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戦禍に包まれ
二十五日清盛の請願を請けて院宣が下った。
延暦寺は園城寺に援軍を送る事になった。
いよいよ戦火が点じられた。
二十六日以仁王、源頼政を引き連れ奈良に馳しる。
蔵人頭平重衡、右近衛權少将平維盛等を遣はして
二萬余騎を引き連れ追撃した。
近江一帯は
戦禍に包まれ、
都の市井の人々は難を逃れて右往左往の有様だった。
「どけどけっ、踏み潰されるぞ。」
「これ、童は引っ込んで居ろ。」
騎馬の兵、徒歩の雑兵共、
薙刀を構えた荒法師の群れ為す跡に巻き上がる砂塵が凄かった。
やがて宇治川では奮戦なるも以仁王、
源頼政は無念の敗戦の将となった。
清盛率いる軍功の主だった兵達は、揃って栄誉に預かった。
六月二日、平清盛、朝廷に奏上して福原に遷都を勧めた。
何と云う傍若無人であろうか。