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しらせ


その頃、東国の伊豆に源頼朝なる流人が居た。

広々とした外洋を見下ろす丘の麓に鬱蒼とした松林が有り、

松の梢の間を抜けて涼やかな海風が流れて来る。

町外れに粗末な小屋が有った。

周囲を竹垣に囲まれて、

町人を寄せ付けない仕組みが見てとれた。


その日ここでは急に意外な客が訪れた。

未だ二十代と思われるが、

衣服の破れや汚れで

くたくたに疲労仕切った姿であった。

「申す。」

「突然のご無礼に仕る。」


居室で有ろう小部屋に初老の男が尋ねる。

「殿。」

「…。」

「殿。」

すると中から応える声がした。

「何だ。」

「客で御座ります。」

「後だ。」

「殿、参りませぬ。」

「都のさるお方から令旨の使者に御座りまする。」

「判った。」

若者は反射的に衣服を改めて、

世話係の者が身繕いを手伝った。

控えの間も客室も有る筈も無いが、

ふらふらに疲れて歩くのも侭ならぬ様子で、

令旨の使者は上座に迎えられた。

「遠路遥々のご難儀ご苦労に存ずる。」

頼朝の供の者が労を労った。

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