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たまもの

作者: saki

夜、寝る前にこう並べると面白い。

全て努力の賜物だし、ついつい見惚れてしまう。

秋の夜は涼しい、 鈴虫の鳴く音が心地よくまた私の宝物(幻想)を綺麗に彩って、部屋の窓から入る月の明かりが部屋に入って来てそれらを輝かせる。


人と言うのはご都合主義の塊だ。

嫌な事なんて全くそれらに含まず美しい形に出来る。

自分の腹の底に溜まったものなど全く移さず、上手く純粋で産まれたままのものを移す。


全く悪趣味だと思う。


朝になれば、宝物は消え、私はまたお腹に溜まった不純物なんて微塵もないように涼しい顔をして学校へ行くのだ。


帰りの電車、車内でそれらしき人を見つける。地味で気弱そうなそして頭は良さそうな

これがただの馬鹿ならやり甲斐は全くない。


何を考えて、生活をしているのか私は知りたいのだ。

1から10まで知りたいのだ。


幻想だけでは物足りないのだ。


車内で相手が見えるような場所に就き、相手の行動を盗み見をし、それを事細かくケータイのメモ機能にメモする。


そして相手を付けた。相手の歩き方、家、名前まで分かればいいのだが、集合住宅だと難しい。


私はもうここでお腹いっぱいだ。

相手が家に入ったのを確認すると、メモを頼りに心理学書を開きなるべく合いそうなものを当てはめる。


そして私は夜毎自分の勉強机に座り”今日の努力の賜物”の宝物(幻想)を並べるのだ。


そんな事をしても結局は何もならない事を知っている。私は結局何も理解できない。


何人もの彼に似ている奴を探して後を付けたりしても、やはり他人だし、彼ではない。決定的に違うものがある。


私の目の前にある”努力の賜物”は結局は一時の自己満足にしか過ぎない。

結局は彼の事ではなく私の中にある彼の幻想しか愛せない。


対象者の後を付けている瞬間、私のお腹の底は不純物で溢れかえっている。

それと同様に無関心で後を付けている罪悪感なんてものは一切感じなかった。


ただ私は彼の事を理解したかった、もっと知りたかった。特別なことなんてしなくていい、ただ私は彼の様になりたかった。


彼のあのひたすら目の前にある事をこなす、世の中の出来事を全て受け入れ、仕方ない事だと言う。努力を嫌いながらもどう真っ当に”普通”に生きて行く方法を探す。本当は分かっていても相手に気遣い当たり障りのない言葉だけを発して面倒事を避ける。

これも全て私の幻想なのかもしれないけれど、少なくとも私にはそう見えた。


私はまた、夜毎努力の賜物の宝物(幻想)を机に並べる。机の目の前にある窓のレースカーテンが秋風に揺れ、私の頬を掠めた。


もうそろそろ寝よう。

布団に入り、目を閉じる。


あぁ今日も結局彼の事を知れなかった

そう落胆しながら寝るのだ


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