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Episode23 種明かし☆彡

「結構歩いたから温まるかと思いきや、さ、寒い……。」

「そうですね~♪」

「氷点下13度だぞ。何をしたって寒いだろ!」

「ロシアって日照時間が短いから暗く感じるよね。」

「ふむ。だからこんなにどんよりしておるのか。」


五人はモスクワのゴーリキー公園を歩いていた。

園内にはスケートリンクや卓球場、モダンな建造物のガレージ博物館といった様々な施設がある。


「ゴーリキー公園って東京ドーム53個分もあるのか。こんなに寒いのにすごい人の数だ。」


スマホのナビゲートを見ながら歩くタクトに向かってユメカが水を差した。


「レモン53個分みたいな言い方しないでよ。元々はここまで広い公園じゃなかったの。あっちに見える庭園とかモスクワ国立大学の緑地区が公園の一部として認められたから広くなったんだよー。」

「ユメカさん博識ですわね♪」

「ポケットなんとかみたいな名前の公園だな。ははっ。」

「食事処はないのかの。あ、あれは!」

「あ、ストナ、苦い感じがす……」


五人の真横、スケートリンクに併設されたカフェで突然爆発が起こった。

壁の大きなガラスが割れて飛散する。


「むおっ、お主ら平気か。」

「ああ、何てことは……。」

「ユメカさん!」「おい嬢ちゃん!大丈夫か!」


左目を押さえうずくまるユメカ。


「目が……、痛……い。」

「ガラスの破片が目に刺さってるぞ!救急車呼べ!」

「はい!あ、あれ、ロシアの救急車って何番にかけたらいいんだ?」

「112……。それより……あそこに倒れてる人たちも処置してあげて。」

「タクトさん!スーツケースに最小限ですが救急箱があります!それを!」

「お、おう。待ってくれその前に112……。」


周囲の叫換きょうかんを他所に、ストナが何かを言いたげな表情でじっとしていた。


「ふむ。もう一度試してみるかの。」

「何か言ったかストナ。」

「お姉さま、煙が来ます!あちらに下がっててください!」

「うむ。……しばし待つのじゃ!」


そう言い放つと、ストナは無造作に空から大鎌を取り出し、それれを魔女の箒の様に扱い、針葉樹の木陰の方へ飛んでいった。


「何か策があるっていうのか?あ、もしもし!日本語通じないかのか。」

「貸して。В парке Горького есть огонь. Многие люди ранены. Пожалуйста, спаси нас.」(ゴーリキー公園で火災が発生しています。怪我人もたくさんいます。救助をお願いします。)


一瞬安堵の表情を浮かべ、ユメカはその場に倒れ込んでしまった。

出血は止まらず、顔中が血に塗れていた。

為す術のないタクト達は、ユメカをそっと担ぎ、ストナが飛んでいった方向の針葉樹を目指した。


針葉樹の下にはストナがぼんやりと立っていた。

直立不動で目を閉じ、風もないのに短いブロンドヘアが逆立つように揺れていた。


「お姉さま?」

「おい!大丈夫か?小さい嬢ちゃん!」

「気絶してるのか?」


ユメカを付近のベンチへ横たわらせ、再びストナの居た場所へ戻る。


「おや、どうしたんじゃお主ら。そんな慌てた顔をして。」

「どうしたって……、ユメカが……。」

「ユメカがどうしたのじゃ?」


ベンチから起き上がったユメカがこちらへ向かって歩いてくる。


「あれ、ユメカ、目……。」

「どういうことですの????」

「小さい嬢ちゃんがやったのか????」

「あ、あれ、痛くない。」

「フフッ、どうやら成功したようじゃの。最近閃いたばかりの能力だから不安だったのじゃが。どれ、種明かし☆彡でもしようかの。お主ら!とりあえずあそこのカフェへ行くのじゃ!つぶつぶマスタードのホットドッグが美味しそうじゃった!」

「あ!火事も収まってる!」

「フフッ、ホースに亀裂の入ったガスボンベは止めてもらったからの、火事なんぞ起きておらぬ。」


一般の人も、スケート靴を履いたまま店内へ入る事が出来るこのカフェは、若者ばかりでなく、年配の層にも人気の様だ。

ホットココア、ホットミルク、ホットコーヒーにホットチョコレート。

ロシアならではのスビテンというホットドリンクを片手にホットドッグを数本、袋に詰め込みベンチに腰掛ける。


「ホットだらけじゃのう。フフッ。で、実はじゃな。お主らには秘密にしておいたのじゃが。」


と大人しくかしこまったように切り出すストナ。


「どうしたのストナちゃん。そんな神妙な顔で。口元がニヤついてるけど。」

「どこから説明したらよいかの。」


空を見上げ、ベンチから垂れる足をぶらぶらさせてホットドッグを頬張る。


「はむ、学年末試験があったじゃろう?あの時に数学の勉強に嫌気が差して、リビングで隠れてアイスを食べてた時にじゃ。時間を遡る方法を閃いてしまったのじゃよ。そう、頭の上に電球がピコーン!と出てくるような閃きじゃった。」

「時間を遡るって、俺の研究しているやつか?」

「いや、似て非なるものじゃ。それに成功する時と失敗する時があるしのう。」


そう言って次のホットドッグに手を伸ばす。


「最初は『あーバーゲンダッツって少し溶けてから食べるのが至高ってCMでやってたのに!キンキンの状態で食べてしもうた!』という悔しさがきっかけじゃった。その次の週も同じ失敗をしてしまったのじゃが、時間を遡ろうとしても無理だったのじゃ。その代償としてアイスが全部溶けてしまった。」


ホットドッグが喉に詰まったのか、ホットミルクをゴクゴクと飲み干し、胸元を軽く叩く。


「それでパスポートは僕たちが自分で申請したって言ってたのか。」

「うむ。未完成な能力故、時間を遡る事と同時に周囲の記憶を書き換える事が上手くいかない事がたびたびあってのう。今なら思い出させてやれるぞ。」


そう言って、ユメカ、ネムリ、タクトの額に人差し指をツンと突いていく。


「巻島よ、屈むのじゃ。額に届かぬ。」

「ああわりぃ。」

「思い出したかの?」

「ああ!そういやあ小さい嬢ちゃんが俺にパスポートを持ち歩けって言いに来た事があったな。」

「そうだ!何に使うかわからないけどパスポートを作れって。」

「そんな事ありましたわね♪」


最後のホットドッグに手を伸ばす。


「はむ、そういうことじゃ。かと言ってこの能力は自在に操れんからの、無いものと思っておいてほしいのじゃ。それに過去に戻っている間や過去に戻ろうとしている間は、我はもぬけの殻になる。」


ストナの目の前に立ち左目を改めて確認しながら姿勢を低くする。

ココアは、ユメカの両手を温めている。


「ストナちゃん……。その、ありがとう。助けてくれて。すごい痛かったの覚えてる。あの光景も。」

「うむ。歴史を変えてしまったのかも知れぬが、致し方あるまい。素直に喜ぶのじゃ!結果オーライじゃ!」

「ありがとう。じゃあサンクトペテルブルクまで鉄道で行っちゃおー。」


先程と変わらず賑わうカフェを通りすがり、薄い日光を浴びながら五人は駅へと向かうのだった。


Episode24へ続く

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