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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
97/120

97.のるものと、のらないもの

今日もいつも通りの三話でよろしくお願いします

1/3


「そうしたら、この子達は風呂に入れないと……だね。アンタ一人で、この後お店を回せるかい?」


 おかみさんは嬉しそうに、目尻を下げながら大将に確認をする。


「いや、だったら夜の営業は臨時で……」

「はぁ、本当に……。紫乃、タエさんよ?二人でしっかりと手伝ってやってくれないか?常連さんだけでも、――約束は守らないといけないだろう?」


 嬉しそうな顔は一瞬で怒り顔に変わり、顔がコロコロ変わるのが面白いのか、子供の一人がおかみさんの顔に手を伸ばす。


「あたしはこの子達を家に入れてもいい状態にするからね?常連さんにいい肉食わせるんだろう?それに、一昨日の軍人さんとの約束もあるんじゃなかったかい?」


 確認をするように女給の一人を見ると、ハッとした顔になり、昨日占いに夢中になってしまって早めに暖簾を下げた事を思い出し、今日こそ来てくれないと、とぶつぶつ言い始める。


 同じように、そうだったと誤魔化せていない顔でバツの悪そうな顔の大将。


「しっかりしとくれよ?大黒柱なら、ドンとしないとダメだろう?」


 バツの悪そうな顔をしていた大将も、おかみさんの言葉に、目に火が灯る。


「ああ、しっかりとやっておく。……まずは一週間。その次は一か月、――裏切るなよ」


 大将は子供達に向けて言葉を発したが、あまり伝わっておらず、前に立っていた男の子だけが大きく頷く。

 だが、それに満足したみたいで、おかみさんと二、三言葉を交わすとおかみさんが手を引いて、店を後に。


「バタバタして悪かったな。もう少し休憩をしたら、夜の営業を始めるぞ?」

「……大将、そんなに張り切って大丈夫なのかい?」

「男にはやらないといけない時があるからな!」

「女だって、そういう時はあるよ?」


 一人、空まわりを始めているのはみんな分かっていたみたいですが、紫乃さんが上手い事大将の手綱は握っている様子を確認できたのか、安心して大丈夫という空気が店内に広がり始める。


「とりあえず、賄いはみんな食べたなら、少し休憩してろ。夜は夜で忙しくなるだろうかな?」

「でも、このメニューはメニュー表にも書いてないし、さっきの人達しか、知らないよ?」

「それもそうだな?そうなると、今日はいつも通りか?」


 少しだけホッとしたような顔で大将がチラリと私の方を向く。


「どうかしましたか?」

「いや、タエさん的にはどうしたいのか、と思ってな」

「私ですか?」


 広まるも、廃れるもなく、この料理がそれなりに知られる味だと知っている私としては、何も決めたい事は無いのですが、ついつい余計な事を思いついてしまって。


「でしたら、こんなのはどうです?」


 私が提案したのは、メニューにわざと載せない事。

 ただ、聞かれたら答える。

 知っている人だけが注文できる、特別な料理。


 その提案をするにあたって、他の女給さんにも情報を伝えないといけないので、このお店に入ったら食べさせてあげないといけなくて。

 私がこのお店で初めて食べた、デミグラスソースを少しだけかけて貰ったコロッケサンドの美味しさを塗り替えてしまう事になりそう。


「それでも、いいのですか?」


私の言葉に、不思議と納得をした顔の大将。


「俺は、自分の味に自信があったんだな」


 そう言ってから、自分で驚いたように目を丸くした。


「このお店の名物になるかもね?」

「名物なのに、メニューに無いの?」


 そんな不思議なモノあるのかい?って、女給達も笑う。


「銀座中の店が真似て、それでも戻って来るぐらいの美味さにしてやるさ」

「おっ、言ったねぇ?」


 その威勢のいい声とは裏腹に、震える手のまま、それでも覚悟を決めた顔をしていた。

 いつもであればおかみさんのフォローが入るタイミングですが――。


「足し算も大事ですけど、引き算も大事ですからね?」

「それは……」

「もっと美味しく、もっと良く出来るように努めて下さいな」


 アレだけ美味しかったのに、更に上がある?という、キラキラ輝くような目で私を見られても仕方ないのですが、これぐらい発破をかければ早々折れる事はないでしょう。


「ちょ、ちょ、今じゃないから!」


 慌てて厨房で料理の研究をしようとし始める大将を力づくの紫乃さんと数名の女給でもって止める作業が始まり、ちょっとだけやり過ぎてしまった気はしたものの、やっと店内の空気がいつもと一緒か、いつも以上の良い感じに戻った気が。


「さっきの軍人さんの話、すっかり私も忘れていたよ。どうする?」

「今日は入って貰いたいから、客引きじゃないけど……お店の前に居ようかしら?」

「大将、別に足りない時間じゃないなら、いいよね?」

「おう、義理は欠いちゃならないからな」


 そわそわし始めた女給さんがお店の前で一昨日の軍人さんを待つと言い始める。

面倒事がすぐそばまで来ていることに――、誰もまだ、気が付いていなかった。


思いの外、筆が乗ったような……そうでもないような?


メニューに載らない、知ってる人だけのメニューって大好物です。


島根の石見銀山の近くのカフェ……裏メニューがありまして。


ええ、メニューをひっくり返すと裏にメニューがあるのです。シェケラートが(笑)


近くの温泉津温泉の50度近い源泉も懐かしい。

一分と入れない熱さですが、あの熱さがとってもよくて。


ああ、日帰りでいいから温泉行きたくなってきたかも……。(ご飯の話じゃないのか!(笑))

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