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Episode11 猪突猛進

「お姉ちゃん、最近空を眺めてばかりだけどどうかしたの?」

「天の声が聞こえてくるの。私には何か使命があるのかもしれない。」

「神様の声?すごいねお姉ちゃん!」

「お父さんたちには言ったらダメよ?」


天の声を聞いた少女は王太子にその啓示を伝えようと手紙を送った。

【王太子様、私はしがない農村の娘です。しかし周辺国に占領されている自領を奪還すべきとの天啓を受けました。一度お目にかかりたく存じます。】


手紙を受け取った王太子は半信半疑ではあったが、自国の伝染病や王政の悪化も相まって、少女と会い、話を聞くことを決意した。


━━━━━


謁見当日


「王太子様、お目にかかれて光栄にございます。」

「うむ、顔を上げい。」

「では早速ですが…、一言よろしいでしょうか。」

「どうかされたかな。」

「あなたは王太子様ではございませんね。本物の王太子様は……、あなたです。」


背後の群衆にまぎれていた一人の青年を指す少女。

王太子は少女を試していたのだ。

少女は謁見の間へと迎えられた。


「見事である。そなたは天の声が聞こえると申したな。話を聞こうではないか。」

「ありがとうございます王太子様。周辺国と戦って勝たねばこの国はいずれ滅んでしまいます。天の啓示の下に、次期国王の王太子様と共に戦いたく存じます。」

「私が次期国王になると申されるか。実に興味深い。何か証拠はあるのか。」

「はい。驚かれるかもしれませんが、こちらを御覧いただけますでしょうか。」


…。


……。


………。


「こ、これは。俄に信じ難いが……、確かにそなたは神の申し子かもしれぬな。」


それから少女は様々な軍の前線で指揮を取った。

敵国に包囲され陥落寸前だった地域へ少女は派遣され、自国開放の任を当てられた。

数々の軍を率いる指揮官たちは幼き指揮官を素直に受け入れる事は出来ず、冷ややかな態度で迎え入れた。


戦いを好まない性格の少女だったが、率先して旗持ちを務め、部隊を牽引し鼓舞こぶした。

がむしゃらに突き進み、矢に射られ負傷する事もあった。

あまりの大任と責任に涙する事もあった。

幼き指揮官の激励により兵士の士気は一気に高まった。

その後も度重なる戦いの勝利に貢献し、自国の劣勢を挽回した。


その後、王太子は戴冠式たいかんしきを行い正式に自国の王となった。

少女の天啓は見事に当たったのだ。


神託による使命を全うした少女による活躍で自国は安定していた。

当時の戦争は領土と物資の流通権を取り合う側面もあり、王や貴族たちは領土を広く奪還できたことで十分だと考えていた。


一方、少女はと言うと、農村の出身であり【愛国者】として戦っていた。

政治的な背景など理解に及ばず、更なる自国の安定を図るため首都の奪還を目指し戦争を仕掛けようとした。


外交によって決着をつけようとする王政派、あくまで戦争で決着をつけようとする主戦派。

意見は分裂しながらも天啓の下に躍動する少女がいる主戦派が勝った。


しかし、首都での戦いは困難を極めた。


少女は首都奪還に失敗し、遂に敵国の捕虜となる。

敵国からしてみれば少女は憎き敵である。

幾度もの審判の末、幼き指揮官が戦場に赴くために男装していることを理由に悪魔崇拝者であり異端者と断定される。


この国の宗教での死体措置の方法は、復活して帰るべき肉体を残しておくという理由から、土葬が一般的である。

だが彼女は魔女。

復活させてはならないという経緯から火あぶりの刑となった。


「ああ…、神様、神様!どうか私をお助けください!神様!」


良く言えば【純真】悪く言えば【盲信】

己の使命感に駆られ、自国愛のためにどこまでも突き進んだ彼女の最期は壮絶なものだった。
























はずだった。

周囲の風が止まり、少女の視界には黒い霧が立ち込めた。


「おや、手遅れであったか。まあよい。フフッ。」

「あ……あ、神…様……。」


そこには神々しい光に包まれた聖女の様な、はたまたどこか怪しげな雰囲気を醸し出す女がいた。


「お主の妹が身代りになりたいと申してな。ここに連れて参った。がしかし、もう手遅れのようじゃの。」


燃え盛る炎が鎮火した後に少女の遺体は微塵も残っていなかった。

歴然たる魔女、敵国からするならば憎悪の根源。

灰も残らず消し去ったと民衆は大いに沸いた。


少女が目を開けた時、視界に広がるのは懐かしい光景だった。


「私の……故郷。」

「お姉ちゃん!帰って来られたね!」

「フフッ、お主が死んでしまったのはイレギュラーではあったが、どうでもよい。お主は今から天国へ行くのか地獄へ行くのか、はたまた蘇るのか天地のジャッジメントを受ける事となる。死因であった死に方はしない。火炎で死ぬことはないじゃろう。そしてお主は四つの生命を与えられている。その生命が尽きるまでジャッジメントは続くのじゃ。ジャッジメントの論意は自分で見つけることじゃ。物問いはあるかの?」


少女は自身が死んだことを悟った。

そして、神の意向により蘇ったのだとも思った。

しかし先の不可思議な女の話が腑に落ちない。


「ジャッジメントとは何でしょうか。私は確かに死んだのでしょうか。」

「フフッ、お主は言わば半人半霊の身じゃ。そこにおる妹、キャサリンと申したかの。こやつも二年前に伝染病で既に死んでおる。いや、死ぬ定めじゃった。」

「お姉ちゃん!私も天の声が聞こえたの!お姉ちゃんが近い未来に処刑されるって声が聞こえて、神様に毎日お願いしていたの。どうせ死ぬならお姉ちゃんの代わりに私が処刑されたいって、今日まで寿命を延ばしてもらっていたの。」

「キャサリン。どうして……。私は甘かった。私のせいで多くの犠牲が出てしまった。神様、私はやり直せるのでしょうか。」

「フフッ、お主のやり方次第ではあるがの。お主は既に一つの能力を得ておる。手を空に掲げるのじゃ。」


少女は右手を高らかに空へ向けた。

するとまるで鏡の様に輝く、自国の象徴であるフランス軍旗が現れた。

「この力は……!王太子様に見せた物と同じ……。いえ、さらに広くこの世の争い全ての経緯いきさつが見える。主よ、この身をあなたに委ねます。」

「お姉ちゃん。これから二人でこの国を、世界を変えていこうね!」

「フフッ、英雄ジャンヌ・ダルク、その妹キャサリン・ダルクよ。お主ら二人でジャッジメントの日が来るまで共に歩むがいい。」


1,431年5月。これが最初の転機フェイトである。


Episode12へ続く

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