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Episode12 新たな能力者

月の明かりのせいなのか、街の明かりのせいなのか、夜空が薄白い季節になった。

見渡す限り赤白緑で彩られた街並みは、星一つ見ることが出来ない程の眩しささえ感じる。


取り分け星がよく見える場所を知っている。

タワーマンションの屋上、更に上にヘリポートがある。

高層マンションの最上部にはヘリポートの設置が義務付けられている。

そこに寝転がって見る星空は格別なのだ。


この空にはいくつの星があるのだろう。

35億?


「フフッ、戯けが。銀河系には2,000億程の星があるのじゃ。あの一際輝いてる星がマイナス4等星、金星じゃの。」


いつから居たのかわからないが、ストナに心の声を読まれるのが辛いと感じるタクト。

ユメカやネムリの入浴シーンや着替えを覗こうと身構えようとする事すらバレてしまうのだ。


「恒星の中でもマイナス26.7等星の太陽は別格じゃがの。あやつは元気にしておるかのう。」


ストナがよく口にする、あやつとかこやつという代名詞の内容がいまいち把握できない事がある。

太陽の話からのあやつ。

誰のことを指しているのか。


「太陽神ラーと友だちなのじゃ。とか言い出すんじゃないだろうな。」

「いや、ラーの化身は我とは違う部類じゃ。面識はあるがの。」

「あ、ギリシャ神話繋がりだったな。ということは……?」

「フフッ、そろそろ戻らんと風邪を患ってしまうぞ。」


━━━━


「ユメカさんの誕生日がクリスマスだなんて、ロマンチックですわね♪」

「フフッ、あのキリストの誕生日が12月25日とな。誰が決めたのじゃ。」


いぶかしげに質問を投げかけてくる。


「どういうことだ?」

「あやつが生まれたのは10月じゃったかの。あの時代のローマ帝国は様々な神が人間と共存しておった。異教徒にキリスト教を布教する事、冬至の祭り事をまとめて執り行ったのが最初のクリスマスじゃ。現代人のこじつけはちゃんちゃらおかしい所があるのう。」

「さすが生ける歴史辞典だな。キリストに会った事あるのかよ。」

「あったような、なかったような。しかし記憶のどこかにある気はするのう。ジャッジメントの為事をする遥か昔の話じゃからのう。例のあやつらの事もタクトに問われるまで忘れておったわい。」


ネムリが男たちに絡まれた日以来、タクトとストナはジャッジメントについて話し合うことが増えた。


ある夢を見たのだ。

長く永い、そして毎回その夢の続きを見ていた。

何十年、何百年、舞台は中世ヨーロッパに始まり、ロシア、ポーランド、アイルランド、イングランド、オランダ、スペイン、遂にはアメリカにも居た。


幾多の戦場に赴くものの、直接手を下す事はない。

ただただ見守るのみ。

おそらくタクトの視点はこの物語の主人公に当たるのだろう。

いつも一緒にいる少女は妹だろうか。


タクトはこの夢で確信したことがあった。

主人公は半人半霊、能力者だ。

能力傷スクラッチが四つあった。

かと言ってこれという能力を見たことはない。


いや、一つだけあっただろうか。

その場面はソビエト連邦の工業都市、スターリングラードである。


史上最大の市街戦で、ドイツ、ルーマニア、イタリア、ハンガリー等の国から成る枢軸国すうじくこくがソビエト連邦を制圧しかけていた。


枢軸国の動員兵力、ソビエト軍の犠牲者数、経済損失から見ても、スターリングラードの陥落は目に見えていた。


首都モスクワをも制圧させられそうになった冬。

妹であろう少女がこちらを向いて頷いた。

こちらも頷くと、左手からフランス軍旗が出現した。


それからというもの、目まぐるしい逆転劇が始まったのだ。

枢軸国は水害や飛砂害による物資の減少、極寒の地の寒さに耐久できなくなったためであろう士気の低下。

それに対し、何かに激励されたかのように奮起するソビエト軍。

形勢を立て直したソビエト軍は、スターリングラードの攻防戦において奇跡の勝利を収めたのである。

それだけではない、枢軸国ドイツの首都ベルリンをも制圧したのである。


この主人公の能力は歴史を変えるものなのだろうか。

タクトの能力とは比べ物にならない規模の力だ。


そんな夢を連日見ていた。

夢は疑問に変わり、ストナに打ち明けた事により確信へと変わった。

これは過去にあった実際の出来事だと。


「ストナの記憶は曖昧だからなあ。」

「フフッ、しかしまだ現世にもおるかもしれんのう。あやつらは。」

「ジャンヌ……ダルクがか?」

「あら、ジャンヌ・ダルク姉妹と言えばお姉さまが昔転機フェイトを起こした人たちですわね♪」


午後から街を練り歩いていたので、足取りにも疲労が現れており、夕暮れの風が冷たく感じる。


「このポーチなんていかがですか?」

「やっぱりセンスいいねネムリちゃん。」

「ふむ、ユメカは色々小道具を持ち歩くやつじゃからのう。」


満場一致でユメカの誕生日プレゼントが決まった。


帰り道は三人共白い息を吐き、ユメカのマンションについた頃には日もくれていた。

夕飯の買い物を済ませたユメカとマンションの入り口で遭遇した。

寒さに赤らむ頬が愛らしい。


「あら、おかえりなさい。今日はお野菜たっぷりのしゃぶしゃぶにするよー。」

「しゃぶしゃぶとな!しゃぶしゃぶしようぞ!」

「素敵ですわ♪」


ポーチの入った紙袋を後ろ手に歓喜する二人。

オートロックを解除して中へ入ろうとした時、奥から長身の男が現れた。

「おやおや、三人お揃いだったか。いや、四人……か。」


Episode13へ続く

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