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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
99/120

99.あらわれたもの

本日ここまで

3/3


 後から来た親方衆の一人は、私が占いをしている時にいつも気にかけてくれている一人。

 たった数日とはいえ、かなり見知った仲なのでどういう事か確認をとる。


「こんばんは、いえ、いらっしゃいませ?」

「ああ、タエさん。大丈夫かい?」

「ええ、問題ない……と思いますよ」


 笑顔で言うと、いや、と言いづらそうな親方。


「今朝の……」

「ああ、厄介事が嫌なだけですよ。あの後は、問題も無かったでしょう?」


 心配をかけて申し訳ないと頭を下げた。


「そうでもなかったぞ?警察も来たし、占いの噂を聞きつけた客もいなかったわけじゃなかったからな」

「それは、悪い事しましたかね」


 親方は何やら心配そうに見て来る。


「そんなに長くこっちにはいないとも聞いていたから、ほら、今生の別れはすぐそこにある事を知っているから……、挨拶無しっていうのも、な」


 出会いがある以上、別れも常にそこにあって。

 賑わいの一員に私はどうやら入り込んでいたみたいで、まるで娘を嫁に出す様な気持ちの籠ったような目で親方が言います。


「私だって、そこまで不義理ではないですよ。まあ、明日で終いですけどね」

「はは、流石タエさんだ。そりゃあ済まない事をしたな。若いのにひとっ走り頼んだら、居たって言われて、周りもいてもたってもいられねぇって。まあ、みんな仕事にならなかったから、寄らせてもらったよ」


 それで、結構な量の人がぞろぞろと。

 よくよく見れば、ちらほら見たことある人ばかり。


「私は逃げませんから。順番にで、いいですかね?」

「ああ。他の親方にも伝えるよ」


 人数が多いのは嬉しい限りですが、親方衆が来るとなると弟子も一緒なわけで、10人にしか見えなくてもその4、5倍の人数になってしまい、お店の席は簡単に埋まる事に。


 つい数分前とは打って変わって、賑やかを通り越して、煩い店内。

 通な親方衆は銘柄の注文をつけてビールを頼み、正月の挨拶でもするかのように、コップにビールを注ぐと、乾杯の掛け声。

 その声は外まで響くほどの大音量で、お店を知らない人もその楽しそうな空気に店を覗いていく客まで現れる。


 厨房は一気に戦場のような空気に変わるかと思われたのですが、そんなことにはならず、ただ静かに一皿を仕上げている大将。


「タエさんの占いが無いと、胸に穴がぽっかり開いちゃったみたいでよぅ」

「おい、お前がタエさんを語るなよ。道端の花はコップの水じゃ育たねぇだろ」


 駆けつけ一杯のビールでも、酔う人は酔い、アルコールが入る事で気が大きくなる人も。


「別れは辛すぎるだろ。俺、ついて行こうかな」

「お前がついてってどうする、家の事は?」

「忘れてた」

「「「バカだなぁ」」」


 コントみたいな事を喋りながら、他の女給を笑わせて楽しくなる人達も。


 そんな感じにビール一杯で店内が湧き始めた訳ですが、少しずついい香りが厨房から漂ってきていて、仕事終わりの親方衆もビールを楽しみながらも、何を頼むか相談が始まります。


「昨日来たやつらが言ってたが、安くは無いが、高くも無くて……それに、なんだ?この旨そうな匂い」

「日本人らしく、日本の美味い物を食ってりゃいいって思ってたが、なんとも腹の減る匂いじゃねぇか」


 メニューを見ながら、何がいいか思案し始めた親方衆。

 あまり洋食を食べない人もいるのか、若い職人にコレはなんだ?と聞く人も。


「ご説明、しましょうか」


 スッとビールを持ちながら、男たちの間へ入っていくのは百戦錬磨の女給達。

 最初の頃こそ、突然の人数に驚き竦んでいましたが、慣れてしまえばなんのその。

 お酌をしながら、これからの良い客になりそうな男達を逃がすまいと話し始めた所に、静かな暴力がやってきます。


 それはまるでランウェイを歩くかのごとく。


 一番奥の席にいる、若旦那と軍人さんの所までの一本道。


 紫乃さんが堂々と一皿を持っていくのだが、店内のほぼ全ての視線は一気に皿に釘付け。

賑やかさは一気に冷め、唾をゴクリと飲む音まで聞こえて来るほど。



「お待ちどうさま、ハヤシライスです」



 その一言で、店内が再びざわめき出す。

 そして、メニューをめくる音は次第に鋭くなっていくのだが、勿論メニューに載っていない。


「なあ、今の」

「あれ、なんだ?」

「カリーっぽいが、色も匂いも違うぞ?」

「美味そうだったな」


 店内の空気は再び盛り上がり、近くにいる女給さん達に声を掛け始める。


 この後の厨房の忙しさを考えると、少し後ろに下がった方がいいかもしれない、と頭をよぎったのだが、突然バサッと暖簾をくぐる音が響く。


「いい肉、食いに来たぞ」


 外にまだ親方衆の何人かは待っているはずだが、そんなことをまったく気にしない素振りで常連さんは空いているいつもの席へ向かいながら、ビールを女給に頼み、慣れた所作で帽子を自分と反対側の椅子に置いた。


「泣きっ面にハチ……ってやつかねぇ?」


 紫乃さんがぽつりとつぶやいた。







本日も読んでいただきありがとうございます。


裏から表を現したりばーし(前回のサブタイトルの一つ)、今回の三話構成のサブタイトル。

と、なかなか悩みつつ、でも楽しめるようにと作者なりの工夫をしてみているのですが……なんというか、分かり辛い(笑)


そして、サブタイトルを考えるのもなかなか……大変(笑)です。


適当に、話の内容をそのままサブタイトルとすればいいんでしょうけどねぇ。

文字数が少ないので(笑)

タイトルだけでいいじゃん?ってなるのも困ってしまって。

本当に、いい塩梅ってムズカシイ。

というか、私が上手くないだけですけどね(笑)


本日も読んでいただきありがとうございました。

次回の大安吉日は……3/5みたいですね。

次の大安吉日にまたのご一読お待ちしております。<__>

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