと浮かぶ。


「欠けてますわね。」

「おい!その石から声がする!もうひとつは噴水の中。噴水ってどこだ!」

「パヴィリオンの間の外かな。戻る感じだね。じゃあ、外に出て調べてみようー。」


━━━━━


三月も終わろうとしている昼の暗い寒空に、大小様々な噴水が輝いていた。

雲間から差す光が噴水を照らし虹を作り出す。

その水中に施された黄金の像の足元にそれはあった。


「届きませんわね。」

「ふむ。周囲に人が多すぎて能力を使えんのう。」

「ストナちゃん、そろそろお腹が空いたんじゃない?あそこのカフェで一休みする?」

「そうじゃな。あの位置にあっては誰が取れる訳でもなかろう。一息つくとしようかの。」


カフェで先程の赤い石の欠片をみんなで眺める。

触っても転がしても、つついても光るわけでもなく、ただの赤く濁った石の欠片だ。


「ストナ、いい加減フード脱いだらどうだ?」

「寒いのじゃ。ネムリよ、この暖かい飲み物をもう一つ持ってきてくれんかの。」

「小さい嬢ちゃん、食べ物はいいのか?風邪でもひいたか?」

「寒気がするなら風邪かもねー。さっきクロークに預けたスーツケースの中に風邪薬があるから後であげるね。」

「うむ、かたじけない。」


その後、ストナによる能力で噴水にあった赤い石の欠片を手に入れ、宿泊先のホテルへ戻り、巻島とタクトの部屋へ集合した。


ストナが取り出した赤い石の欠片同士を合わせると、ぼんやりと光りを放ち、ホログラフィーが現れ語りだした。


『私達を助けて頂き感謝致します。いにしえより封印され今日に至りました。』


「喋った……。あなた達は一体……。」


『私はラウラ、こちらはナタリア。修道士として信仰生活を送っていました。戦火の中で生命を落とし、何者かにこうして封印されてしまいました。』


「どうして俺にしか声が聞こえなかったんだ?ここにはもっとすごいやつもいるんだぜ?なあ小さい嬢ちゃん。」


『あなただけに聞こえていたのだとしたら、それは、あなたも私達と同じ境遇に遭ったからだと思います。』


回帰リグレスじゃな。」


『私達にはあなた方を導く能力があります。どうか一緒に連れて行ってもらえませんか。』


「その中からは出てこれないんですの?お姉さまの能力でどうにか。」


『いえ、私達はこのままで良いのです。運命を受け入れております。』


「この方がコンパクトで持ち運びしやすいってか。」

「導くって言ってたけど、何に導いてくれるの?」

「そりゃあ、ジャッジメントの行方とかか?」


『そうだよー。ジャッジメント、知ってるよー。導くよー。』


「ナタリアさんはその、軽いですね。ユメカみたいだ。」

「何で私が軽いのー。」


久々に連打を浴び、痛みと共になぜか喜びも溢れる。


「じゃあこの石のレディ達は俺が預かっておくか。」

「ふむ。では我は風邪薬とやらを飲んで一足先に眠るとするぞ。」

「大丈夫かストナ。死神も風邪をひくと大人しくなるんだな。」

「問題ない。すぐ良くなるじゃろう。」

「暖かくして寝てね。お大事に~。」

「目的も果たしましたし、春休みもあと何日かで終わっちゃいますから、急いで帰らないといけませんね♪」


画して、新たな仲間を加えロシアの旅は終わりを迎えた。


Episode27へ続く

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