3―4.夏の風に咲く桜
あぶねー技なんだけどさ。
体洗う洗剤で、間違って髪の毛洗うと大変な事になっから気を付けろよ。
試してみっか? ヤメた方が良い。
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PM一時―ゲーセン前
まるで、こいつは幽霊屋敷だ。
「なあ、本当にココか?」
「間違いないですー」
って言われても、こんだけ壁にヒビ入ったゲーセンなんて見た事ねえっつの。
「アレか? また幽霊?」
「失礼っすねー。既にベタな展開になってる幽霊ネタなんか使いませんよー」
「それが怪しいんだ」
駐車場には車がねえし、当たり前っつうか店内にも人がいる気配すらねーぞ。
この光景は、まるで野生のサルがバカ正直に罠であるオリに突入する姿に似てる。
「第一、休業日じゃないか?」
「開いてるで?」
「そうみたいデスね」
扉を無造作に開けるツバサに、思わず台詞がカタカナになってた。
その奇行、まさにデンジャーだ。
一歩間違えりゃ空き巣犯だからな。
「まったく、誰ですかねー。こんな場所に行こうなんて言った愚かな人はー」
「そりゃお前だよっ!」
「あはは、そうでしたねー」
クミに突っ込んでみたけど、逆に笑って返されてしまった。
何つーノリの良さ。何者だよ。
「まず入ろうや。こうやって外にいても始まらへんからな。コントはやめや」
「とか言って、本当はツバサもコントに参加したかったんじゃないですかー?」
「な……何で分かったん」
「身近な霊的エネルギーですー」
いや、すげーツッコミ所満載だった。
まずツバサがコント希望者な事。
そんで、クミがさらっと霊的エネルギーを身近だと言ってのけちまうトコか。
二人の会話の方が霊的かもしれねぇ。
「ミライちゃん、入ろー」
「あ……はい」
一通り喋り倒すと、クミは静観状態だったクミを連れてゲーセンの中に入った。
絶対、相方の性格を選んでボケてるな。
「わいらも入ろか。二人だけで」
「その同姓愛ちっくな発言はヤメてくれ」
「軽い冗談。発泡スチロール級や」
「ブラック加減は鉄アレイ級だぞ?」
そんな会話を交しながら、オレ達もゲーセンの中に冒険よろしく足を踏み入れた。
「一つ言ってええか?」
「何だよ……ってうわ!」
突然、足が止まって前にコケた。
「紐がほどけてるで」
「わざわざ転ばせんなよ!」
「言うのめんどいやん」
この、えせ関西弁ヤローが。
三回の内に言えるだろっつうの。
―――――
PM一時十分・中
「なあ、どう思う?」
「どう思うったって……」
ゲームはあるけど、人がいねぇ。
気配すらナシ。まるで青木ヶ原樹海の中に迷い込んじまったみてーだ。
「なあ、どう思う?」
「どう思うったって……な」
その中で、平然とゲームする二人が。
「あ、そのまま右ですよー」
「教えて下さいね」
「合点承知しましたー」
「あの方達は、無敵か?」
「いや、ミライの方は無理矢理付き合わせられてる感じがあるんやけど……」
「クミは、敵無しだな」
我ながら妙に納得出来る言葉だ。
しーんとした空間で、先着二名だけが賑やかにUFOキャッチャーをしてる。
「狙ってたヤツやん、あの人形」
「ってコトは……クミのヤツ、ミライを使って欲しい物を取ろうとしてるんだな」
「知能派やな、あの姉ちゃん」
「クミはゲームが苦手だからな。ミライに頼んだのかもしれねぇ……」
「二人とも、何話してるんですかー?」
クミがこっちに注意を向けた。
「いや、ほら。アレや」
「そう! 明日の国会経済と地震の話だ」
「難しい話ですかー」
そう言って、クミはまたUFOキャッチャーの方に視線を戻した。
「ふう……凄まじいでまかせやな」
「他に思い付かなかったんだよ」
「発想力が凄いわあ」
「ホメてるのか?」
「いや、想像に任せるわ」
それは、国民の権利の尊重ですか。
オレは皮肉に聞こえる。
とまあ、この辺りにして、オレ達も折角だから何かゲームでもしてみるか。
ナツハ『特別な事でもあったの?』
シュウヤ『何が』
ナツハ『だから、文章がいつもより砕けた感じになってるって所』
シュウヤ『それは上の判断らしい』
ナツハ『書き方が変わったなんて苦情が来たらどうするのよ?』
シュウヤ『オレに言われても……』
ナツハ『主役なら何とか出来るでしょ?』
シュウヤ『大体、どっちの文体の方が良いか分からないんだから決め様が……』
ナツハ『文体……それよ』
シュウヤ『へ?』
ナツハ『というわけで、今回と前回の文章で皆様が気に入った文体はどちらですか? というアンケートを募集します』
シュウヤ『あ、また勝手に……』
ナツハ『一話目や今回みたいに砕けた文章が気に入った方はAを。二十話目くらいのまとまった文体が好きな方はBを記入。一言コメントがあれば嬉しいみたいです』
シュウヤ『カンペ棒読みか……』
ナツハ『A、B、どちらでも良いので、気軽にメッセージを送信して下さいね。だそうです。……苦労してんのね』
シュウヤ『今回はコレだけか。って、オレがここにいる意味は何だったんだ?』