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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
89/93

89.さようならの目

2/3

もう一話ありますよー


「なんなんだよ!お前っ!!」


 追い詰められた男の子は動けないまま、顔だけは殴られまいと腕を盾にして言葉で噛みついてくる。


「…………」


私は無言のまま、ゆっくりと男の子の周りを回る。口元に手を当てて。

次第に呼吸を荒くした男の子が耐えきれず口を開いた。


「返さないからなっ!っていうか、よく分からないおっちゃんにあのカードは売ったから!!」


 がなる声にピタリと足を止めて、グッと屈みこむ。

視線を合わせると、男の子は逸らさずに私を睨み返してきた。


「なかなかいい目ですね?」


 ぽつりと私が言うと、え?って顔になり、少し時間が経つにつれて顔色をどんどん悪くしていく男の子。


「お、お前……もしかして、俺を売るつもりか?ガリガリのガキは高く売れないって……」

「七面倒臭い。違いますよ。……そうですね。――なんでこうなったと思う?」

「は?」



「考える事は生きる事。ほら、今の状況でも唯一出来る事でしょう?」


 余計な動きを封じるように、私は男の子の足先をかるくつついた。

すると、男の子の肩が小さく強張った。


「別に怒りもしなければ、返せとも言いませんよ。……ほら、この通り、カードは手元にありますし?あ、でも、換金はしないとよろしくないかしら?」


 私の指先から、何処からともなくカードが現れる。

男の子の目が、大きく見開かれた。


「カードを売って、お金にした事に対していう事はありません。ただ、そのお金、本当にちゃんとしたお金……ですか?」


 私の言葉の意味を考える余裕が今はあるのか、数秒悩むとなにかに気が付きハッとした顔に。


「滅多に見られるお札じゃないけど……まさか……そんな?……嘘だ!?」


 慌ててポケットからお札を出してバッと両手でちぎれない様に注意しながら大きく広げ、文字や絵をじっくりと見ます。


「コレ……多分……」

「ええ、あなたが思った通りですよ」


 悔しそうで絶望的な顔は一瞬で、すぐにギュッと目を閉じた。その手がピクリと動く。


「……だったら、上野のおっちゃん達の財布から……入れ替えて……」


 少ない手札から選ぶ選択を口に出す男の子。


「なんだよ?怒らない、返せとも言わないんだろ?だったら、使えるようにしないとマズイだろ」


 見上げてくる目は、濁っていた。


「いつまで、そうするつもりです?」


 数秒だけ考えた後、ぶっきらぼうに答えます。


「……出来る限り」

「そう。では、何か理由わけが?」


 男の子は視線を彷徨わせたが、覚悟を決めたのかスゥっと大きく息を吸うと、まくしたてるように喋った。


「俺はリッパなギゾク。今日みたいな仕事は盗みなんてちゃちじゃない。シュッセ払いの前借りさ。真面目にやっても食えない日が続くこともある弟や妹のためで……。誓って、お天道様に恥じる事はしてない!」


 言い切って、文句は言わせないと言わんばかりの顔。

 その顔はしっかりとした男の顔をしていて、子供なのに子供らしからぬもの。


「なるほど。それはそれは、失礼しましたギゾクさん?」


本気な子供を笑うのはよくないのですが、それでも口元がわずかに緩む。

中に居るみんなの空気も、わずかに揺れた。


「義賊の意味も分からない子供にしては、よく言うわ」

「子供の背伸び、でも悪くない」

「骨はありそう。いい骨なら……いい味でるかも?」


 言いたい事と考えがズレてる子もいるのはご愛敬ですが、ずーっとジッと何も言わずに見続けているふーちゃんが突然口を開いた。


「お天道様に恥じないのであれば、そもそも逃げるな。わかっているんだろ?」

「し……」

「仕方ないわけない。信用の問題だ」

「だっ……」

「だっては使うな。弱くみられる。……それを寄越せ」


 男の子に何も言わせず、言いたい放題にいったふーちゃんは男の子の手元へ歩み寄り、偽札を口にくわえた。


「俺のっ!」

「信用というのは、こういうもの」


 ゴウッと一瞬だけ強い風が吹いたかと思ったら、周りの音が聞こえなくなる。

 百円札をそっと口に含むと、次の瞬間風が巻きあがった。

吐き出されたそれは、もうニセモノではなかった。


「本当に恥じないなら、受け取れ。才能が腐る」


 男の子は目を見開いたまま、それでもすぐに手を伸ばした。

躊躇いなくお札を掴み、少し震える腕を必死に抑え、迷いを断ち切らんと更に強く握ってポケットに。


 その様子にふーちゃんは満足したのか頬をピクピクさせて口角が上がるのを必死に抑えている。



「もういいや。カードを渡して帰ろ?」


 突然ふーちゃんはそう言って、私に向かって数歩近づき、手のひらにつんつんとするとふーちゃんも私の中へ消えます。



「もういいの?」

「いい。多分、大丈夫」

「……そう?」


 目の前で消える狐を気にしない男の子は、私を見つめていた。


 なので、右手を差し出し、小指から順に指を畳む。

手を返すと、一枚のカードが現れる。


「私に初めて会った場所で、このカードを“渡すべき人”に渡して?」

「は?なにそれ?」

「――いる?いらない?さあ、どっち?」


 質問は受け付けず、二択を迫ると若干の迷いのあとカードをお札の時と同じような速さで私の手から奪った。


 男の子がカードを握ったまま、しばらく動かなかった。

私達はそのまま振り返らず、歩きだした。




今回の山場?うん?違う……えーっと、言語化がとっても難しかった話になります(笑)


何となくお気づきの皆様もいらっしゃると思いますが、基本的にこの作者は映像を文字にするタイプの書き方をしているので、映像からの取捨選択を失敗すると読みにくく、想像し難いものになりやすいのです。


その為、なるべく書いて、書いて、書いて。


少しでもいい選択を選べるように頑張ってはいるのですが……いつまでたっても上手くならない(笑)


本を読む、ドラマ見る、映画見る……。


近道の無い道って、歩いてみるとハードですけど……全員がそういう思いではないみたいで。

少しでもいい方向に行けているといいんですけどねぇ(遠い目)



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