みみなり
耳鳴りが、リズムを刻む。
ピーピーピーピー。
ピー。
ピー。ピー。
(電子音みたい)
眠れない夜。
嘘みたいに辺りは静かだった。
わたしの耳鳴りは不規則なリズムを刻む。
ピーピーピーピーピーピーピー。
ピーピーピー。 ピー。
お願いだから静かにしてよ。と呟いたけれど。
それはまったく声にはならなくて。
そして辺りははじめから静かなのだった。
***
耳鳴りが、心臓が脈打つ音と共鳴する。
どくっ(とくん)どくっ、どくっ、どくっ。
(とくん) どくっ。(とくん)
どくっどくっどくっどくっどくっ。
(脈が震えてる)
鼓動と耳鳴りが重なる。
ときどき心臓の鼓動だけが、わたしの胸から鳴った。
わたしの耳鳴りが不整脈のように脈打つ。
どくっ。 (とくん) どくっどくっ。
(とくん)どくっ、どくっ。 どどどど。
わたし、死んじゃうんじゃないかな。と思ったけれど。
きっとそんなのはただの杞憂で。
明日もわたしは耳鳴りを聞いているに違いないのだ。
***
耳鳴りが、わたしの鼓膜に突き刺さる。
ざくっ。 ざくっ、ざくっ、ざくっ。
ざっざっざっざっ、 ざくっ、ざくっ。
ざくっ。 ざくっ、ざくっ。
(穴を掘ってるみたい)
耳の奥にスコップを持ったおっさんでもいるんじゃなかろうか。
誰もいない部屋で、私は体を小さく丸めた。
わたしの耳鳴りが不毛に鼓膜に突き刺さる。
ざっざっざっざっ。 ざくっ。
ざくっ、ざくっ、ざくっ、ざくっ。
鼓膜の穴には何を埋めるの。と考えたけれど。
私の鼓膜からは水が湧くのだということを思い出して。
それから布団を頭までかぶった。
***
耳鳴りが、わたしの頭をかきまわす。
キィーーン。 グァーーーーン。
キィーーーーーーーーーン。
キュィーーーン。
(遠近感も上下も左右もわからない)
真っ暗で静かなはずの部屋。
なにかに激しく責め立てられているのだった。
わたしの耳鳴りが不協和音のようにわたしの頭をかきまわす。
ツィーーーーーーーン。
キィーーーーーーーン。ギィーーーーン。
やめてやめて。とわたしは叫んだけれど。
それはとてもかすれた声で。
そしてこれはわたしにしか聞こえない耳鳴りなのだった。
***
耳鳴りが、鳴らない。
(なにも、聞こえない)
とんでもなく静かなこの真っ暗な部屋で。
わたしは両手で耳をふさいだ。
(とくん) (とくん)
(とくん)
心臓の鼓動だけが。
あいかわらずわたしの鼓膜を震わせた。
(聞こえないはずの音が聞こえます)
静寂とはかくも脆弱なのか。とわたしは唇を動かしたけれど。
息が歯の間を抜ける音だけがして。
そして耳鳴りがリズムを刻み始めたのだった。
*補足*
滲出性中耳炎
中耳に浸出液がたまっている状態。
痛くない中耳炎。