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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
81/90

81.閑話 盗人少年/ただのしごと

3/3


本日ここまで


「やっぱり、ちょっと客層が違う」


 俺は下町かいわいで名をはせるギゾク。大人と対等に付き合っているけど、ムズカシイ漢字は読めたり読めなかったり。


 ちっちゃい弟と妹を食わせてやらないといけないから、子供でも出来る仕事を探した結果、こうやってギゾクとして盗みをナリワイにしている。


 ギゾクである以上、金のない奴からはウバわない。ちゃんと多く金を持っている奴から、くすねて――そのうち大人になって金がたんまり手に入ったら、倍にして返してやるつもりだから、シャクヨウショ?はないけど、前借りみたいなものさ。


 今日はいつもの浅草からちょっと足を延ばして上野に来てみたが、フインキ……ってやつは近いけど、浅草とはやや違いがあって酔っ払いのおっちゃん達のガードが堅い。

 それと、俺のテキであるケンペー達もあちこちで目を光らせているから、中々仕事ができなくて困る。


「おい、ガキンチョ。……腹減ってるなら、酌でもしてくれよ。そしたらこのハムカツ食っていいからよ」

「ありがたいね。じゃあ、気前よくシャクするよ!!」


 浅草だとこんなことは殆ど無いけど、上野だと余裕があるのか、歩いているだけでも稀に飯にありつける。

 まあ、もらえるモノは食いかけだけど、残飯あさりをしているところを蹴っ飛ばされるのに比べたらマシもマシ。


 隣のおっちゃんのシャクもしていたら、流石に店員に目をつけられたので頂くものだけ頂いて、人の間をするりと縫うように動けば、誰も追いついては来られない。


「ふぅ。揚げ物はやっぱり美味いなぁ。っと、さすがにこのまま手ぶらじゃ帰れないけど……食い物はポケットにいれても持たないからなぁ」


 キョロキョロと突っ立っている人の後ろに隠れながら、良さそうな酔っ払い……エモノになりそうな人を探しているけど、昨日の夜からの酔っ払いは流石にお天道様が上がり始めたこの時間、家に帰ったのか、転がっていてもスッカンピンにされて放り出された後でそこからとれる物はなさそう。


「何となく、良さそうな予感がしたからこっちまで来たけど、失敗だったかなぁ」


 そんな独り言をボヤいていると、突然肩をトントンと優しく叩かれる。


「ん?」


 上を向くように確認すると、そこに居たのはいかにも怪しげな顔つきの男。

 真っ赤なネクタイと縞模様でテカテカした服が変な感じで、あまり関わってもいい事はなさそう。


「ナニ?」


 こういうヤカラは相手にしてもいい事が無いのはいつもの場所でよく知っているので、こっちから離れやすいように距離を取るような目で見返した。


「うんうん、いい目だ。浅草界隈で盗みをしているガキンチョってのはお前だろ?一仕事、やってくれないか?」

「……一仕事?」


 あんまり関わりたくないけど、近くにケンペーがいて動けない。

それに、ここでつかまると今日の成果が無いままになっちゃうから仕方なく逃げられるように周りを確認しながら話を聞いてみる。


「足代は出す。銀座の占い師からカードをくすねてくれないか?」

「……そんなの自分でやればいいだろ」

「前金で10円だ。カード一枚、20円で買い取ってやる」

「20円!?」


 銀座なんていったことないけど、カード一枚で20円は数日分、いやもっと一週間ぐらい食いつなげる。それが一枚で……あまり欲をかき過ぎると危ないけど、枚数が増えたら、一か月近くこんなことしなくても大丈夫になる。

 話をこれ以上進めると戻れない所まで行きそうだけど、食わせると決めた心に嘘はつけない。


「……買い取るって事は、一緒に来るのか?」

「当たり前だ。ちゃんと盗って、慌てるところが見たいんだからな」

「……シュミわる」


 聞こえたらやっぱりやめだとか言われそうだったから、小さな声で言ったつもりだったけど、キッと強く睨んできたから、マズったかもしれない。


「で、やるのか?」

「やる!前金」


 前金だけだって、酔っ払いからいただくより安全だから失敗した時は怖いけど、貰っておきたいので、手のひらを上に出すといきなりグイっと腕を引っ張られた。


「金だけとって逃げるやつもいるからな。前金は銀座までの移動代だから、一緒に乗りに行くぞ」

「ちょ、ちょ。俺は乗らないで走っていくからいいよ。それにほら、こんな格好で乗れないだろ?」

「いいから、乗れ。腕ひっぱっておけば、嫌がられても一緒に乗れるだろう」

「痛いって、わかった、わかった。乗るから、これ以上強く引っ張らないでくれよ。商売道具の腕が真っ赤になっちまう」


 そう言うと、やっと引く手を緩めてくれたが睨んでくる目はヘビみたいで、逃げるつもりはないけど、逃げられる気もしないぐらいしつこそう。


「銀座……行ったことないから、楽しみなんだよね」

「仕事さえちゃんとするなら、その後はどうでもいいからな」

「なあなあ、その占い師って男?女?」

「女に決まってるだろ」

「じゃあ、チョロいかな。何枚もカードを取ればいいんだよな?」

「そうだ。出来るだけ多めにだ」


 酔っ払い相手の時にはない変な空気に背中を撫でられた気がしたが、ムシムシ。

 妹に弟よ、兄ちゃん大きな仕事で一旗当ててお前たちにうまいもの食わせてやるから、まってろよ!!!





本編よりもちょっと早い、三日目の朝です。


歩いたことがある方なら分かりますが、上野から銀座は結構……距離があります。

電車に乗っていれば時間はかかりませんが、駅数も四つ五つ。上野~有楽町で考えています。


そして、今は無い路面電車がこの時代は走っています。(その為、銀座に直で電車で多分行けます)


車社会も悪くないけど、ちょっとだけ昔の情景に憧れも。


時代考証……ちょっとだけ大変です



さて、本日も読んで頂きありがとうございます。

次回の大安吉日にまたお会いできるよう頑張ります。<__>


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