1.first train
携帯が喋ったら。
『電話だぜ』とか『メール受信した』なんて教えてくれるかもしれない。
『恋人からか?』
『充電してくれ』
『機種交換するな』
……頼むからヤメロ。
―――――
高校―三時限目。
勉強なんて退屈なコトは、一体どこのどいつが考え出したんだ。
考えても始まらないのは知ってる。
知ってるけど、みすみす素直な気持ちで授業を受けたくないのが人の素直な一面。
我が身を持って体験してしまった。
机に突っ伏していると、どうやらご立腹の先コーが目線をオレに向けたらしい。
「シュウヤ、起きろ」
起きろと言われて起きる程、素直な教育はされてません。そう言ってやりたい。
ザワザワと騒ぐクラスメイトの目線がオレに注がれるけど、ここは何とか不良っぽくキャラを演じてみたい。このまま何かされるまで机に顔を突っ伏してみる。
先コー上等。夜露死苦どうぞ。
「安倍シュウヤ」
何か冷てー声と同時、バシッと何かが俺の頭を叩いた。顔を上げれば、黒い出席簿を持った先コーがいる。
ふむ、こいつでもってバコッと後頭部を叩かれたらしい。
つうか、手が早えー。
「何すんだよ」
「安倍シュウヤ」
「何だよ」
不良っぽく、しなければ。あくまで不良っぽくしなければ……うお、先生怖っ。
いや、怖ぇ先コーは上等だ。
「良い加減、不良になるのは止めろ」
「うるせぇよ、どうせ俺らの事なんか何も分かっちゃいねぇんだろ!」
「……バカ野郎!」
殴る、いや、寸止め。
先生どうしてだ。
大人は不良ってだけで俺達をさげすむ。軽蔑する。近寄っちゃ駄目よと小さいガキに教育させてる。
ふざけんな。
お前らは全員バカだ。
俺達は、誰よりも自分勝手で。
他人を殴っちまう。
でも、思いやりでは大人に負けねぇ。
相手が怪我すりゃ謝るし、本気で殴り合う時も、心のどっかには自制心がある。
お前らは、謝る事が出来んのか?
不良を軽蔑して、その傷を癒せるか?
それが出来ない大人はなぁ……
「はい、ストップ」
「うあっ、今良い所で……」
「安倍シュウヤ。良い加減に不良を演じるのは止めろ。お前には無理だ」
「無理じゃ無い!」
俺は不良、不良になりたい!
「お前の好きな事は?」
「人を殴る事」
「……本当は?」
「……犬と遊ぶ事、です」
うあ、敬語が出てしまった。不良の心構えには無いのに。ボロが出て来る。言葉も気付けば丁寧になってるし。
「実家は何屋だ?」
「安倍組」
「……本当は?」
「……老舗の寿司屋」
うわぁ、実家が老舗の寿司屋なんて激しく不良っぽくない。オレは不良になりたいのに。真面目になんかなりたくない。
不良に憧れる。
実家が老舗の寿司屋だったり、犬が大好きだったりしても、オレは立派な不良になりたい。卒業したいんだ。
「シュウヤ。不良になんかなっても、お前には耐えられないぞ」
「でも……いつか!」
「はいはい、待ってるさ」
先生の冷てー目線、同級生の瞳が揃いも揃ってテンになってやがる。いや、テンになっちゃってる。
ああくそ、不良になりてぇ!
その為には、不良の仲間に入れてもらうっつうのが良いんだろうけど、そんなヤツは卑怯者だ。努力をしねーからだ。
オレは、自己流の不良になるさ。
いつの日か、必ず。
―――――
不良になりたい。
でも、お人好しな性格。
趣味は犬と遊ぶ事。
実家は老舗の寿司屋。
そんな高校二年生と
それを取り巻くヤツらの話。
to be continues.
初めまして、作者の霧雨と言います。コメディーを書くのは初めてなので、至らない場所などありますが、是非お付き合い下さいませ。また、作法の方は結構無視しています。その点はどうか暖かい目で…。